COLUMN

2016.12.26 DESIGNER

植栽と陽の光

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.68
今年も一年が終わろうとしています。皆さんの一年はどうでしたでしょうか?私は今年も今迄以上にあっと言う間でした。人は年齢を重ねるとともに時間が経つのが早く感じます。忙しく過ごしていたからかと思っていましたが、法則がある事を聞きました。19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネーのジャネーの法則では、自分の生涯に対して時間の心理的長さは年齢に比例するそうです。たとえば、1年は54歳の私では人生の54分の1ですが、10歳の子供にとっては10分の1に相当します。ですから、私は10歳の子供の5.4倍時間を早く感じるそうです。だから年々、時間が早く感じるんだなどと感心してしまいました。

前置きが長くなってしまいましたが、今年の出来事で辛かった事があります。11月に広尾本社ショールームの竹林が無くなった事です。この広尾に移転して17年目になるのですが、渋谷区広尾の場所で緑に囲まれたこの建物が気に入り、移転後、正面の樹木や竹林をずっと世話をし、春には筍も収穫してきました。筍だけでなく南側にある竹林は建物への日差しを和らげてくれて、昼の揺れる木漏れ日を受けながらの仕事は気持ちよく、都会の中での贅沢な環境にすっかり慣れていました。その竹林が無くなってしまいました。竹の根が深くなり、建物の配管を壊し隣地との塀を押して問題になり、全て取り払われてしまいました。竹林がすっかり無くなった建物は直射日光が強烈になり、柔らかな日差しがすっかりなくなってしまいました。何より風に揺れる木漏れ日を感じられなく、部屋の中にある観葉植物とはまったく違うゆらぎの光を感じる事ができなくなりました。ブラインドで遮るより竹の葉で柔かくなった日差しの方が、何倍も心地よい事を思い知らされました。年に数回の剪定や日々の落ち葉の掃除など世話は大変でしたが、その見返りを受けていたんだと、、。

都内にいると私有地の敷地にある樹木はそんなに気にされませんが、無くなって感じるのは緑は街の財産なんだと改めて思います。最近、訪問する事の多くなったロサンゼルスは雨が少なく乾燥した土地ですが、手入れされた街路樹や緑豊かな住宅が印象的で、ハリウッド映画で道路に面した芝生の住宅地がよく見られます。学生時代にみたスピルバーグ監督のSF映画のE.T.で子供達が緑溢れる住宅地を自転車で走り回る姿を見て青い芝生を羨ましく思ったものです。(撮影されたのはロス郊外のパサディナで撮影されたそうです)撮影に訪れるようになって、ロサンゼルスの水源は遠くコロラド川より数百キロ運ばれた水道水で、街路樹や私有地の緑を育てている事を聞いて驚きました。ロサンゼルスでは私有地であっても勝手に樹木を切ると市から罰金が科せられ、逆に、枯れ木をそのままにしていると、山火事の恐れがあると言う事で、罰金が科せられます。人の手が入る事によって緑が保たれているんです。

10月に訪れた西海岸の住宅でも、庭の樹木や草木が光を和らげ、街に潤いを与えていました。中庭には素晴らしい庭のある家が多いのですが、道路に面した所にも緑が多い家が多く、家の外観よりも植栽の素晴らしさに見とれる事があります。インテリアでは室内用の観葉植物が注目される事が多く、インテリアと景色の融合が日本古来の建築です。これからは外にある木々にも注目されるような気がしています。1月の西海岸セミナーでは様々なテイストの住宅をレポートしたいと思っています。今回はインテリアだけでなく、庭の写真も入れてお見せしようかと思っていますのでお楽しみに。2017年も皆様にとって良い年でありますように。             (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

広尾本社ショールームの建物の南側には狭いですが立派な竹林がありました。無くなってしまうと寂しい建物になりました。竹の笹葉の揺らぎと木漏れ日が心地良い事務所とショールームだったんです。
左:シャヴィーシックのインテリアブランドを展開しているレイチェル・アシュウェルさんの自宅です。前庭の植栽も大きな木だけでなく薔薇など様々な草木が素敵でした。右:サンタモニカの往年のハリウッドスターの家で、エントランスは樹木の高い塀に囲まれています。中の庭は大きな木とブーゲンビリア、芝生が広がっていました。