COLUMN

2020.9.30 DESIGNER

ラグジュアリーカーのインテリアトレンド

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.112
先日、カーコーティング会社の広告写真撮影のため、広尾本社のショールームガレージと愛車のカルマンギアを貸し出ししました。他人に車を磨いて頂くのは初めての事で、プロの磨きテクニックと溶けるような艶に惚れ惚れとしました。磨かれている時間にボディと同じ塗装のインテリアパネルを自分で磨いていたのですが、磨けば磨くほどピカピカしていく塗装を見て嬉しくなりました。

本社のある広尾の日赤通りは、青山方面への抜け道になっているので、高級車が多く通ります。当社の前はコーナー立ち上がり後の直線になる緩い坂道になっていて、立ち上がりに吹かすエンジン音がうるさく、イタリアのスーパーカーなど走ると爆音です。その多くが艶消し塗装のマットな姿をしていて、爆音と艶の無いボディは不気味で好きになれません。カーコーティングの方が作業しながら、ああいった艶消しの車の多くはフィルムが貼られた物も多くある事と、実際の艶消し塗装の場合は当てたり擦ったりして傷の修理が出来ずに大変で、洗車する喜びは無いですよ。そして、夜は他車から視認しにくいから本当に危ないんですよと、、。

車好きなので新車発表のニュースをチェックする事が多いのですが、先日発表されたロールスロイス・ゴーストやメルセデスベンツ最上位クラスのSクラスのインテリアを見て少し驚きました。どちらも艶消しのオープンポアやセミオープンポアの木目導管が見える仕上げです。ロールスロイスやジャガーなど、イギリス車の上位ブランドは希少木材に厚い塗装を施し、鏡面に磨きあげたインテリアパネルが特徴でもありましたが、新モデルではアッシュやウォールナットの艶消し仕上げです。太陽光の乱反射を防ぎ安全性はあるのですが、ラグジュアリーカーに導管の見える艶消しのオープンポア塗装にウッドパネルは合うのでしょうか。

9月1日に発表されたロールスロイス・ゴーストのデザインコンセプトはPost Opulence/ポスト・オピュレンス(脱贅沢)で、これ見よがしな表現ではなく、素材の本質的な価値によって定義つけられるミニマルな美学を追求したとの事です。インテリア素材は上質なハーフ・ハイドのレザーをできるだけシンプルなステッチで仕上げられ、ウッドパネルはパルダオ材、アッシュ材やウォールナット材の素材感を出したセミオープンポア塗装仕上げが新しく追加になりました。ゴーストはロールスロイスの中でもエントリーモデルですが3500万以上する車です。ロールスロイスを好む新しい富裕層が脱贅沢を望むかは分かりませんが、ラグジュアリーカーの新しいインテリア提案です。

9月2日にはメルセデスベンツSクラスがフルモデルチェンジして7代目が発表されました。メルセデスの最高クラス車で、世界の上級車がベンチマークとする車です。ハイテクとラグジュアリーの融合をテーマに創られたインテリアには、高級ヨットのデザイン要素が取り入れられ、ウッドパネルにはポプラウッドの艶消しブラック塗装のオープンポア仕上げが標準となり、ウォールナットにアルミラインが入った艶消し装飾ベニアの選択も可能です。現在、メルセデスベンツの新型車の上級モデルについてインテリアパネルはウッドの艶消しで導管が浮き出るオープンポア仕上げが標準になってます。

木の素材感を感じるオープン仕上げは家具については常識になっていて、艶消しのオープン仕上げは傷が目立ちにくく、使いやすい仕上がりです。当社の家具用の塗装は3分ツヤ有りのセミープンポア仕上げと、全消しのオープンポア仕上げがあり、現在全ての塗装は抗菌コート仕上げになっています。11月には抗ウイルス塗装を施した素材感を大切にした新作家具を発表します。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上下:ロールスロイス・ゴーストのインテリア。、パルダオ材の突き板のマット塗装のオープンポア仕上げです。シートのハーフ・ハイドレザーが使われたシートやドアパネルはステッチをできるだけ無くして仕上げられています。右上下:メルセデスベンツSクラスW223のインテリア。ウォールナットにアルミラインが入った艶消し装飾合板はヨットのイメージ。艶消しのセミオープンポア仕上げ。
左上下:1962年のカルマンギア。久しぶりに磨きこまれて綺麗になりました。インテリアは外装と同じ鉄板に塗装されたものです。ボディと同じで磨けますし、傷もつきにくい。右上下:先日発売になったマイナーチェンジされたメルセデスベンツEクラスのインテリア。マイナーチェンジで鏡面からマットなアッシュ材に。艶消しのオープンポア仕上げで板理の導管がはっきりしています。

