COLUMN

2024.11.29 DESIGN

2025モデル撮影と新ショールームでの新作展示会

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.151

エーディコアブランド発足から、エーディコア・ディバイズとしてブランディングを開始した1998年から、27年間毎年新製品を発表してきました。(一年のうちに、2回も新製品を発表することも何度かありましたが・・・)新製品を皆様にPRするために、その都度製品の撮影を行ってきました。利便性やコストパフォーマンス、広さや搬入のしやすさなどを検討しながらこれまで、東京都内近郊、様々なスタジオで撮影してきました。巨大な物流倉庫の中にある、車両が入るような大きいエレベーターのあるスタジオや、狭い通路を階段移動しなければならないデザインオフィスの中にあるスタジオなど(当時はデスクやベッドなど撮影するアイテムが大きかったため搬入がめちゃくちゃ大変でした・・・)。今回は、ここ数年使用している川崎にあるトラックが直付け出来る利便性の良いスタジオで撮影を行いました。

今年も11月になろうかという押し迫った時期での撮影になりました。ギリギリの日程で進めている年は、撮影当日の朝にトラックのチャーター便をスタジオに着けたりすることもあるのですが、今年は前日に全て近隣の倉庫に搬入して撮影スタートに合わせて製品を搬入。真っ白いホリゾント(床と壁面のつなぎ目が緩やかな曲線でつながっている撮影スタジオの空間)を前に、出来上がったばかりの新製品の試作を並べて、2025年ニューモデルの撮影開始です。今回もカメラマンの丸山さん、ディレクターの高原さんをはじめ、エーディコア・ディバイズの製品を熟知したスタッフの皆さんとスタジオ撮影を2日間にわたって行いました。今年のテーマに合わせて、製品のカラーやファブリックを選択、そのイメージから撮影のカット割りを検討していきます。キーになるのが「イメージカット」です。イメージカットは、製品を分かりやすく説明的なカットとは異なり、製品の特徴をビジュアル的に表現するもので、今年の製品テーマを一目で表現するカットになります。例年、試作が進む段階からクリエイティブディレクターの瀬戸は、撮影の日程に向けてどんなカットにするのかイメージを膨らませていきます。今年の製品については、全体のフォルム、組み合わせから撮影前には大まかなイメージが出来つつありました。

今年はロケーションの撮影を行わないので、撮影のトーンや組み合わせ、アングルがポイントになります。今年のイメージカットは、今まで経験したことのない撮影方法をトライすることになりました。(画像的には同じようなフォルムで撮影したことはあるのですが、今回は撮影の方法が全く異なります)「けっこう大変な撮影になるな・・・」と、予想したので、カット数の多い初日の製品カットは出来るだけスムースに終わらせて、2日目のイメージカットの時間を十分確保できるように進めました。事前にカメラマンの方にイメージを伝えて、撮影方法を相談していたのですが、思いの外大丈夫そうな雰囲気。スタジオの機材を存分に駆使してシミュレーション、思いの外スムースに撮影が進行しました。何度もセッティングを微調整し無事撮了!!イメージしていた面白いカットを撮ることが出来ました。

今年は東京ショールーム移転のタイミングに合わせて新作展示会を開催します。新しいショールームのインテリアで、2025ニューモデルを見ていただくのが今から楽しみです。今回撮影した撮影したビジュアルも、タブロイドパンフレットやホームページ上で使用するだけでなく、新しいショールームのディスプレイでは主役級の扱いをしています。エントランスのドアからご来場いただいたお客様をお迎えする際に真っ先にご覧になっていただけると思います。内装、インテリアからカラースキム、ライティング設計から音響システムまで、クリエイティブ・ディレクターがこだわり抜いて完成したエーディコア・ディバイズ六本木ショールーム。皆様のご来場を心からお待ちしております。(開発 武田伸郎)

スタジオでデレクションをしながらの撮影進行。今年は、右も左も上から下まで?ホリゾントのスタジオを最大限に活かして撮影を行いました。
クリエイティブディレクターの瀬戸は、数年前からスペック用の画像は、自らセッティングをして自ら撮影とレタッチを行っています。

