COLUMN

2025.8.29 DESIGN

3Dプリント技術と家具開発

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.159
今年も新作となる 2026年モデル の開発を進めており、加えて当社の創立40周年を記念したイベントの開催も予定しています。新作開発における設計・開発体制をさらに強化するとともに、イベントで使用する模型制作のため、最新の3Dプリンターを新たに導入しました。従来機(約5年前に導入)と比較すると、立体表現の精度や造形スピードが格段に向上しており、すでに新製品開発の現場で早くも活躍しています。

3Dプリンターは2009年の技術特許切れを機に多くの企業が市場に参入し、以降、進化と改良が加速しました。当時1000万円を超える大型設備が主流だったものが、小型化と低価格化が急速に進み、現在では家庭用の機器が1万円台で購入できるほど一般化しています。今回導入した「Bambu Lab」は高精度とスピードを兼ね備えながらコストパフォーマンスに優れており、当社の家具開発における大きなアシストとして期待できる存在です。もともと3Dプリンターは試作品製作を目的として開発されましたが、現在では自動車・医療・宇宙開発など多岐にわたる分野で応用されています。特に粉末積層方式を用いる機器は、F1のエンジンパーツやフレームパーツの製作にも活用され、従来では考えられなかった効率性とコスト削減を実現しています。

この3Dプリント技術は、私が個人的にここ数年観戦を楽しみにしている世界最高峰の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」でも重要な役割を担っています。ツール・ド・フランスは3週間にわたり、1日平均200km前後を走り抜け、標高2000m級の山岳地帯を越えながらフランスを一周する過酷な大会です。プロチームのエンジニアやメーカーは、選手が持つパワーを余すところなく発揮できるよう、人間工学や空力性能を極限まで突き詰めています。わずか1秒を削るために、人と機械が融合した最適化が日々のデータと共に研究されています。近年では、選手一人ひとりの体格やライディング姿勢に最適化されたハンドルやサドルを、3Dプリンターでミリ単位の調整を加えて試作製作するケースも増えています。長時間のレースでは、わずかなポジションの違いがパフォーマンスに直結します。また、選手たちは大会期間中、栄養摂取の内容や量を細かく記録・管理し、出力を最大化させる徹底した調整を行っています。こうした背景からも、超人的なパフォーマンスを支えるのは個々に最適化されたデザインの力であると実感しました。最先端技術が人間の能力を最大限に引き出すという点に、ものづくりの可能性を改めて感じました。

家具づくりもまた、「人に合わせる」という本質において共通しています。当社では快適な座り心地や使用感を実現するため、人間工学に基づいたモジュール設計を行っています。使用シーンや用途に応じ、人体の平均寸法を基準にした設計を採用することで、デザインは異なっても共通した快適性を提供しています。さらに今回新調した3Dプリンターを活用することで、三面図やCG上ではイメージしづらい複雑な形状も瞬時に具現化できます。実際に形にしてみて初めて気づく改善点や課題は多く、開発のスピードと精度を同時に高めてくれます。今回導入したプリンターは、当社のものづくりにおいてより魅力的な家具をデザイン設計することに貢献してくれると感じています。これからも最新技術を積極的に取り入れながら、個々の暮らしに最適化された快適な家具づくりを進めてまいります。(開発部 渡辺 文太)

ARCOチェア(AD-011)の1/5スケールモデル。印刷精度向上と効率化のため、パーツごとにプリントし組み立て。 左上写真:右が3Dプリンター、左は約24年前に手作業で製作されたスケールモデル。右下写真:リアルタイムで印刷状況を確認可能
左写真:タイムトライアル用TTバイク。極限まで速さを追求した空力性能抜群のデザイン設計。ヘルメットから靴下までも空力を優先して考えられているそう。右写真:今年優勝を果たしたライダーが使用するバイクはイタリアのCOLNAGO社製。3Dプリントで車体からハンドルに至るまでを何度も試作し、空気抵抗、力学的に計算されたデザイン。(https://www.colnago.com/en-jp)

2025.8.29 DESIGNER

天然と人工のレザーとレザーフリー

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.171
先日、久しぶりに接客対応をしました。そのお客様はご家族と最終確認に来られたのですが、前回来社された際に故郷の高知出身のお客様ということで親しくお話しさせていただきました。今回は検討中の製品についてアドバイスを求められました。現在検討中の製品が空間と合うか、小さなお子さんがいるので、使用予定の素材の耐久性などについて、私自身は営業とは違う観点で考えるので、自分ならといろいろお話をさせていただきました。座り心地では、お客様が検討されていた製品とは違う製品を示して、椅子は腰当たりで長く座れるかが決まることや、素材の耐久性の違いや使い方などを提案しました。せっかく決まっていた製品や素材だったのに、営業担当に申し訳ないなと思いながらも…。

