COLUMN

2019.6.27 DESIGNER

西海岸インテリアの今

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.98
先週、ロサンゼルスへロケハンに行ってきました。2年に一回のアメリカ西海岸でのカタログ撮影も今回で7回目になります。毎回、西海岸で旬な建物をお借りしての撮影ですが、今回も様々な住宅を見てきました。現地のプロデューサーのYASUKOさんと3日間ロサンゼルスの中心部をレンタカーを運転しながら走り回りました。アメリカのレンタカーにはカーナビが装備されておらず、オプションで頼むと高くて使いにくいカーナビしかありませんでした。しかし、今回のレンタカーは新車で、カーナビを付けなくてもスマホのAppleCarPlayが使用できるので便利でした。

当社では毎年、アメリカ西海岸ツアーでお客様をお連れして住宅やホテルなどをご案内しますが、ロケハンと違って現地に行って良くなかったでは許されないので選定には苦労します。一方、ロケハンではツアーでお見せするための建物と違い、撮影に適した家を探すために違った観点で視察します。インテリアのセンスはとても大切なのですが、スタジオと違うナチュラルな光を大切にし部屋の向きや採光を見ます。また、撮影にもっとも大切なのはカメラからの距離を取れる引きがどれだけあるかです。素敵な空間があってもこの引きがなければ写真は撮れません。今回は20件以上の中から現地に行くまでに7件に絞りロケハンをしてきました。

ロケハンしながら次回のツアーの視察場所の選定も考えて移動します。移動には便利な場所としていつも宿泊するのが、Yasukoさんのお宅から近いウエストハリウッドのホテルです。今はゲイタウンとして有名なエリアですが、昔からミュージシャンやアーティストなどが多く住み、中心にはインテリアショールームが集まるパシフィックデザインセンターがあり、メルローズ通りにはデコレーター通りと言われるくらい、インテリアショップが多く集まっています。その中にあるキンプトン・ラ・ピア・ホテルにランチで立ち寄りました。キンプトン・ラ・ピア・ホテルは昨年1月にオープンしたホテルで、米国のデザイナーズホテルブランド「キンプトン・ホテルズ&レストランツ」の一つです。キンプトン・ホテルズはインターコンチネンタルホテルズグループに2017年に買収されたホテルで、東京にも2020年に進出します。

ウエストハリウッドのキンプトン・ラ・ピア・ホテルのインテリアを手がけたのはアイスランド出身のGulla Jónsdóttir。ロサンゼルスを拠点に建築、インテリアデザインや家具までデザインを手がけた隠れ家的なリゾートホテルで、「芸術、音楽、ファッション、詩、映画、建築の空間的調和」をテーマに作られました。建物の入り口にはモザイクタイルが使われ、様々な素材が使われたインテリアが広がっていました。チェックインカウンターの横にはギャラリースペースがあり、インテリアを飾るアートや壁のウォールアートなど、アートを上手く空間に取り入れています。ラウンジやレストランはナチュラルな素材が使われています。アートとナチュラルな素材を組合せた空間は今のウエストハリウッドスタイルとなのでしょうか。ロスではスタルクのモンドリアンホテルやマルセル・ワンダースのSLSホテルが一斉を風靡しましたが、今はこのスタイルが快適に感じます。

9月にロサンゼルスでの撮影の為に、その家に合わせた塗装色やファブリックを選び、コンテナが出る8月初めまでに製作しなければいけません。また2020年モデルの新作も製作が佳境に入っています。今の旬の空間にも、数十年後の空間にも合う製品になっている事を願って、今日も今から工場へ行ってきます。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