2024.10.30 DESIGN

東京ショールームが移転いたします

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.150

本来なら秋本番、初冬の足音でも聞こえてきそうな時期ですが、10月の後半になっても夏日を記録する日もありますが、ようやく暑さも一段落し秋の気配を感じるようになりました。今年の夏は記録的な暑さでしたが、東京は夏日が5ヶ月以上にもなったそうで、1年の半分は夏のような気候になってしまいました。暑さで一番応えるのが日差しの中の移動です。エーディコア・ディバイズ東京ショールームは、静かで落ち着いたとても気持ちの良い場所にあるのですが、最寄りの駅から少し距離があるので、夏にご来場いただくお客様にはご負担をお掛けしていることも多かったと思います。私たちスタッフも、夏場の通勤は体に応えることもありました。そんなことが理由の一つでもあるのですが、この度エーディコア・ディバイス東京ショールームが24年振りに移転することになりました。

現在のショールームの契約上の条件から移転先のリサーチ、物件の精査や下見を行ってきました。ロケーションや周りの環境、建物の外観や内装がショールームとして適しているか等、クリアすべき要素がたくさんありますが、コストの折り合いも最も大切な条件です。これまで一旦は内定した物件もありましたが、具体的に進めていく段階で条件が合わなくなり流れてしまったこともありました。そして、今回の物件に巡り合うことができて移転先を決めました。決定する決め手となったのは、素敵な物件だったことはもちろんですが、エーディコア・ディバイズが移転するにあたり瀬戸がオーナーにプレゼンテーションした内容をとても気に入っていただき、予算的には厳しい条件だったのですがその点も可能な限りご調整いただいた事です。関係者の方が非常に協力的だったことも大きな要因でした。オーナーの方曰く「直接会いに来てプレゼンするなんて初めて」とおっしゃってました。そんな熱意も感じ取っていただき契約する運びとなりました。

正式に契約を交わし動き出したのが8月。移転オープンを12月に設定してからフル稼働で移転の準備が始まりました。苦労されている方も多いと思いますが、現在は未だかってない人手不足、特に建築内装関係はこの問題で業界全体が遅れに遅れている状況です。そんな状況を打開するため、何よりも早く内装工事の人手を確保、当社クリエィティブディレクターの瀬戸が工程管理を全て統括、本来内装設計で起こすべき図面、ショールームのインテリアプラン、照明計画、床材の選定や電気工事(コンセントの位置まで)、塗装計画からカーテン、事務所内の収納やデスク、展示スペースの什器など、全ての図面を描き上げ、内装工事が全て瀬戸の図面を元に工事がスタートしました。(内装工事用の詳細図面は、どんなに早くても数週間は掛かるのですが)照明器具やカーテンを決めるためのメーカー打合わせや、ショールーム内のディスプレイやサイン関係に至るまで詳細を詰めていきました。時間が限られていることを理由に、勢いに任せてどんどん進めて行く訳ではなく、床材の選定や壁面の色など、悩むべきところには時間を掛けて、スタッフの意見も確認しながらプランを固めていきました。(床材は、ショールームのイメージを大きく左右するファクターのため、何日もサンプルを敷き込んでは時間をかけて検討していました・・・)

現在、移転に向けて内装工事の真っ最中、12月のオープンに向けて追い込みを掛けているところです。瀬戸も、工事管理で連日現場に通っています。新製品開発の時期とも重なるため地方の工場に確認へ出張するなど大忙しの状態、そして来週は新製品の試作もアップしスタジオで撮影を行います。これからさらに様々な作業が目白押しですが、皆様に新しいショールームのお披露目と新製品の展示を見ていただけるよう急ピッチで進めてまいります。新ショールームオープンにつきましては、改めてお知らせのご連絡をさせていただきますが、当社では東京・大阪・名古屋ショールームにて11月22日まで年に一度のスペシャルセールを開催中です。この機会に、移転前の広尾ショールームにもぜひご来場ください。(開発 武田伸郎)

移転先の物件が決定してから、すべてのインテリアプランを練り上げ図面制作。詳細を詰めていきながら仕様を決定して落とし込んでいきます。
様々なアイテム、マテリアルの組み合わせからカラー計画、実際の現場でプランを練り上げて進めました。