使用される予定のファブリックは人工レザーだったのですが、それを見て「何年くらい使われますか?」とお聞きすると、孫が小さいので汚れにくく耐久性があるものが良いと思い、耐久性の高い人工レザーを選ばれたとのことでした。私からは「6年程度なら人工レザーの方が良いかもしれませんが、10年以上使うなら天然革に勝るものはありません。」とお伝えしました。私と同年代だったので「昔はビニールレザーが使用されていた車やバイクのシートは劣化して割れており、最近では使われませんし、最近は耐久性が上がっていますが革には勝てません」とお話ししました。そう話をさせていただき、接客担当に変わりました。後から、営業担当者が製品がグレードアップし素材も革に変わったと喜んでいたので、お客様が提案したものに変えていただけたことがわかりました。

人工レザーの方が天然皮革より耐久性が高く汚れにくいという認識は強く、素材自体が劣化するということはあまり知られていません。人工レザーは素材によりますが、湿度や紫外線で劣化が進みます。これは製品素材が生産された後から始まります。天然皮革や天然素材のファブリックは環境によって劣化や退色することはありますが、素材自体が溶けたり崩壊することはあまりありません。昔の自動車のシートの割れなどは良い例で、私自身もスニーカーのスタンスミスで本体の革が大丈夫なのに、後ろのブランド名の緑のタグがボロボロになったことや、母の遺品整理をしているときに見つけた40年近く前のイタリアからのお土産のブランドバッグが表面の革はまったく何もなっていないのに、中を開けると内装の人工レザーがベトベトに溶けてしまっていた経験など、人工レザーの劣化を経験しています。一方、若い頃に買った天然皮革のジャンパーや革靴は今でも現役で使えています。

最近、レザーフリーやアニマルフリーとして、本革を使わないことを聞くことが多くなってきました。動物の本革を使用しないということで、動物を殺さない動物愛護ということでスタートした運動で、一部のファッションブランドから始められました。その代わり、植物由来のヴィーガンレザーが注目を集めるようになりました。ヴィーガンレザーといっても多くの製品はまったく石油由来の素材を使用していないわけではなく、下地に天然素材を使用し、表面にはポリウレタンやPVCをコーティングして作られています。自動車メーカーでもレザーフリーをPRする会社が海外では増えてきました。アニマルフリー運動は毛皮素材のためだけに飼育されるミンクやフォックスやワニやヘビなどのエキゾチックレザーと混同されていて、車や家具に使用される革は100%食用肉の副産物です。命ある生き物を殺して生活している私たちはその命を100%いただくことで持続可能な生活ができるのではないでしょうか。

天然皮革が耐久性が高い理由は下地の強さにあります。天然皮革はコラーゲン繊維が絡んでいる下地、その上に銀面と言われる強い表皮層が一体化していて、その上にウレタン塗装などの染料を塗布しています。皮のコラーゲン繊維を鞣して革にするために、クロムなめしやタンニンなめしを使用します。そのクロムなめしのクロムが六価クロムと誤解されていますが、クロムなめしに使用されるのは自然界に存在する三価クロムです。限られた予算とある程度の耐久性では、人工レザーの方が優れていますし、メンテナンスさえすれば長く使えるのが天然皮革です。用途によってお使いいただければと思います。私も知らなかったのですが、2024年3月に日本産業規格(JIS K 6541用語)が改訂され、「革」および「レザー」という用語の定義が厳格化されました。この改訂により「革」や「レザー」と呼ぶことができる製品は動物由来のものに限定されることになったそうです。

30年以上前に購入して修理しながら履き続けた革靴も裂けてきたので、役目を終えようとしています。何度も修理をして足になじんだ革靴を諦めきれずに、磨きながら捨てようか悩んでしまいます。今の自動車は電気パーツが多いので、10年以上使うことは考えなくても良いので人工レザーの使用が進んでいるのかな…と思いました。そろそろ2026モデルの新作試作の素材を決めないといけません。今年で40年になったエーディコア・ディバイズです。50年に向けての素材選びも重要です。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