上左右:ホテルの正面。古いビルを改装して、エントランス周りにはブルーのタイルが使われ、センターの黒い四角はスチールで作られたアートで中に鳥のモチーフが貼られます。左下:チェックインカウンターはシンプルですが、カーブした壁にアートが掘られています。右下:ロビーはコンクリートの床にカーテンがあるシンプルな空間で右にラウンジがあります。
左上:ロビーラウンジ。最近のホテルではラウンジを置かないホテルも多いのですが、このホテルは違います。いろいろな場所でくつろげるスペースがあります。右上:ギャラリースペースで期間ごとにテーマの違う展示会が行われています。左下:イタリアンレストラン。オーク材の床に様々なテイストの家具が置かれています。右下:スペースごとにアートが置かれてホテル全体がギャラリーのようです。

2019.5.31 DESIGNER

TPOとマナー

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.97
先日、家具について話をする機会がありました。その中で家具のTPOについて話をしました。TPOはTime(時間)Place(場所)Occasion(場合)の頭文字をとり「時と場所、場合に応じた方法・態度・服装等の使い分け」を意味する和製英語で、「VAN」ブランドの創始者・石津謙介氏が作られたと言われています。家具にも洋服と同じように使われる場所によって仕様やデザインが違います。

この仕事を始めた若い頃、お客様だった大先輩のインテリアデザイナーの方々に、椅子についてのTPOをいろいろ教わりました。カフェ用として使える簡単に腰掛けられる物から、長く座れるフォーマルダイニングとしての椅子のデザインと在り方です。クッション性が高く通気性のある素材で無ければ長く座れません。その頃カフェチェアとして座面が合板仕様のトーネットの椅子が日本でもヨーロッパでもカフェで多く使われていましたが、フォーマルなダイニングには使用されてはいませんでした。座のクッションの無い物は基本フォーマルダイニングには使用できません。それがイームズの椅子が流行った頃に崩れてしまいました。様々な場所で使われ、座り心地や座れる時間の長さをあまり重要視されませんでした。しかし、支払われる対価によって快適度が望まれる今は、椅子選びに掛け心地を重要視される方が増えてきたのを感じます。

大先輩のインテリアデザイナーに言われた事で今でも心がけている事は、ダイニングチェアとして大切なのは背中の下が空いていない事。これはフォーマルダイニングの座り方のマナーに関係するのですが、女性はバッグを必ず持たれています。大きな荷物は左側からサービスされる事を考えて椅子の右側の床に置き、小さなハンドバッグは膝の上と言われています。でも食事することを考えると椅子の背と腰の間に置かれることが多くあります。その為に「バッグが落ちないように背の下が空いていない椅子じゃないとダメだよ。」と言われた事を今でも覚えています。これをお使い下さいと床に置くカゴを持って来るのは日本だけじゃないでしょうか。親切でありがたいのですが、せっかくのインテリアデザインが壊されています。カジュアルな店だと荷物を置く為の荷物棚がテーブルやカウンターの下に付ける事もありましたが、今は付いている店が少なくなった事もカゴが用意される要因かもしれません。

ファッションでもフォーマルやビジネスの場所でのマナーやTPOが崩れてきています。省エネで始まった夏だけだったネクタイ外しが、一年中ネクタイしない人が増え、政治家も今はよほどの場所ではネクタイしません。ネクタイしていない政治家も先進国では日本くらいかもしれません。また、ビジネスバッグよりバックパックを持つ方が増えてきました。厚みがあまり無く、ビジネスバッグは移動や機内でも邪魔にならないようにデザインされていますが、バックパックは縦が長く厚みがあります。持つ人は楽で良いのですが、電車内では非常に邪魔です。前に向きを変えその上でスマホをしたり、座って前に抱えるから肘が横に出て1人当たりのスペースを越えています。なによりスーツが型崩れしないのでしょうか、、。仕事がら膝をつく事が多いので、デニムを履く事が多い私もファッションのTPOの事は言えませんが、ジャケットにネクタイは心がけています。父が営林局員だったのですが、普段スーツ姿だった父が、国有林の検査で山へ行く時に、登山着と登山靴に白いシャツとネクタイをしていた事を今でも覚えています。子供の頃、真夏は白い麻のスーツにパナマ帽を被っていたお洒落な大人がいた記憶があります。