2024.9.30 DESIGN

椅子やソファの印象を決定づけるファブリック

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.149
エーディコア・ディバイズの家具は、さまざまな素材を用いて作られています。いろんな加工を施された「木」や、強度や耐久性、デザインのアクセントにもなる金属類、PMMA+WOOD のアクリルに代表される樹脂材も使われています。そんな中でも重要な要素を占めるのが家具に張り込む生地、「ファブリック」です。どちらかというと、デザインや素材、構造などの要素より後回しにされがちなアイテムですが、椅子やソファに至っては、全体の印象を決定づけるのがファブリックと言っても過言ではありません。エーディコア・ディバイズでは価格帯によって7つのランク、27アイテムの計147種の豊富な規格ファブリックバリエーションをご用意しています。
家具に使われるファブリック(生地)は、椅子張り用として生産されますが、ファッションの流行などにも深い関係があります。昨今のファッションの流行やドレスコードの移り変わりでは、厚くて重厚なものより薄くて軽量、快適性を求める傾向にあるようですが、家具の世界でも同じような流れはあるようです。厚手で重厚、永年使い込むことによって馴染んできたり柔らかくなったりするようなヘビーな生地は少なくなりつつあります。一見ボリュームがありそうに見えて、実は軽やかで肌触りが良い生地が人気です。ただ、最近のファッションは流行が多岐に渡り全体の傾向が見えにくくなっているので、インテリアにファッションの流行を取り込むことも難しくなっているようです。以前のコラムでもお伝えしましたが、今年のミラノサローネでは昨年流行の兆しが見えたブークレ調のファブリックが大ブレークしさまざまなブランドで取り入れられていました。柔らかくて丸みのあるデザインとフワフワした手触りのファブリックの組み合わせです。当社でも昨年の新製品に、ブークレ調のファブリック、フロストピラーズ「FR」を規格ファブリックに採用しています。
当社の規格ファブリックは時代の流れを取り入れつつ、さまざまなインテリアスタイルに展開できるファブリックをセレクトしています。インテリアスタイルと言っても、ホームユースとコントラクトユース、施設や空間によってもファブリックに求められる要素は多岐に渡ります。色やテクスチャー、柄や織りのパターン、伸縮性や張り上がった時の仕上がり感など家具のデザインと同じくらいこだわりの選択が必要です。耐久性や強度と繊細で肌触りの良さの兼ね合い、もちろんコストパフォーマンスも大切です。そして近年では素材開発とスペックの進化も見逃せません。コットンやリネンなどの天然素材は大きな魅力ですが、ポリエステルやアクリル糸を用いた化学繊維の進化は驚くべきものがあります。見た目も触った感じも天然素材と遜色ない製品がたくさんあり、汚れが落とせる効果や製作時の使用する水量を大幅に軽減するなど環境対策にも対応した製品も増えてきました。今のモノ作りには環境対策は「避けて通れない問題」では無く、積極的に取り組むべき課題なので、当社の規格ファブリックをセレクトする上でも大事なポイントになっています。当社の現在の規格ファブリックは、27アイテム中、15アイテムが環境対策に対応した生地になっています。今後もさらに増やしていく予定です。
エーディコア・ディバイズの規格ファブリック、147種は、ホームページにて閲覧いただけるようになっています。合わせて、印刷物のA4冊子「FABRIC MATERIAL」もご用意していますので是非ご活用してください。以前の規格ファブリックのセレクトは、印刷物の総合カタログとの兼ね合いもあり、アイテムの見直しや精査は1~2年ごとでしか実施できませんでした。しかし現在はSDGs対策として、総合カタログの印刷物を廃止したためよりフレキシブルに対応できるようになりました。現在、新製品の開発に合わせて新たなファブリックのセレクトを進めています。ニューモデル発表の際には、新製品と合わせてファブリックのご提案にも注目してください。(開発 武田伸郎)

左:エーディコア・ディバイズ規格ファブリックバリエーションはホームページとA4サイズの印刷物でご覧いただけます。 右上:7つの価格帯ランク、27アイテムの計147種の豊富な規格ファブリックバリエーション 右下:規格ファブリックの中には、eランクとして天然皮革のアイテムもご用意しています
左上:ブークレ調の規格ファブリック「フロストピラーズ」FR-1(ホワイト)とFR-2(ライトブラウン)立体的なテクスチャーとフワフワな触り心地 左下:「フロストピラーズ」のカラーバリエーションは5色展開 右:「フロストピラーズ」を使用したNC-075。柔らかい曲面とファブリックの絶妙な組み合わせ

2024.8.29 DESIGN

次回が最終回?「アメリカ西海岸建築レポート」

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.148

先週開催しましたWebセミナー「アメリカ西海岸建築レポート」ですが、皆様参加いただけましたでしょうか?アメリカはロスアンゼルスでカタログ撮影を行うようになり、撮影場所を探すために物件下見を重ねたことからスタートした西海岸の建築、インテリアレポートですが、今回でなんと27回目になります。今回も2日間の日程で1.000名を超えるお申し込みをいただき、好評の内に終了することができました。