2020.8.31 DESIGNER

家と車の関係

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.111
海外へ自由に行けなくなり半年が経とうとしています。私自身、海外出張だけでなく国内出張も少なくなり、リアルに見る事よりも、PC画面を通して見ることが多くなってきました。そんな中、グーグルマップを使ったマップアドベンチャーなどバーチャル旅行が人気になっています。マップアドベンチャーはグーグル社の世界の有名観光地を音声サービスと共に回るサービスで、自分でストリートビューを使って海外に行った気分になれると人気です。

グーグルマップが無かった頃には、ミラノサローネなど海外の取材には、市販されている折りたたみマップとイベント住所を見ながらマークしたり、初めての土地ではホテルで市内マップをもらって部屋で行動計画を立てたものです。今でもその癖が抜けずにグーグルマップを見ながら旅の計画を立てる事にしています。グーグルマップを使い出して以前と違うのは、移動の所要時間の検索が楽になったのはもちろんですが、衛星写真とストリートビューで事前にそこの画像を見る事ができる事です。これは初めて行った感動は薄れますが、行ってから「しまった、、」と後悔する事も少なくなりました。インテリアまでは見れませんが、外観で想像する楽しみは増えました。カタログ撮影のロケハンをする時や、視察ツアー先を決めるにもグーグルマップはなくてはならないものになっています。

9月2日のオンラインセミナーの「Space with garden」では、今まで取材した200箇所以上から、庭とインテリアの関係が感じられる住宅を、2012年から今年1月に取材した6箇所を選びました。久しぶりに見る写真をフォトショップを使って再修正とスライド画像を再編集しましたが、その家がどうなっているのかをグーグルマップを使って再確認しました。グーグルマップのストリートビューは撮影時の年月日が明示されているので、いつの状況か分かるようになっています。6箇所とも今も存在して取材時の姿を留めていることを確認しました。

その中でも印象深かったのは、アメリカモダン建築の巨匠リチャード・ノイトラが設計したサンタモニカにある1947年に建てられた住宅です。有名音楽プロデューサーが所有していて、その方のお父さんが収納家具工場を経営していた時にノイトラ建築の家具をメインに手がけ、その家もお父さんの工場で作られた収納家具が使われているという事で、1980年から所有されて大切に住まわれていました。壁に飾られているアートも素晴らしかったのですが、中に使われている置き家具もコルビジェ住宅にあった家具やヴィンテージ家具ばかりで、収集するセンスにも驚かされました。

その家を取材したのは2012年で、再度ストリートビューで訪問しましたが、新しいコレクションを手に入れている事が分かりました。以前は家の前に置かれていた車は1990年のBMW8シリーズで、良い趣味をしているなと思っていましたが、今、停車しているのは白いポルシェ911の1964年初期型901です。ナローポルシェと言われる幅の狭い初期型で、コレクターズアイテムになっていて、投資の対象にもなっています。ストリートビューで見ても程度が良いのが分かります。マドンナやプリンスを見出した音楽プロデューサーだっただけあり、さすがのセンスです。アメリカ西海岸の住宅でヴィンテージ趣味の住宅では建物と庭の一体感も関心しますが、建物の年代に合わせた車もデコレーションの一部として使われ、インテリアのデコレーションと同様、外観と庭、小物の一体感も感じる事が多くあります。

以前、レイ・キャピーが設計した1957年の住宅では、1957年のギターとポルシェ356が置かれていました。コンセントやスイッチまでもオリジナル仕様が住宅の価値を高めて、高額で取引される住宅の条件として徹底したリノベーションが行われる事と、その為に取り壊される建築から様々な材料がリサイクル販売されている事を知りました。ヴィンテージカーと同じで、長く使われる為のパーツ産業も充実していました。日本では復元された建築に新しいコンセントやスイッチが使われる事が多く、年代に合っていないしつらえも気になる事が多く、せっかくの復元がもったいないと感じる事があります。

今回のセミナーでは様々な年代とデザインに合わせ作られた庭とインテリアの関係をお見せできればと思っています。庭とインテリアの融合したカリフォルニアスタイルの住宅、これからのインテリアのヒントがあるかもしれません。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