アメリカやヨーロッパへ行くとビジネスシーンでビジネススタイルを守っている事が分かります。数年前に訪問したマラネロのフェラーリ工場では出荷を待つ車を、スーツにネクタイのスタッフが一台一台仕様書通りが車に乗りながらチェックをしていました。日本では手本になる大人が少なくなっているように思います。今ではネクタイを締めているビジネスマンが少なくなってきたので、ネクタイ姿が逆に目立ちカッコ良く思えます。ビジネスバッグもネクタイも見直してみませんか?。2020年モデルの新作の試作も始まっています。どのようなデザインになるか発表できるのは、まだまだ先ですがフォーマルな空間に合わせられるデザインになるかも。お楽しみに! (クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

NEO CLASSICOシリーズには同じデザインでもモジュールにより、休息に近いデザインの物もあります。上段:左はNC-001はベーシックスタイル、右はオーバルバックの背で座下にダイメトロールバネとクッションを重ね座り心地にもこだわり、フォーマルダイニングに使用できるように少し固めで背の角度が立っています。下段:左右ともサイズアップさせラウンジチェアに近いかけ心地ですが、フォーマルダイニングには少し傾斜が強く、休息用の椅子としてお使いいただけます。
左:フォーマルダイニング用のモジュールでNC-007Sに適応。背がファオーマルダイニング用に立ててあり、正しい姿勢で食事ができる。右:軽休息用のモジュールでNC-007Mに適用。安楽的な場所でゆっくりと過ごす空間に合います。

2019.4.26 DESIGNER

革靴は実用品

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.96
冬から春への季節の変わり目は衣替えの時期です。洋服と同じで靴も衣替えさせる方も多いのではないでしょうか。私はこの時期に靴のメンテナンスを行います。先日の日曜日に久しぶりにまとめて靴磨きをしました。普段のメンテナンスはするのですが、使っていない靴や冬に多く履くブーツなど、しばらく履かない靴をメンテナンスしたり、これから多く登場する靴に風を通したりします。

革靴は使い方とメンテナンスによって何十年も履く事が出来ます。持っている靴で一番古いものは25年前に購入したスペイン製の靴ですが、かかとだけでなく、オールソールと言われる底全体の張替えを2回しています。最初は革のソールでしたが、2回目はラバーソールのゴム製にしました。今はオールソールする時は、ほとんどラバーソールです。若い頃は歩いている時に後ろから見えるのが嫌だったのですが、滑って危ないのと、晴れた日しか履けない革底よりラバーソールの方が楽だからです。ジョンロブやエドワードグリーンなど高級ブランドもラバーソールの靴を普通に出すようになったのも実用性を求める人が増えたせいでしょうね。007のジェームス・ボンドはジョンロブを履いていますが、アクションシーンの多いダニエルクレイグの履いている靴はラバーソール。それでないと、あんなに走る事はできません。私も気がつくと半分以上の靴がラバーソールに変わっていました。

革靴のパーツは大きく分けて、表面のアッパーと内側のライニング、中底のインソール、靴底のアウトソール、ヒールなどの部位があり、アッパーには牛の生後6ヶ月以内のカーフや二年以内のキップと言われるきめの細かな革が使われます。表皮を裏に使うスェードも同じ牛革です。他に馬の尻の部位のコードバンや、クロコダイルやリザードなど爬虫類の革も使われる事もあります。ソールには革、革とラバーのハーフ、ラバーがあり、雨の日はラバーソールの靴が安心して履く事ができます。

