COLUMN

2024.11.30 DESIGNER

広尾から六本木へ

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.162
六本木の新本社ショールームの工事も完成間近です。7月16日に物件情報があり、9月5日に契約してからインテリア設計、10月1日からの工事開始でしたので、11月末完成が可能か本当に心配しました。多くのお客様からはこの時期にその短期間で完成までできるのは奇跡ですねと言われましたが、なんとか12月12日のオープンする事ができそうです。広尾の倍以上の面積のある六本木新本社が3ヶ月未満で完成できたのは、関係会社、工事会社、現場の職人さん達のおかげだと本当に感謝します。

1985年に創業し15年過ごした新橋から、2000年に広尾の地へ移転してからもう25年が経とうとしています。最初の新橋ショールームは太陽の光が全く入らない倉庫を改装したNYのソーホーのようなショールームでしたが、移転した広尾は一棟建てでした。うっそうとした木々に覆われた古びた建物でしたが、自然光の入る素敵なショールームになりそうな気がして移転を決意、内装設計から始めて広尾でも4ヶ月以上の時間がかかりました。デザイナーとして理想の仕事場とショールームを求め現地計測から入りインテリア設計を行いました。木漏れ日の入る仕事場は理想的で、この広尾での環境が当社の製品の創造の再出発となりました。ここでは上質さをテーマにしたネオクラシコブランドや、カリフォルニアスタイルのエーモードブランドが生まれ、自分自身のクリエイティブな部分を自然光の中で作ってきました。

移転した広尾ショールーム本社は渋谷区でしたが建物の南側に竹林があり、春には筍が生え食べる事もできました。日本でも高額な場所に生えた筍を食す機会はそうはないかと思います。一年を通して笹の葉が揺れる木漏れ日が事務所に入る日差しが心地よいオフィスで、3階までのショールームまで日陰を作ってくれていました。春は明治通りの桜並木が気持ちよく、その後には会社前の日赤通りの両側に植えられたツツジが赤い花を咲かせて閑静な住宅街に彩りを添えてくれていました。夏には会社前の大きな樹木が道路に日陰を作り会社前の花壇は緩い坂を上るお年寄りのお休み場所にもなりました。秋には植栽にある2本のマテバシイが沢山のどんぐりを道に落として、子供達が通学でどんぐり拾いをしハロウィンではお菓子をもらいにショールームを訪れました。冬のクリスマスシーズンには会社の吹き抜けに大きなツリーを飾り、外部の植栽にはイルミネーションを飾ると、前を歩く近所の方から、毎年本当に綺麗ですねと声をかけられました。

広尾では一年を通して季節の移り変わりを感じる事ができて、オフィスビルの中では感じる事のできなかった時間を与えてくれました。近所付き合いも少しずつ増え、入居時には工事車両など苦情の多かった裏のご主人でしたが、いつのまにかお中元やお歳暮のお裾分けをするようになり、エーディコアさんならいつでも前に車を停めていいぞと言われるようになりました。朝の掃除では道路掃除をしていると声をかけられるようになり、近所のとんかつ屋の女将さんからは毎朝みなさんで掃除をされてるね。本当にご苦労様と言われた事もありました。大雪の時は社員総出で、会社の前から道の上下と路地の左右まで人が歩けるように雪かきをして感謝されました。

しかし、前回のコラムでも書きましたが、20年以上経つと徐々に近所の方々も居なくなり、賃貸に変わり街の風景も変わってきてしましました。この広尾本社は自社ビルではなく賃貸です。本当は購入したかったのですが、バブルの負の遺産があり、売るに売れない事情があるという事で、ずっと賃貸のままで過ごしてきました。その広尾本社の建物も7年前に竹林が排水管を壊したという事で撤去され、南側の日陰が無くなり、近年の酷暑でエアコンが効かなくなりました。建物の老朽化もあり、見た目には本当に綺麗な状態の建物なのですが、いよいよ移転という事になりました。今、この広尾に来てから過ごした時間と懐かしさを思うと辛くなりますが、新しい六本木へいよいよ移転です。

今度の六本木は前庭があり、少しだけですが四季を感じられるような草木を植えました。ビルのオーナーや管理会社の方々も良い方ばかりで、これから新しい地で新たな出会いができるように感じています。12月12日からオープンとなります。みなさま是非おいでくださいませ。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

新六本木本社ショールームはビルの一階ですが、前にテラスがあり自然光が優しく入ります。広さは広尾の倍の広さがあります。
2000年の春に内見した時の広尾のビル。南側に竹林が生える3階たての建物でした。その頃の社有車の初期型のメルセデスベンツのAクラスが懐かしい。