上左:アメリカモダン建築の巨匠リチャード・ノイトラが設計したサンタモニカにある1947年に建てられたた住宅。2012年に訪問した時には1990年のBMW8シリーズを大切に乗られていました。下:グーグルマップのストリートビューで見た今年の家。ガレージ前にナローポルシェ911が置かれていました。
マリブの山の上に建つ近未来的に見える住宅。ガレージの前には1967年のシェルビーGT500エノレアが停まっていました。家は1993年建築なので、年代は合っていませんが、近未来的なデザインが住宅によくマッチしていました。

2020.7.31 DESIGNER

西海岸のナチュラリストの家

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.110
新型コロナ感染の第二波が日本列島に広がりつつあります。なかなか明けない梅雨の中、マスク姿での仕事はストレスが溜まります。みなさん元気でお過ごしでしょうか?収まらない感染の影響で郊外や地方へ移住する人も多くなったと聞きました。人の少ない自然の中で安全で安心できる生活を目差しての事ですが、利便性や快適性は多少犠牲にしてもストレスが無い生活が良いからなんでしょう。

林野庁勤めだった父関係で山深い家に住んだ事のある経験から、家の中には大きなクモやムカデやゲジゲジ、外ではスズメバチやマムシなど毒のある生き物が多く、友達が目の前でマムシに噛まれ、父に助けを求め家に駆け込んだ記憶は鮮明で、蛇が一番苦手になった理由になりました。今の時期は川泳ぎの時に背中を強烈に刺すアブが大敵でした。テレビ番組でポツンと一軒家の番組が人気ですが、放送を見ながら楽しい事はあったけど実際に住むには大変で、小学校の高学年で高知市内の街中に引っ越した時は、底冷えする毒虫の出る家に比べなんて快適なんだと、子供ながら心底思いました。

アメリカ西海岸には完全ビーガンなどナチュラルな生活をしている人が多くいます。パタゴニアなどファッションだけでなく環境に配慮した物がライフスタイルして世界に広がっていきました。2012年に訪問したロサンゼルス郊外の住宅は、2010年LABC建築賞を受賞した住宅で、オーナーは農地の土壌改良の専門家でした。この住宅はオーナーの仕事の実験場でもあり、その中でナチュラルな生活するために、広大な果樹園を購入して建てられました。その果樹園は農薬漬けで土地がやせて荒れ果てていて、それを自然に近い土壌に戻しなから自然農法に近い作物が取れるようにする実験場でもありました。

郊外といってもロスのダウンタウンから近いシルバーレイクから山を越えた辺りにある家で、曲がりくねった道を少し下がった窪地にあります。山の上からはモダンな家が見えていて、ナチュラリストの家と聞いていたので、あれっと思いました。モルタルと木製の横張りのモダンな住宅で、元は荒廃して草木も枯れていた場所とは思えない緑の場所にありました。菜園と果樹園、鶏舎と、さまざまな木々に囲まれた赤茶の木製の外壁が特徴で、木製窓は回転式ですがキッチンに面して大きい引き戸のあるカリフォルニアスタイルの住宅です。8メートルある大きな引き戸は、庭と室内の融合させる日本スタイルなんだとオーナーが説明してくれました。

家の中は木材を切って断面を並べた床が使われています。手間はかかるが木の断面は硬く、長持ちするように考えられたそうです。大きく開けられる窓からは風が通り抜け、木製の天井材の間からは自然光が部屋を明るく照らします。大きなキッチン天板には長く使えるようにステンレス製のものが使われ、上には庭で採れた花がガラスの花瓶に無造作に入れられていました。その花瓶に花は本当のナチュラルな草花で、奥様が庭で摘んだものを投げ込んだものでした。東京に帰っていつもお世話になっている花屋さんに写真を見せると、自然に生えている草花を生けるのが一番難しいんですと言われました。インテリアに使われている家具はヴィンテージ物もありますが、新しい物も置かれ、キッチンと同じで長持ちする素材が使われています。