「アメリカ西海岸建築レポート」は、当社のクリエイティブディレクター瀬戸昇が、カタログ撮影や建築見学ツアーのためロケハンや取材で実際に見てきた物件を、自身で撮影し取材した内容を皆さまにご紹介するセミナーです。下見する物件も、現地のエージェントから提案された物件ではなく、エージェントサイトの膨大な件数の中から瀬戸がセレクトし、ロケハンのリクエストをします。ロサンゼルスに行き始めた頃は、西海岸の真っ青な空と豊かな緑に囲まれた建築に、ただただ感激して見ていたのですが、場数を積むことでどんどん目も肥えてきました。数ある物件の中には、サイトの画像は綺麗ですが実際見てみるとそれほどでもなかったり、逆に期待してなかった物件が実際見てみると素晴らしい物件だったりすることも多々ありました。多くの物件を見ることで素晴らしい経験を積むことが出来ましたし、ロスアンゼルスの建築やインテリアの素晴らしさを体感することができました。そんなロケハンを重ねていくうちに「素晴らしい物件だけど、予算や間取りなど諸々の理由で今回の撮影には使用できない」という物件がいくつもありました。そんな物件を画像だけストックしているのは勿体無い、「素晴らしい物件をたくさんの方に紹介できれば」と思って始まったのが「アメリカ西海岸建築レポート」です。

カタログ撮影のための下見ロケハンでしたが、建築レポートを行うようになって瀬戸のロケハンの見方も徐々に変化してきました。後々チェックするため確認用に収めていた撮影も「レポートセミナーに使えるように・・・」体裁を整えて ”映える”画像で収めるようになりました。ロケハンをする物件も、撮影するか否かだけではなく、撮影では使用しないかもしれないけど、レポートで紹介したい物件も視察するようになりました。西海岸地区には、ビバリーヒルズをはじめ高級住宅街のエリアがいくつもあり、超モダンな住宅からクラシカルなアメリカン住宅まで眩いばかりの素晴らしいハイエンド住宅があまたの数だけ存在します。ダウンタウン地区には、F.Oゲーリー氏設計の先鋭的な「ディズニーコンサートホール」から旧い劇場を改装したアップル社の「アップルタワーシアター」のような歴史を感じさせる建築まで、魅力的な建築が目白押し、常にブラッシュアップされているので見たい建築が後を断ちません。日本ではほとんど知られていない物件が本当にたくさんあります。そんな素晴らしい物件の数々を、Webセミナーで皆様に紹介してきました。配信でお見せする画像は、現地に足を運んで実際に撮影した何千枚という画像を、一点一点画像補正しセミナー用の画像に調整します。セミナー開催後のアンケートでは「画像が綺麗で素晴らしい」とたくさんの方から感想をいただいています。(私などは、「自分の目で見てきたよりも画像で見た方が良いかも・・・」なんて思ってしまうくらい綺麗です)毎回、LIVE配信で開催しているWebセミナーですが、前日にショールームの打ち合わせ室を配信ルームにセッティング、リハーサルを行って本番に臨んでいます。機材の設置や配信中のカメラやマイクの切り替えなど、専門スタッフなどにはお願いせずに全て当社スタッフで行なっています。セミナー講師の瀬戸、PR担当の営業部長の下山含め精鋭スタッフがチームワークを活かしながら今後のWebセミナーも配信してまいります。

たくさんの素晴らしい建築物件をご紹介してきました「アメリカ西海岸建築レポート」、次回開催のインフォメーションもお伝えしておりますが、今のところ次回開催が最終回になる予定です。ロサンゼルスで長い間コーディネーターとしてお世話になっているYasukoさんが、住まいを日本に移すことになるためです。次回「アメリカ西海岸建築レポート」でご紹介する物件も、これまで以上に選りすぐりの建築、インテリアの物件ばかりをご紹介する予定です。後日、改めてご案内をしてまいりますので、皆様奮ってご参加ください。(開発 武田伸郎)

左上:広尾ショールーム2Fのミーティングルームが、Webセミナー時は配信スタジオになります。左下:LIVE配信なので、カメラや音声の切り替えも同じ部屋で行います。右上、右下:今回が27回目の西海岸建築レポート。司会進行は営業部長の下山です。
左上、左下:Webセミナーでは西海岸の地図もお見せしながら分かりやすく物件を紹介していきます。今回のレポートでは「超ハイエンド」な住宅をご紹介することができました。右上:次回Webセミナーではバリエーションに富んだ建築をご紹介する予定です。右下:これまで西海岸の建築を数百件取材してきた瀬戸、次回のレポートで一区切りと考えているようです。

