COLUMN

2018.10.30 DESIGNER

透明な素材

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.90
来週から2019年モデル展示会が始まります。カタログも入稿が終わり印刷上がりを待つだけになりました。今回の新作は初めてアクリル樹脂を使った透明感のある製品です。成型合板や木素材を使った木製家具や、金属ではスチール、アルミダイカストや鋳造した物は手がけてきましたが、プラスチック樹脂素材は初めてです。マテリアルファニチャーブランドのトランスペアレンシーの家具デザインをする事になり、初めてアクリル素材を使用することになりました。

アクリル樹脂と聞いてプラスチック製としてイタリアの樹脂メーカーやイームズの樹脂素材の椅子を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、樹脂メーカーの多くの家具はポリカーボネート製で、イームズの樹脂は昔はグラスファイバーで今はPP樹脂で成型されます。両方ともの樹脂のペレットを使った射出成型の薄い物です。今回、当社が発表する家具はアクリル家具でも美しいキャスト方法で作られた厚いアクリル樹脂板を使用して成型した製品です。

私自身アクリル樹脂についての知識がありませんでしたが、アメリカ西海岸での撮影や住宅取材を通して、ヴィンテージ家具にアクリル家具が多く存在することは知っていました。60年以上経た椅子やテーブルが透明感や輝きを失わず、良い感じで時を経た家具が沢山あります。最初はそんなに時間が経っていないように思った家具も60年以上経て、座のクッション素材や布や革がボロボロになっても、樹脂自体は透明感を失っていません。素材自体を調べると1930年代にドイツで発明され、プラスチック樹脂素材としてはもっとも歴史があり、様々な用途に使われてきました。開発当初は戦闘機の風防に使われパイロットの視線と安全を守ってきました。現代では透明度と耐久性が最も必要とされる水族館の水槽に使用され、接着技術の進歩から巨大な水槽を持つ水族館が続々と作られています。その素材の多くを生産しているのが、日本のケミカルメーカーです。

アクリル樹脂は弱いのではと思われる方が多いと思いますが、高い透明度のアクリルはポリカーボネートやペット樹脂に比べ紫外線に強く、黄変や劣化はしにくい特性を持ちます。そういったことから航空機や水族館でも使われる素材で、傷については常識内の硬度があります。皆さんの身の回りにある透明アクリル樹脂のアクセサリー入れなど傷は気にならないはずです。また、十分の板厚を持ったアクリル樹脂は、水族館の水槽と同じで、磨いて輝きを取り戻すことができます。使い込まれたヴィンテージのアクリル家具を見てきましたが、長く愛される素材として家具に使えると確信をして使用しました。ガラスより透明度の高いアクリル樹脂は冷たい無機質な素材と思っていたましたが、実は柔らかで温かみのある素材であることに気づかされました。2019年モデルのPMMA+Woodは、皆さんの樹脂素材への固定観念を変えてくれると信じています。

同時に発表するA-mode、NEO CLASSICOの家具も柔らかさをイメージした製品で、いつも以上に苦労と情熱を傾けて創り上げた新製品です。11月7日からスタートする展示会は花をイメージした荒川 弘之氏のフラワーアート写真とのコラボ展示で、広尾本社会場はいつもの展示会と違うプレゼンテーションを行います。少人数制でゆっくり感じていただける会ですのでぜひおいでください。花をイメージしたアクリルシェルがお待ちしています。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

2019年モデルのPMMA+Woodは透明度の高いアクリル樹脂(Polymethyl methacrylate・ポリメタクリル酸メチル樹脂)を使用した家具で、厚みがありながら驚くような透明感があります。椅子やテーブル、ラウンジチェアを展示します。