土壌改良の仕事で土と草花に囲まれて仕事をしているナチュラリストですが、自然の素材だけで作るのではなく、快適性や長持ちする事を考えた本当に環境に優しい住宅でした。自然に囲まれた中で快適に過ごす住宅が、日本家屋が見本になっている事に関心した思い出です。8月のオンラインセミナーではガーデンを感じさせるアメリカ西海岸の住宅セミナーを考えています。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:7エーカーの果樹園の中にモダンな建物が見えます。右上:レイアウトプラン。L型で中心に長いキッチンカウンターがあります。左下:木々に囲まれた中庭にはダイニングテーブルが置かれます。右下:リビングの外にはテラスがあります。
左下:フォーマルリビングとダイニング。両側が回転する木製扉があり風が通り抜けます。右上:フォーマルリビングの前には中庭があります。この3枚の扉は全て回転します。左下:ステンレスカウンターの長いキッチン。向こうにはファミリーリビングがあります。ファミリーリビングにもTVがありません。右下:キッチンの上に置かれた庭の花。キッチンの前には8メートルの引き戸があり、戸袋の中に全て収まります。

2020.6.30 DESIGNER

新しい事に出会いながら

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.109
先日、初めてZoomを使ったWebセミナー(ウェビナー)を行い1200名以上のお客様に参加いただきました。1月にショールームで開催した西海岸セミナーから半年ぶりです。今の時期、昔はミラノレポート、最近では人間工学などのスキルアップセミナーを行なっていました。ミラノレポートを始めたばかりの時は北海道から沖縄まで全国17カ所、30回以上のセミナーを開催していました。パソコンとプロジェクターが入ったキャリーバッグを転がして1ヶ月以上出張だった時もあり、それでも千人の方とお会いするのがやっとでした。

子供の頃、電池の無い鉱石ラジオから音が出るのに驚き、ウルトラマンやヒーロー物で腕につける無線機を見て、あんな小さな物で遠くの人と話せるなんて夢みたいだと思いました。小学校1年の時にアポロ11号の月面着陸を月からの中継を見て、凄いと思ったのも遠く昔の事です。その後、短波放送にはまり屋根にアンテナを張って、遠く南米のエクアドルから届く日本語放送に心踊らせました。社会人になってからはポケベル、巨大な携帯電話からPHS、携帯電話、スマホとなり、メールだけでなく、どこでもTV電話の時代になっていました。どの時代でも、新しい技術が生まれ、人々は使い方を学びながら使いこなしてきました。いつも間にか機械の中がブラックボックスになり構造は全く理解できなくなりましたが、、。

ウイルス感染拡大で今年のセミナー開催は諦めていました。Skypeを使ったセミナーやYouTubeを使った方法も検討しましたが、どれもセミナーとして使うには難しく、何か良い方法はないかと思っていたら、Zoomを使ったWeb会議が急激に広がり、テレビでのリモート出演が使われ、若い人たちの中ではZoom飲み会が行われだしました。当社では4月の在宅勤務からZoomミーティングを使い出したのですが、ストレス無く打合せでき、社内勉強会で使ってみると、リアルな勉強会より理解しやすくとても便利でした。

Webセミナーでどれだけのお客様が参加頂けるのか心配しましたが、3回で1200名以上の方が参加になりました。北海道から沖縄まで日本全国から参加いただいた事も驚きでしたが、本当に驚いたのは、お申込み頂いた方の参加率が高かった事です。会場のリアルなセミナーだと8割の参加率なのですが、Webセミナーだと100%近い参加率で、天気にも急な仕事にも影響なく、セミナー時間にパソコンの前に座るだけ、タブレットならどこでも参加できるので、参加率が高いのでしょうか。また、リアルセミナーだと座る場所によって前の人の頭で画像が見えなかったり、音が聞こえなかったりするのですが、Webセミナーなら平等に見れる事が良かったのではないでしょうか。

初めてのWebセミナーは向かい合う人が居ないので戸惑いました。Web会議なら画面に相手がいるので、様子を見ながら話す事が出来るのですが、相手のいないパソコン画面のカメラを見続けながら話すWebセミナーは、テンションを保つ事は難しく大変です。でも、簡単な機材で何千キロも離れた、遠い人々と時間が共有できるなんて、なんて素敵な事なんでしょうか。これからもエーディコア・スタジオから何かをお伝え出来ればと思っています。次はショールーム内で動きながらのリアルセミナーとWebセミナーのバイブリットセミナーを企画しています。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:鉱石ラジオは、真空管やトランジスタは使わず、半導体の性質を持った鉱石を使ってAM検波をするラジオで電池も必要ありません。左下:ウルトラマン 科学特捜隊 流星バッジ:円谷プロサイトから。こんな小さなバッジで本部と連絡取れるなんて、凄いと思っていました。右上:トランシーバー:子供の頃に遊んだトランシーバーで使える距離は見通しの良い所でも100メーター程度で、森の中などでは使えずにがっかりした記憶が、、。右下:東芝SOUND750:当時短波放送は子供達の中で流行っていて、このサウンドナナハンは一斉風靡しました。
新型コロナ感染予防で分けた営業部の机(会議室内)で即席放送室を作ってZoomセミナーをしました。マイクで音を拾うので外部の音が入らない静かな場所で行う必要があります。立派なPCとカメラと思われがちですが、ノートブックPCの小さなカメラとイヤフォンマイクがあれば放送可能です。

