COLUMN

2021.1.29 DESIGNER

不動産投資のフリップとは

AD CODE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.116
昨年末、NHKのBS番組で「ハリウッド華麗なる物件案内」という番組を放送していて、アメリカ・ロサンゼルス不動産事情を、現地の日本人のセレブ御用達不動産ブローカーの案内で見せていました。今、アメリカではファッションや店舗を持つ業態が壊滅的な状況で、ブルックスブラザーズなど有名ファッションブランドの破綻や、高級チョコレートのゴディバの北米撤退など多くのニュースが流れています。しかし、株式投資や不動産投資は活発で、特に不動産の売買は高級物件を中心に動いています。アメリカでのカタログ撮影でお世話になっている、プロデューサーの靖子さんに聞くと、靖子さんの住まいのあるウエストハリウッドには、今、セレブの映画俳優やお金持ちの多くが仕事場への通勤短縮にと住んでいたマリブから、ウエストハリウッドに移り住んでいて、エリアの不動産価値を高めているそうです。

アメリカ西海岸で撮影を始めて、建築ツアーでも多くの住宅や建築を見てきましたが、多くのオーナーは、少し住んで高く売って次にステップアップすると言われていて、特にインテリアデコレーションに力を入れている住宅ほど、仕上がりが素晴らしく、家具やアートも家の一部として一緒に販売されます。それが住宅の価値を上げる事にもなっているそうです。その事もNHKのBS番組の中でも紹介されていて、その不動産投資法が「フリップ」という名前で紹介されていました。私自身もロケハンの時に何軒か転売で利益を上げているオーナーに会うまでは、古い住宅が付加価値をつけて転売されている事を知りませんでしたが、リノベーションされた家の中を歩いて、その意味と実情を知る事ができました。日本では古い物件を購入し、かなりの予算をかけて新しくしたとしても、新築と同じ金額で取引されることはありえません。

しかし、アメリカでも古い住宅を新しく改装しただけで不動産価値が上がるわけではありません。人気のエリア、有名建築家の設計、有名人が住んだ家、人気のミッドセンチュリー時代のモダン住宅など、二度と手に入らない物件など人が欲しがる条件がいろいろあります。価値を上げるリノベーション手法は2つあり、建てられた時代と違う、新しいデザインを施した住宅で、多くは景観と置かれる家具が価値を上げてます。一方は、建てられた時代のオリジナルに戻すリノベーションで、有名建築家やその時代に人気だった建築家や有名人が住んだ家で、家具もその時代に合わせリプロダクトでないオリジナル家具で、コンセントやスイッチ類まで、その時代の物が使われています。ここまで徹底するかと驚く事が多くありましたが、相当なセンスと努力が価値を高めて利益を上げるフリップにつながります。

アメリカではいろいろな物に価値をつけて商売にしています。現代アートの取引もそうですが、有名なのは自動車で、古い車だけでなく、人気の車種でそれをオリジナルの状態にレストアして当時と同じ走りを取り戻した車に価値が付けられます。昔は古いフェラーリでしたが、この数年はナローポルシェと言われる1970年代の901型で、1960年代の356型と言われる古いポルシェより価格が沸騰しました。Gパンと言われるデニムも同じで、日本から火がついたのですが、戦中のデニムや鉱山内で発見される1920年代のリーバイスには数万ドルの価値が付けられてデニムハンターという仕事を生業としている人もいます。どれも欲しがる人がいるから価値が上がり、どの物も今では手に入らないという希少性が条件になります。日本の大正時代の着物があっても二束三文なんですが、、。

1月13日に開催したアメリカ西海岸セミナーでは原爆の父のオッペンハイマーが住んだ1960年代の住宅も紹介しましたが、照明スイッチや置かれる小物までこだわった住宅でした。今年はどのような情報をお伝えできるのでしょうか、実際に行って感じた事をセミナーとしてお伝えするのが私のスタイルです。次のセミナーをお楽しみに!
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

ハリウッドヒルズに建つフォトグラファーの住宅。1970年代の住宅を2011年に購入し3年かけてリノベーションされました。まるで美術館のような住宅は家具もアート級で、売れば間違いなくフリップ成功です。
セレブが多く住むウエストハリウッドに建つ1960年の原爆の父、ロバート・オッペンハイマーの住宅です。オリジナルの状態に戻されて、キッチンのオーブンや水栓、コンセントやスイッチ類も1960年代の物が使われています。映画にも使われる家で有名人の住んだ家は人気です。