COLUMN

2019.12.2 DESIGNER

2020年のアール·デコスタイル

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.103
11月20日の東京広尾から始まった2020年モデルの新作発表会は大阪が終わり明日から名古屋です。新作展示会はお客様の声を直接お伺いできる最初の機会なので、デザイナーとしてはとても緊張しますが貴重な時間でもあります。来場の皆様には座り心地もデザインもとても好評で、エーディコアさんの方向性は早いので、アール·デコはこれから来ますねと言われ、嬉しくホッとしています。毎年、デザインだけでなく掛け心地も追求していますが、歳を重ねるとこだわる箇所も変化して、今年は背中から腰への心地よさを追求しました。

今回の新作はエフォートレスシックで、エレガントな大人の上質さをテーマに製品作りをしました。ファッションの世界では、数年前にあれだけ隆盛を誇ったファストフッションが急速に衰退し、アメリカでは大手ブランドが破産しました。日本からの撤退も多くあり、使い捨てファッションが終焉をむかえようとしています。多くのファッションブランドでは流行に流される短命のデザインでなく、上質さを大切にした、息の長いデザインと物の良さにこだわった、大人のクラッシックな洋服作りを始めています。インテリアの世界でもお気楽な安価にできる西海岸スタイルから、長く使え心地の良いクラッシック(上質)な空間作りへの方向性が見えてきました。

当社の2020年モデルは、ネオクラシコ·ヘリテージからアール·デコをイメージした製品を発表しました。アール·デコはヨーロッパとアメリカを中心に1910年代半ばから1930年代にかけて流行した装飾美術で、アメリカではフランク·ロイド·ライトのデザインもアール·デコに位置づけられることがあります。アール·デコは世界中の都市で流行し、一般大衆に消費された装飾です。富裕層への一点ものが中心となったアール·ヌーヴォーのデザインに対し、アール·デコのデザインは建築など一点ものだけでなく、ポスターやテーブルウエアなど大量生産へも使われたために、影響を受けた分野は広まりました。アメリカではアール·デコ様式の1920年代の建築が多く残り、ニューヨークやロサンゼルスではダウンタウンだけでなく、住宅もその姿を多く残します。

昨年訪問した、ロサンゼルスデザインセンターにある家具ショールームでは、デコスタイルの家具やインテリア用品が展示されていました。価格帯を見て富裕層向けとはすぐに理解しましたが、クラッシックとは違う様式の展示にスタッフの方に話を聞くと、デコスタイルのインテリアは富裕層に好まれる方が多く、確立されたインテリアスタイルとしてプロのデコレーターにも使われていて、全米の主要4都市でショールームを展開しているそうです。1920年~30年代の建物が多く残るアメリカでは、その時代の建物だけでなく、モダン建築へも上質なインテリア用品として使われる事が多いそうです。アメリカではヨーロッパとは違うインテリア文化が存在し、様々な時代のインテリアスタイルが使われる方の好みに合わせて使われます。

2020年モデルはアール·デコのデザインをイメージしました。装飾的なデザインだけではなく、モダンインテリアへの融合も考えたシンプルな永く使えるデザインを目指しました。新しい方向性のデザインとして長く愛される家具が完成しました。12月10日から通常展示の中でご覧いただけますので、各ショールームへお越し下さい。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左:2014年に訪問したロサンゼルスのダウンタウンに建つイースタン・コロンビアビルは1930年代のアール・デコ建築で、現在は集合住宅として使用されています。最上階はジョニー・デップも所有していたペントハウスもあり、ロビーはゴージャスです。右:ロサンゼルスのダウンタウンにある1920年代の建築をリノベーションしたフィゲロアホテル。YWCAの宿泊施設として建てられてビルもアール・デコスタイルです。
左:ウエストハリウッドにあるパシフィックデザインセンターにあるJEAN DE MERRYのショールーム。置かれる家具はアール・デコスタイルをモダンにした物が多く置かれます。価格はかなり高価でした。右:1920年代に建てられたロイド・ライト設計の住宅。建物の外観はアール・デコスタイル建築です。使われるインテリア用品も1920年代のアール・デコスタイルです。