2024.7.30 DESIGN

オリンピックに沸くパリのインテリア視察

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.147
いよいよフランスのパリで開催されるオリンピックが開幕しました。新型コロナ感染の影響により東京オリンピックから3年のインターバルで開催することになります。パリでオリンピックが開催されるのは1924年以来、実に100年振り。そんな記念碑的な2024年の春、インテリア視察の一環でオリンピック開催の準備が進むパリを訪問してきました。これまでのオリンピックは開催に合わせてスタジアムや競技場を新設してきましたが、今回のオリンピックでは可能な限り既存の施設を活かす運営計画になっています。オリンピック開幕が数ヶ月後に迫ったパリ市内、至る所で工事が進む中、インテリアの視察を行ってまいりました。

パリのインテリア視察では、ルーブルやオルセー美術館、世界で最も美しいステンドグラス建築と言われるサント・シャペル教会などを見て回りつつ、人数限定の完全予約制でなかなか見ることの出来ないルイヴィトン美術館とコルビジェの「ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸」を視察してきました。ヴィトン美術館はF・O ゲイリー設計の2014年にオープンした美術館。ゲーリー氏の建築といえば、LAでカタログ撮影を行ったディズニーコンサートホールにとても馴染があるのですが、ヴィトン美術館はステンレスのメタリックな外観のディズニーコンサートホールと比べて、自然に溶け込むような大らかな印象の建築に感じました。ガラス、コンクリート、スチール、そして木材と、異素材の組み合わせが柔らかい雰囲気を醸し出しているのかもしれません。市内から移動した他のスタッフとは別に、僕はブローニュの森を通って美術館へ向かったのですが、森から生えてきたように見えるこの建物は、巨大な帆船のようにも見えました。館内には建設する際の施工技術をモデルや動画によって詳しく説明していたのですが、この建築を覆っている1.5mX3m のガラスユニットを、3.600枚・全て異なる形状に曲面加工して全体を覆っているのです。その精緻さと労力に感嘆しました。

もう一件視察したのが、コルビジェ設計の「ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸」。ブローニュの森の東にある閑静な住宅街の中に佇む世界遺産の建築物です。1925年設計のこの建物はコルビジェ氏が提唱した近代建築の5原則を最初に試みた建築と言われています。開館時間1番乗りで予約をし、社員スタッフ4名で袋小路になったひっそりとした人気のないエントランスから、オープンと同時に入館しました。中に入ると4階まで吹き抜けになった広々としたエントランスホールの空間は、各階からの視点と空間が連続的に構成され、壁で仕切られた「部屋」としての空間構成と異なり、スロープや回廊で繋がった館内の空間はとても立体的な感じがしました。エリアごとに区切られた優しくも鮮やかな内装の色と相まって、穏やかな光を感じながら、あちらこちらを行ったり来たり、ぐるぐる歩きながら豊かな時間をちょっとだけ満喫しました。

25日のパリオリンピック開会式、あいにくの雨模様でしたがパリの名所を存分に生かした演出は素晴らしかったですね。このオリンピックでは開会式のみならずさまざまな競技の会場として、世界有数の観光名所が使用されます。コンコルド広場ではスケートボードや 3 X 3 バスケットボール、エッフェル塔下の市民公園では柔道やビーチバレー、そしてヴェルサイユ宮殿では馬術や近代5種の競技が開催されます。僕が注目しているテニスは広大なブローニュの森にある赤土のローランギャロスで開催されます。本来は年に1度のグランドスラムにしか使用しないコートです。数々の名勝負を繰り広げてきた伝統のコートで、今年のオリンピックではどんなゲームを見られるのか本当に楽しみです。(開発 武田伸郎)

左上・左下:FondationLouisVuitton(ルイヴィトン財団美術館)現代アートを広めることをコンセプトにF・Oゲーリー氏が建設したこのミュージアム。建物自体がまごうことなきアートです。右上・右下:MaisonLaRoche_LeCorbusier(メゾン・ラ・ロッシュ邸)ル・コルビュジエ氏と従兄弟のピエール・ジャンヌレ氏によって1925年に建設された歴史的建造物。2016年にはユネスコの世界遺産リストに登録されました
左上:歴史的建造物のパリ市庁舎もオリンピック衣装を纏っていました。左下:観光名所のコンコルド広場に建設中だった競技場のスタンド。右上:開会式が行われるセーヌ川。訪れた時はまだスタンドの準備は始まっていませんでした。右下:年に1度のグランドスラムにしか使用しないスタッド・ローランギャロステニス競技場。初めてオリンピックの競技に使用されます。見上げる巨大なスタジアムは開閉式の屋根を備えたコートフィリップ・シャトリエ・センターコート。