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2021.6.29 DESIGNER
インテリアに安らぎを
AD CODE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.121
いつもならアメリカ西海岸での撮影のため、撮影場所を決めるためにロケハンへ行っている時期ですが、今年は2年に一度の海外ロケは断念する事になりました。2003年スタート時にはどうしても豪邸に目が行ってしまい、そんな邸宅を借りて撮影を行いました。しかし、撮影を重ねるごとに時代に合った住みやすさを感じる快適な建築で撮影をするようになりました。ロケハンする時に感じるのは、住まいとして使用されている良い家は、良い香りと安らぎを感じる事で、そういった住まいには、さりげなく生け花が置かれている事が多く、オーナーの来客や家族への優しさを感じ、建物にも愛情を感じます。これは取材に回った数百軒の住宅にも言える事です、庭の草花の手入れが行き届いている事も同じです。
撮影に使用する家具は、ロケハン後に仕様を決めてコンテナでアメリカまで輸送するのですが、デコレーション小物は現地で調達します。その中でも重要なのが花と花器で、住宅や撮影する家具に合うようなものを探して調達します。花器や小物の多くは、現地のプロデューサーのYASUKOさんの自宅にある物をお借りします。所有されている小物や花器はどれもセンスが良く、その量にも驚きます。中にはラリックのガラス器などもあり、お借りして持ち歩きする時には緊張します。その花器に入れる花はロサンゼルス市内で購入するのですが、ウエストハリウッドにあるスーパーマーケットにも沢山置かれていて、花に困る事はありません。しかし、その年のテーマに沿った花が無い場合もあり、ダウンタウンのフラワーディストリクト(花市場)へ仕入れに行きます。
ロサンゼルスのダウンタウンには、花だけでなく玩具や食料など、街のブロック全体に同じ店が集まったディストリクト(地区)があり、フラワーディストリクトと言われる数百の店が集まった公共の花市場があります。プロや卸売業者の入れる時間と販売価格は別になりますが、入場料を支払えば一般客も入場して購入もできます。ロサンゼルスの花市場の歴史は、1892年に日本からの移住者がロサンゼルス南部で花生産を開始し、1913年に日系人がこの場所に花市場を開設した事が始まりだそうです。以前、聞いたのですが、ロサンゼルスの庭仕事も日本からの移住者が始めたそうで、今は輸入花が多く、バラなどはエクアドルやコロンビアからの輸入がメインになっているそうです。花市場や庭師のガーデナーは南米の方がメインになっていますが、アメリカのインテリアに華やかさを与えたのが、日本人と聞くと嬉しくなります。
中にはエリアごとに違う種類の草花が置かれ、それに合わせる花器の販売もされています。一般客が入れる時間帯に入ってもフラワーコーディネーターやデコレーターなどインテリアのプロらしき人がメインで、リヤカーほどある大きな台車を借りて回っています。朝2時からオープンしているので、私たちが入れる8時頃には置かれている花は少なくなっていますが、それでも日本ではあまり見かけない草花が多く、かなり安く販売されています。日本に比べ原色系の色が多く、撮影には向かない花も多いのですが、グラフィックデザイナーの方とスタイリストと会場をリヤカーを押して、大きなバケツ一杯に花を仕入れます。一回の撮影に使用する花は20セット近くになり、撮影中に花器に花を生けるスタイリストの方は大変ですが、製品の邪魔にならないサイズ感を大切にしながら、打ち合わせして進めていきます。
アメリカのスーパーマーケットの入り口近くの良い場所には花が沢山置かれ、その華やかさを見ると暮らしに必要なアイテムとして普段使いされているのがよく分かります。コロナ禍で日本でもホームセンターでの草花が沢山売れていると聞きます。当社でも東京、大阪、名古屋のショールームスタッフが相談しながら、自分たちで花を使った展示をしています。インテリアに安らぎを与える花は私も大好きです。もう少しでオリンピックが始まります。表彰台で手にするのはどんな花束なんでしょうか。それを見るのも楽しみです。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)