2020.5.29 DESIGNER

エコロジーなモダンデザイン

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.108
日本では非常事態宣言がようやく解除になり、新しい生活様式での社会が戻りつつあります。皆様お元気でしょうかどう距離感を取り戻すことの方が、時間がかかるように思えます。ビジネスの場も、お客様との距離感を模索しながらの再始動です。

世界的なロックダウンの後、インテリアデザインの方向性も変わってくると思います。第二次世界大戦中に白洲次郎が、農家になり自給自足の生活を送った話は有名ですが、感染予防は自給自足で生活インフラに頼らない生活が一番なのかもしれません。生活インフラに頼らないと聞くとロハスなナチュラリストをイメージしますが、2016年に訪問したアメリカ西海岸のマリブで見た住宅では少し違っていました。マリブの海岸線から内陸に入った人里離れた山頂にあり、生活インフラに頼らない住宅は近未来的で超モダンなデザインでした。

幹線道路に面したゲートにはサボテンが植えられ、そこからしばらく坂を上がった所にその住宅はありました。乾いたマリブの山々に映える石の外観は、ダニエル・クレイグとオルガ・キュリレンコが出演した映画「007慰めの報酬」のロケ場面になったチリのESO Hotelのように感じます。サボテンやリュウゼツランが植えられた庭の前にあるガレージには、宇宙船のような銀色の1967年シェルビーGT500が置かれ、石庭の前にあるグレーの建物が余計に未来的に見えてきました。建物内に入るとエアコンが効いてひんやりした石の床材を歩きながらモダンなインテリアにも感心しながら、裏にあるプールやベッドルームのバスルームを見て、この人里離れた場所で生活をするためのインフラをどうやって整えたのか気になりました。

生活インフラを個人で引くには電気やガス、上下水道を整えるには距離によりますが、かなりの経費がかかります。アメリカの郊外にある木製電柱も見当たらないので不思議に思っていると、外部の生活インフラにはまったく依存していない住宅との事で、電気はソーラーシステム、水道やプールの水は山からの雨水貯水を濾過して作り、下水は浄化システムを使って地中深くへ浸透させる方式をとっていました。さすが新しいアメリカの個人住宅は違うなと感心していると、1993年に建築されたエコロジー住宅でシステム自体は更新されているが、基本は同じものを使っている事を聞いて、そんな前に作られた住宅だった事に再度驚きました。モダンアートや家具は更新されて、ポルシェカレラGTが置かれたガラス張りのガレージもあり、エコロジーとは無縁な生活のように見えますが、環境に優しい生活インフラに頼らないモダン住宅がありました。

アメリカ西海岸では、果樹園の中にある自給自足のナチュラル住宅にも行きましたが、どちらもアリだと思います。モダンでもナチュラルでも環境に優しい生活にするのが、個人のライフスタイルなんです。しばらくは、海外へ行くのは自粛になりそうですが、新しい生活様式とインテリアスタイルを楽しみましょう!来週には初めてのWebセミナーを開催します。リアルセミナーは何度もしてきましたが、カメラを通してのセミナーは初めてです。この年齢になって初めての事に取り組めるのは幸せです。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:ガレージ前の宇宙船のような銀色の1967年シェルビーGT500。右上:石庭には水やりをできるだけ少なくできるようにサボテンやリュウゼツランが植えられています。左下:庭の一部には人工芝が使われていますが安っぽくなっていません。他の本物の素材が良いからでしょうね。右下:石のアプローチを歩いて玄関に向かいます。
左上:大きな窓の真ん中に暖炉があるリビングルーム。目の前にはマリブの山々の乾いた景色が広がります。右上:木天井のダイニングルーム。左下:寝室の浴室からはプールが見えます。水は全て山の雨水から濾過された水が使われています。右下:ガラス張りのガレージには2003年のポルシェカレラGTが置かれていました。ひんやりした室内のエアコンはソーラーシステムから供給されています。