天然皮革と人工レザーの表裏。上から 天然皮革(クロム仕上げ)、PUレザー (ウレタンレザー)、PVCレザー (塩化ビニルレザー)。天然皮革(1.2ミリ厚)は繊維層の上の銀面にポリウレタン塗装を塗布したもの。革は下地と表面の境がなく一体の素材で下地の繊維層が厚い。引き裂きや擦れに強度があり熱にも強い。PUレザー: 柔らかな不織布にポリウレタン樹脂をコーティングしたもの。天然皮革に近い風合いや柔らかさを持っています。湿気や紫外線、熱に弱い。加水分解など起こしやすく表面のベトつきや剥がれが起きやすい。PVCレザー : メリヤスなど織物にポリ塩化ビニル樹脂をコーティングしたもの。耐久性が高く、汚れに強く、価格が安価。湿度や紫外線、熱に弱い。年数が経つと硬くなり割れてくる。
左:購入してから30年以上経つUチップの革靴。スグッドイヤーウェルト製法で作られています。裏は革底でしたが、ゴムのビブラムソールに張り替えのオールソールを2回して、踵は4~5回交換しています。外はまだ元気ですが、中と履き口が裂けてきたので、限界かもしれません。補強すればまだ履けるかな、、。右:革ジャケットでゴート(山羊)のタンニンなめしの革を使ったもので、33年前に横浜元町のトゥモローランドで購入しました。表面は色褪せして袖口は擦れてきましたが、まだまだ現役です。私が死ぬまで使えそうです。

2025.8.28 PRODUCT INFO.

NC-054

クリエイティブ・ディレクター瀬戸 昇が、デザイナーからの視点で写真だけでは伝わらない製品の魅力を動画でお伝えします。
今回はNEO CLASSICOより、低く柔らかなフォルムが特徴的なラウンジチェアNC-054を紹介します。

 

2025.8.27 SHOWROOM

無垢材テーブルで叶えるサスティナブルで豊かな暮らし

AD CORE DEVISE SHOWROOM BLOG Vol.485(東京・六本木ショールーム)
新しくダイニングテーブルを選ぶときデザインやサイズだけでなく、どのような素材にするかも検討されると思います。木素材やガラス、セラミックなど様々な素材がありますが、一般的には木素材のダイニングテーブルを選ぶ方が多いのではないでしょうか。木素材でも「無垢材(一枚板・集成材)」「突板」などがあります。その中でも無垢材テーブルは、当社でも木の温もりがお好きなお客様から人気がありますので、無垢材テーブルの特徴や魅力とそれぞれの特徴をご紹介いたします。

無垢材テーブルは「一枚板」「集成材」を総称したものです。木の質感や温もりを最も感じることができ、使い込むほどに味わいが増していきます。エーディコア・ディバイズの無垢材テーブルは集成材の天板で、無垢材を接着剤で貼り合わせて作った板を使用しています。一枚板よりも価格が手頃で反りや割れが起きにくいのが特徴です。一枚板テーブルは、一本の木から切り出した板をそのまま使用したテーブルです。樹形によって天板の形が異なり木目にも個性が出やすく、世界で1枚だけのテーブルになります。そのほか突板テーブルは、薄くスライスした無垢板を、芯材と呼ばれる木材に貼り付けて作るテーブルです。表面は本物の木を使用しているため見た目は無垢材に近く価格は手頃です。
無垢材のテーブルは、見た目の美しさだけでなく、使い続けることで得られる多くのメリットもあります。無垢材テーブルの最大の魅力は、二つとして同じものがない木目や色合いです。自然な表情は空間に温かみと安らぎを与えてくれ、使い込むほどに色合いが深まり艶が増していく経年変化も楽しめます。また、傷のメンテナンス性の良さも魅力です。ダイニングテーブルや作業テーブルとして使用していると、日常的に小さな傷や汚れがつく場合があります。無垢材は水分を吸収して膨張する性質があるため、へこみ傷は水分と熱で修復できることがあります。また、当社の無垢材テーブルはウレタン塗装を施していますので傷がつきにくいですが、浅い擦り傷が付いた場合は補修ペンやマーカーで傷の部分に色を補うことで目立たなくすることができます。深くえぐれてしまった傷には、木工用のパテを詰めて修復する方法もあります。無垢材テーブルは、適切に手入れをすることで、傷も「味」となり、愛着を持って長く使い続けることができます。無垢材テーブルは、手入れをしながらともに歳を重ねる「家族」のような存在になってくれると思います。無垢材テーブルを選ぶということは単に「モノ」を買うのではなく、「豊かな時間」を選ぶということに繋がります。日々の食事や家族との会話の時間、仕事や勉強の時間がより充実したものになり質の高い暮らしが実現します。

