COLUMN

2023.11.30 DESIGNER

中身から地球環境を考える

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.150
報道番組で気候変動の事を放送していました。2023年は人類の観測史上最も暑い夏になり、地球温暖化から地球沸騰化と言われるまでになり、世界各地では異変が相次ぎました。深刻な干ばつによる水不足で気候難民が急増したアフリカの事が紹介されていて、紛争難民と違い受け入れ先が少ない事や、先進国から戦争には何兆円もの支援が集まるのに対し、干ばつなどの難民に対して支援の手が届きにくい事が問題になっていました。地球沸騰化の理由が急速に進む世界各地の森林消失で、それが気候変動に拍車をかけているという事でした。代表的なものは東南アジアのパームヤシの農園で、農地のため森林を切り開き焼畑で森林が燃やされている、それが日本で洗剤やマーガリンなどの食用油になるためにという事です。

物作りに携わっている者は地球温暖化に対して責任ある製品作りを本気で考える時期になっています。販売される製品は価格競争のため、中身に使われる素材のコストを切り詰める必要があります。そのために工業製品だけでなく、加工食品でもフェアに取引されていない材料が使われる事があるようです。チョコレートに使われるカカオ豆の原産地での労働環境や買取問題からフェアトレードされた豆を使った事を認証する制度が生まれました。しかし、これは一部の事で、遺伝子組み換え表記はされていますが、多くは産地表記だけの材料が流通されています。日本では原材料の輸入依存率が90%越え、私たちの生活は海外からの材料輸入がなければ成り立ちません。コロナ禍で輸入コンテナの不足やウッドショックで輸入材の高騰など、原材料の高騰が続いてきました。その中で輸入先の見直しや国産材料の見直しなど進みましたが、景気の後退で高騰していた材料が余り出すと価格が下がり、また以前と同じ材料を使用する動きになってきました。

当社製品は国内生産の木製家具がメインで、椅子やテーブルの表面材はアッシュ材やオーク材、メープル材など北米やヨーロッパから輸入された材を使用しています。表面材は森林循環型の証明がある材料を使用していますが、見えない中に使われている材についての産地などは無関心だったと思います。特にソファやラウンジチェアのような大きな製品はファブリックで覆われた中に、椅子の数倍の木材料や石油由来のクッション材が使われていて、お客様からは中に何が使われているか分からなくなっています。ソファの中にはラワン合板や強度が必要な箇所には安価な南洋材が使用され、容積のほとんどを占めるクッション材には石油由来の発泡ウレタンフォームが使用されています。南洋材やラワン合板は東南アジアで伐採され5,000キロ以上海上輸送されて日本へ届けられています。森林伐採も危惧されますが、輸送距離の長さから二酸化炭素排出量が多い材料になっています。

2021年から製品梱包へのビニール袋使用や発泡スチロール材の使用を停止し自然由来の材に変更して、必要不可欠な石油由来の材はPPバンドなど再生品に変更しています。2023年モデルでは国内針葉樹合板とリサイクルされたリボンテッドフォームを80%以上使用した製品を発表し、2024年からは全ソファに使用されるラワン合板を国産針葉樹合板に変更します。また、2024モデルソファでは中身の合板を国産針葉樹合板や再生紙など100%近く国産材にし、クッション材のリサイクルフォームを90%まで高めた物を使用しました。針葉樹合板はその合板工場近くで伐採された木材を使用し、合板工場から近距離のソファ工場で製作しています。背に使用される再生紙は佐賀県の紙工場で製造した物を使用し、全ての材料輸送距離にこだわり、2024モデルソファは環境負荷率を極限まで抑え製造する事ができました。

私自身、当社の製品に使用される物はできるだけ自分の目で見るようにしているので、合板工場も見に行きました。九州山地に囲まれた玖珠盆地にある工場は、5年前に出来た最新工場で、材木置き場も周りの環境に配慮された置き方で、子供の頃に営林局員の父の関係で見ていたカブト虫の幼虫が沢山いた泥だらけの材木置き場とは全く違います。樹皮も燃焼させ工場での熱源に使用し、排煙も二次燃焼させて煙も出ません。残る材は5センチ程度の丸太でそれもガーデン用品として販売されゴミが全く出ません。杉や檜の間伐材や建材には不適合な大径木と言われる材を無駄なく合板に加工されていました。バイオマス発電に使用される為に燃やされる杉や檜材に比べ、本当に環境に配慮した使い方です。そしてなにより、植林と管理された森を育てる事に役立っています。お伺いした工場の方から聞いて気になったのは、ウッドショックと言われた昨年まではフル生産だったが、コロナが落ち着いて海外からラワン合板が入るようになり、出荷数が減り計画減産しているとの事です。環境に配慮した材を継続して使う事も持続可能な環境配慮だと思うのですが、、。

2024年モデルの発表会がいよいよスタートします。今回の製品はデザインだけでなく、製品の中身も感じていただければ幸いです。杉や檜の香りのするソファなんて素敵だと思いませんか。展示会ではリサイクルコットンを使用したトートバッグや、大分県日田市の下駄工房MOTONOで作られた日田杉特製コースターをお土産にお待ちしています。お楽しみに!
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:九州山地に囲まれた大分県の玖珠盆地にある工場。煙も二次燃焼させて排出しません。右上:ゴミ一つ無い貯木場。周りの環境に配慮して汚泥など流出しないようにされています。左下:巨大な合板工場内。中もゴミ一つ落ちていません。環境に配慮した製品を作る工場は中も綺麗です。右下:丸太はこのサイズの棒しか残りません。樹皮や他の木屑は工場のプレスなどの熱源になります。
左上:大分玖珠工場で作られた針葉樹合板を100%使用したフレームです。節などありますが、強度はラワン合板以上になるように厚さなど検討しました。右上:合板は無駄なくカットされてフレームに使用されます。椅子などの無垢材に比べ廃棄率が少なく無駄がありません。左下:2024モデル記念トートバッグ。リサイクルコットンが使われた布を使用しています。右下:日田市の下駄工房MOTONOで作られた日田杉のコースターです。MOTONOはスノーピークの下駄を製作している工房です。