COLUMN

2022.11.25 DESIGNER

最後のアメリカ西海岸ツアーに向けて

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.138
2週間続いた2023年モデルの発表会を無事終えてホッとしています。新作のコンセプトも好評でしたが、新製品へのSDG’sへの取組みが好評で、今後は従来製品の環境問題への改善も必要になる必要性を感じました。東京の展示会では撮影でお世話になっているロサンゼルス在住プロデューサーのYASUKOさんが来社されました。このコロナ禍で三年ぶりの日本への帰国で、来年2月に予定しているアメリカ西海岸ツアーの話もすることができました。今回企画中のツアーはYASUKOさんの完全帰国により最後のツアーで、9月にロスへ行ったのもツアー先と現地の安全性を確かめるためでもありました。

YASUKOさんとの出会いは、20年近く前のアメリカ西海岸でのカタログ撮影がスタートでした。国内でのロケ撮影で他社との差別化とハウススタジオでのリアリティを出す事に限界を感じていた時、香港かオーストラリアやバンクーバーで海外ロケをしたいと大手印刷会社や広告代理店に見積もり依頼をすると、製品移動費や現地での機材やカメラマンなどの撮影費が膨大になり、とても当社が出せる金額ではなく、TVCMなど出せる大企業でなければ無理だと諦めてしまいました。しかし元来諦めが悪く何か手がないかと、知り合いのカメラマンを通じてロサンゼルスの撮影プロデューサーのYASUKOさんを紹介いただき相談しました。アメリカでの撮影はあまり頭になく、ロスではモダンな建築ばかりで、クラッシックやヴィンテージなどの雰囲気のある写真は難しいだろう、そして、アメ車と同じで質の悪い建築ばかりではと思い込んでいました。

YASUKOさんに相談すると、ロサンゼルスはハリウッド映画が基幹産業で、街全体が撮影への理解もあり、市の協力体制など、撮影がしやすく、なにより世界中の建築様式を撮影する事が可能だと言われました。まずは、ロケハンに来て実際に見てみればと言われたので、すぐにロサンゼルスへ飛びました。YASUKOさんに最初にお会いした時に思ったのは、小さく華奢な身体の方で、私達のような家具メーカーが行うハードな撮影は理解していただけないかもしれないという事です。しかし、その思いはすぐに間違っていた事に気づかされました。ヨーロッパのファッション雑誌やカメラマンのための撮影プロデューサーもしているという事で、予算が少なければ、工夫しながら一緒に身体を動かして仕事をされる方で、当社の事を十分理解してくれました。最初はアメリカでの撮影なので、ロケバスやケータリングでのランチなど手配しないといけないのではと思っていましたが、ランチやドリンクの買い出しや、機材手配などYASUKOさん自ら行って、私も荷物異動など自分達でできる事は全て行い、予算の中で撮影をする事ができました。

最初は厳しい予算の中の撮影なので、それなりの写真しか難しいかと思っていましたが、YASUKOさんは日本でも有名な世界的写真家のヘルムート・ニュートンやピーター・リンドバーグなど沢山の巨匠カメラマンとも仕事をされており、プロフェッショナルとして仕事をするために、ファッションだけでなくアートや建築について深く勉強をされていて、そのプロ意識の中で様々な人とも付き合った様々なブレーンや友人がいて、撮影場所の選定で重要なインテリア小物の質から場所の良し悪しも見抜いてしまいます。そういった眼力から当社の撮影は、場所の良さだけでなく、インテリアとしても本物の空間で撮影することができました。嬉しい事に、私自身の事も気に入ってくれ、会社としての仕事を引退してからも瀬戸さんの撮影だけは続く限りはしていきますと言ってくれました。これはデザインだけでなく、仕事の姿勢がYASUKOさんと同じ一生懸命な気持ちが通じるからとの事でした。そういう事で、ウエストハリウッドのYASUKOさんの家の小物だけでなくガレージも荷物置き場に借りる関係になっていました。

何回目かのロサンゼルスでの撮影後に、お客様から当社の撮影場所を見てみたいとの話があり、撮影した場所を訪問するツアーが始まりました。撮影プロデューサーのYASUKOさんにツアー開催のアテンドをお願いする事には気が引けましたが、お話をすると、建築やインテリアが大好きで生まれ変わったら、建築家かデコレーターになりたいと思っていたので、当社のお客様のインテリアデザイナーやコーディネーターの方を案内するのは光栄で、何より新しい建築を見る事ができるので楽しみだと、それからコロナ感染まで続けてきました。今まで、アカデミー賞受賞者の家やハリウッド俳優、建築家やグッチのカメラマンのグレン・リッチフォルド氏のホテルなど雑誌に取り上げられる住宅の多くを見てきました。

いよいよ、来年にYASUKOさんの完全帰国となり、最後のツアーを開催する事になり、今までのツアーでお見せしなかったウエストハリウッドに立つYASUKO邸も訪問許可をいただきました。YASUKO邸は岩合光昭の世界ネコ歩きでも撮影された住宅です。現在、決まっている建築は、写真家の巨匠フィリップ・ディクソンのベニスビーチの住宅や、スイムファッションブランドのブルーロッド・ビーティのデザイナーの住宅の2軒、その他に最後を飾る建築や住宅を計画しています。また、YASUKOさんの友人の不動産業の方に見せていただいた60億円レベルの家を見れるように交渉しています。アメリカ西海岸のセレブが住まう生きたインテリアを見るチャンスは貴重です。申し込みは11月30日まで。このチャンスをお見逃しなく!
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

右:ウエストハリウッドの丘の一等地に建つYASUKOさんの家。1980年代に購入された家で、中に置かれる家具やアートの多くはオークションで購入したセンスある名品ばかりです。隣はトミーフィルフィガーの息子さんの家。左:YASUKOさんの家の販売を依頼している不動産会社のハリウッドにあるオープンンハウスで1920年代に建てられた家。その不動産会社では一番安いランクという事で販売価格は400万ドルでした。
右:スイムファッションブランドのブルーロッド・ビーティのデザイナーの住宅。1950年代に建てられたミッドセンチュリー住宅で、オリジナルに戻された建物も家具やアートもデザイナーらしくセンスが良いです。左:写真家の巨匠フィリップ・ディクソンのベニスビーチの住宅。フィリップ氏は仙人のような方でこの家は様々な建築誌やファッション誌にも取り上げられました。巨大なスタジオのような家でした。