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2016.3.31 DESIGNER
車のインテリアトレンド
AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.57
若者の車離れが言われるようになってしばらく経ちます。時々、学生へのセミナー講師をする時に好きな物はなんですか?と聞くと誰からも車という言葉は聞こえてきません。私達の年代はスーパーカーブームで、男の子の好きな物の代表は車でした。今でも車は大好きで、車のデザインはその時の技術やデザイン指向がよく分かるので、新しい車が発表されると必ずチェックします。仕事柄、気になるのは外観よりもインテリアです。
自動ブレーキや追随式クルーズコントロールなど自動運転が近づく中、自動車に求められるインテリアが変わりつつあります。今までは操作性や視認性が重視されたインテリアが常識で、ドイツ車に代表される高級車も質実剛健が常識でした。20年近い前から車には、パーシブドクオリティ/感性品質と言われる品質の基準が言われるようになり、ドアのチリ(隙間)やインテリアで、できるだけ隙間の少ない質感の高い仕上がりが求められるようになりました。アウディからそのデザインが顕著で、フォルクスワーゲングループ全体でのパーシブドクオリティの高さが自動車業界で話題になり、売上げにも貢献し、その後のアウディの売上げの好調さの理由にもなりました。車のドアやインテリアの隙間は製作時の精度のUPだけでなく、車自体の剛性にも関係し、隙間を少なくするためには車体の強さなど車全体の性能を上げる必要がありました。(ただ隙間を少なくしただけでは、パーツ同士が当たり社内にギシギシ音が発生します)そうした事から高級車でなければ表現出来ないクオリティの基準です。そのパーシブドクオリティを上げるのが一時期の車のインテリアのトレンドでした。それが遅れていたのは高級車の代表のメルセデスです。それがアウディ、BMWから比べ、見た目品質が落ちる理由からか売上げにも影響していました。
今、新しい車のインテリアはパーシブドクオリティの高さが常識となった為、次のトレンドに移りつつ有ります。ドイツ車には今迄、質実剛健の精神から飲み物のカップホルダーや物入れなども付いていない車種も多く、操作性が重視されていましたが、自動運転が間近になる中、操縦性だけでなく移動中にいかに快適に過ごせるかが重要になってきました。最近のドイツ車にはカップホルダーや収納は常識で、香水のアトマイザー機能も付くものがあり、日本車の快適機能もお手本になっているようです。現在、車のインテリアの方向性で先を進んでいるのがメルセデスベンツ。一時期のインテリアの仕上り感がドイツ車の中でも劣っていたのが、新しいCクラスから始まった新世代から方向性を変え一段上のクラスまでのデザインと仕上がり感になり、他社の同クラスを凌駕すると言われています。デザインを取りまとめるディレクターが、ゴードン・ワグナー氏になってから大きな変化になってきました。新世代のメルセデス・ベンツのデザインは、生活の為に追求した質実剛健的な道具としてではなく、官能的や情緒的に表現されるデザインで、生活に豊かさやゆとりや彩りを与える道具として方向へ変わってきました。これがより多くの人に分かり易い魅力として受け入れられて今のメルセデスの好調さの要因になっています。メルセデス・ベンツ新世代のインテリアデザインは「コンテンポラリー・ラグジュアリー」高級でシックなラグジュアリーデザインが今の高級車の指針になっています。
車への求める形が変わりつつある中で、次のデザインを作り出すのは難しく、膨大な時間と開発費用がかかる自動車開発では本当に大変な作業で、冒険はしにくい事だと思います。性能差が少なくなってきた今、デザインが売上げに影響する主になりつつあります。当社の今年のモデルは「エフォートレスシック」肩の力を抜き、ほどよく気崩した大人のカジュアル。「コンテンポラリー・ラグジュアリー」さを知った大人のインテリアを目指しました。そろそろ2017年モデルの企画に入らないといけません。次のステージはどこへ、、。 (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)