COLUMN

2021.5.27 DESIGN

愛着のある家具

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.109
穏やかな春の季節から、いつの間にか雨の日が続く梅雨の季節がやってきました。本格的なワクチン接種が始まりましたが、長い自粛期間の解除の見通しがまだついていませんが、普段の生活に戻るのはもう少し時間がかかりそうです。長い自粛期間の間、今までできなかったことにトライする方が増えています。何か物を作り始めたり、習い事を始めたり、身の回りの「断捨離」はちょっとしたブームにもなりました。当社で増えているのが、お使いになっている家具の張り替えやメンテナンスについてのお問い合わせです。この長いコロナ渦の中、自宅で過ごす時間が増えてきたことで椅子やソファの張替えやメンテナンスを検討する方が増えてきたのだと思います。

エーディコア・ディバイズでは、製品化した基本アイテムは廃盤にしませんので、10年、20年、中には30年以上お使いいただいているお客様もいらっしゃいます。購入いただいたお店がすでになかったり、購入ルートをお忘れになった方も製品に貼ってあるブランドマークから、ネットで探し当ててお問い合わせいただくことも多く、ブランドが継続していることに驚かれるお客様もいらっしゃいます。当社の製品の中には、構造によって傷んだ箇所だけ交換できるものや、背座のみを交換出来るアイテムもありメンテナンス性も考慮しています。以前は、お金をかけるのであれば修理ではなく新しいものに買い換えるお客様が多かったのですが、最近は買い換えるコストとあまり変わらない金額でも愛着のある家具をメンテナンスして使い続けるお客様が確実に増えています。

最近お話をいただいた事例は、 スチール脚を用いたシンプルモダンなスタイルのチェアA-modeのMD-101S。約10年間海外の方にお使いいただいていたのですが、ご主人のお使いの椅子の脚部に歪みが称してきたのでメンテナンスのご依頼をいただきました。ご主人はかなり体躯の良い方のようなのですが、椅子をお預かりすると左側のスチール脚に歪みがあり、徐々に曲がったきたということでした。10年近くお使いいただいていますので、脚部以外にも経年変化が見られましたが、張り地の天然皮革は傷みが少なく、脚部交換とクッション材の補充、天然皮革の張り直しを施したところ、見違えるような仕上がりになりました。もう一件は、ブランドの中でもヴィンテージ感漂う1990年に製品化したレジーナチェアのメンテナンスです。91年にご購入いただいて、30年間お使いいただいていることになります。さすがにこちらは張地も痛んでいましたので、クッション材のオーバーホールと張り替え、内部の木製の構造材も一部破損がありましたので大掛かりなメンテナンスとなりました。張り替えの布を天然皮革の撥水レザーでお選びいただいたこともあり、新しい椅子を購入できるほどの金額になったのですが、愛着があるからとメンテナンスのご注文をいただきました。このレジーナも革張の凛とした椅子に生まれ変わり、お客様のもとへお届けしました。これからも長い間、大切にお使いいただけると思います。

36年前のエーディコアのブランドを立ち上げる時に、それまでの家具作りの常識に抗って無駄な製品は作らず、必要なモノだけをご注文をいただいて製作するシステムを始めました。どんどん新しい製品を出しては売れなくなったら廃盤にする生産システムではなく、今でいうサスティナブルな意識に基づいたモノ作りです。生産する側だけでなく、お使いになる方もますますその意識が高くなってきています。たくさんのものに囲まれて生活してい流私たちですが、その中でも家具は愛着を持って永く使い続けていくアイテムの一つです。エーディコア・ディバイズの製品は、そんな愛着を持って使っていただける家具をイメージして創り続けています。新たな家具のお問い合わせはもちろん、お使いになっている家具のメンテナンスも是非お問い合わせ下さい。(開発 武田伸郎)

左:10年に渡り海外のお客様のご主人を支えてきたMD-101Sチェア。スチール脚に歪みが生じて、天然皮革の張りにもシワや遊びが生じていました。右:張り地の天然皮革を剥がして、クッション材を補充。張りが緩んでいた革をもう一度張り直し。スチールの脚部を交換してリフレッシュ。天然皮革はいい具合に柔らかくツヤも出て、とても10年間お使いになった椅子には見えません。
左:1990年に製品化したAD-901 レジーナチェア。30年お使いいただいている年季の入った状態です。右:撥水加工の天然皮革に張り替えて、オーバーホールされたレジーナチェア。まさに生き返ったかのような仕上がり。これから何十年と活躍しそうな佇まいです。