無垢材テーブルの人気の背景には、「長く使えるものを選びたい」という価値観があります。 使い捨ての時代から、手入れをしながら長く使い続ける時代へ。 自分たちの暮らしとともに味わいを深めていく無垢材の家具は、サスティナブルな暮らしの第一歩です。無垢材テーブルを取り入れて、豊かでサスティナブルな暮らしを始めてみませんか。東京・六本木ショールームでは、ダイニングテーブルMD-107Nを展示しておりますので、ぜひ無垢材の手触りなどお試しください。皆様のご来場をお待ちしています。
(ショールーム担当:西條 恵理)

ご予約はこちらから

オーク材の無垢素材をミニマルなモダンデザインに表現したダイニングテーブル(MD-107N)です。天板には、オークの無垢材(巾ハギ板)を使用しています。天板トップはナチュラル感を引き出すために、うずくり加工を施し木目を引き立たせました。ソリッドウッドの動きを考慮した構造と安定感のある天板とフラットな脚を持つデザインは、シンプルな空間を演出します。
左上:MD-107N はオーク材を贅沢に使用したダイニングテーブルです。 天板には素材感を最大限に生かすために、ランダム接ぎのうずくり加工を施しました。
右上:MD-607は、素材感を感じさせるうずくり加工の無垢天板に、スチールの脚部を組み合わせたシンプルなダイニングテーブルです。ミニマムなデザインながら安定感のある脚部は、取り付け位置が可動出来ます。
左下:MD-207は無垢のホワイトアッシュ材を使用した贅沢なダイニングテーブルです。シンプルで軽快なデザインの脚部は脚位置を移動する事ができ、様々なシーンでのご使用が可能です。
右下:MD-107Lは無垢素材を天板・脚部全てに使用し、ミニマルなモダンデザインに表現したダイニングテーブルです。うずくりされた無垢天板は素材感を最大限に活かし、低く押さえられた高さ(H650)は安定感を演出します。

2025.8.26 SHOWROOM

ソファとのコーディネートを楽しむチェア

AD CORE DEVISE SHOWROOM COLUMN Vol.484(名古屋・栄ショールーム)
最近は、ソファセットをお探しにショールームへご来場いただくお客様が大変増えています。お客様のご要望に合わせて打ち合わせをさせていただきますが、空間作りのご提案としてラウンジチェアをご紹介させていただく機会が多くあります。ラウンジチェアを加えることで空間が引き締まった印象になるだけでなく、ソファに向き合うようにレイアウトすれば、ソファに座っている方と顔を見合わせて談笑もでき、コミュニケーションが取りやすい空間となります。今回はソファセットと組み合わせてご使用いただきたいラウンジチェアをご紹介いたします。

2025MODELのMD-1201Lは、座り心地の良さで定評のあるダイニングチェアMD-1201A /Cと同モデルのラウンジチェアです。軽快感のあるデザインはそのままに、厚みのある背はアームから背にかけて身体を優しく包み込んでくれます。くつろぎの時間に長く座っていても疲れにくい座面は、安定感のある座り心地です。そして、チェアの高さは一般的なラウンジチェアより低めにデザインされていることで圧迫感がなく、ソファと組み合わせてレイアウトしても視線を遮ることなくご使用いただけます。また持ち運びもし易いデザインなので、来客時に移動したり、お掃除の際の移動もスムーズです。
次にご紹介するのは030-MODELです。「ラウンジチェアを置きたいけど、スペースが限られるので」と、躊躇されるお客様にもピッタリなNC-030Mダイニングチェアは、一般的なチェアよりゆったりとしたサイズ感とソファライクなデザインや座り心地で、スモールサイズのラウンジチェアのように活用いただけます。オプションで本革パイピングを選ばれると、よりラグジュアリーな印象でご使用いただけます。030-MODELにはラウンジチェアの展開もありますので、空間やお好みに応じてお選びください。このように、ダイニングチェアも充分くつろぎのシーンで活用いただけるアイテムです。デザインや座り心地、サイズ感などお好みのアイテムで自由な空間作りをお楽しみください。

ショールームでは皆様のご要望に応じて空間作りのお手伝いをさせていただきます。お気軽にショールームスタッフまでお声掛け下さい。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(ショールーム担当:水野 未佳子)
ご来場予約フォームはこちらから

右:ラウンジチェアMD-1201L ダイニングチェアMD-1201A /C同様に、安定感のあるフォルムと優しい座り心地でくつろぎの時間をお過ごしいただけます。 左上:ソファとラウンジチェアを組み合わせた名古屋・栄ショールームのディスプレイ MD-1201Lの低めの背の高さが圧迫感なくコーディネートに活きています。 左下:NC-075ソファとの組み合わせは大人気です。
ソファライクなNC-030Mチェアならラウンジチェアとしても、ソファのボリュームにも負けないコーディネートが叶います。