表面の革の高級素材として馬のお尻の革のコードバンもありますが、雨に濡れると膨れてしまうので、あまり履く機会がありません。アメリカ靴のオールデンのコードバンを使った靴が人気で、革を製造しているホーウィン社のシェルコードバンが品薄でコードバンの靴は高騰しています。独特な艶はなんともいえない綺麗さなのですが、表面の吟面の無いコードバン層だけの革なので、強度が高いわけでは無く、実用性はあまりありません。一方、牛革も表面の仕上げによって雨に弱い物があります。生後の種類だけでなく、タンニンやクロム鞣しの革本体の鞣しの種類と、表面の仕上げにも吟面付き、ガラス、エナメル、型押し、スエードなどあり、最後の表面にはワックス仕上げ、ラッカーやウレタンの塗装仕上げの顔料仕上げがあります。

なんだか分からなくなるくらいに種類がありますが、牛革でも靴クリームを塗ると染み込む物は表面がコーティングされていない革なので、雨が染み込みます。こういったクリームを付けて磨くと風合いが変わってくるので、自分なりに仕上げられるので、磨き甲斐があります。日曜日、20足近い靴を磨くのに半日以上かかりましたが、子供の頃に両親の靴を日曜日毎に磨かされた事を思い出していました。

社員からはマニアと言われますが、1年か2年に1回購入して、大切に使ってようやくこの数に、、。どれもオーソドックスな定番デザインです。自分のデザインテイストと同じです。靴を磨きながら廃盤にならないデザインってこんな感じなんかなと再認識しました。秋の新作に向けて新作をデザインを始めています。お楽しみに。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

上:少しずつ購入して25年かけてこの数に、、。茶系と黒がありますが最近は黒を履く事が多いように思います。イギリスのエドワードグリーン、チャーチ、クロケット&ジョーンズ、ジョージクレバリー。フランスのJ.Mウェストン。イタリアのリドフォルト、アメリカのオールデン、スペインの靴のカルミナ、バーウィック、インドネシアのジャランスリウァヤなど色々な靴を履いてきましたが、一番長く履いているのはスペインの靴でコストパフォーマンスが良いです。下左:コードバンの靴でオールデンのウィングチップは定番で、ローファーはクロケット&ジョーンズで、どちらも革のダブルソールです。どちらも重たい靴で、雨に履けない事もありあまり出番がありません。下右:スペイン靴のバーウィックは25年履いています。最初は革ソールでしたが、ラバーソールに張り替えました。張り替えて10年くらい経って、先日かかとだけ交換しました。
上左から:ラグソール=軍人用に開発されたため、滑りにくく、軽量で耐久性に優れて実用的。リッジウェイソール=線状の凹凸が施されているソールで、凸凹が表から見えにくい。スタッデッドソール=円形の凹凸が施されているソールで滑りにくい。革底に近い見え方です。このソールはイタリアのビブラム社の2055とハルボロラバー社のダイナイトソールが有名です。レザーソール=見栄えが良く蒸れにくいが、水に弱く大理石の上など特に滑りやすい。 下左から:ガラスレザー=合成塗料などを使い表面を均一に美しく仕上げていて雨に強い。メンテナンスは楽だが経年変化が楽しめない。カーフの顔料仕上げ=エドワードグリーンの靴で染料仕上げの革に見えますが、顔料仕上げで雨に強い。スエード=ジョージクレバリーの靴で防水スプレーを施すと雨に強い靴になります。コードバン=クロケット&ジョンズのコードバン。馬のお尻のコードバン層の革で表皮を持たないので雨に非常に弱い。磨くと独特の艶が出ます。

2019.3.29 DESIGNER

中国車のデザインと性能

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.95
中国深センへ2019年モデルのPMM-Woodのアクリルパーツの検品に行ってきました。一部のパーツを海外で作るようになっても、工場での品質チェックは欠かせず、初期から数回は私自身の目で確認する事を行なっています。今回も香港から高速船で蛇口港まで、港からタクシーで市内へ向かいます。3ヶ月ぶりの深センでしたが、蛇口港辺りも街が変わって新しいビルが立ってきています。市内へ入る渋滞する道も一歩通行の方向が変わり、幹線道路への流入はスムーズになっています。この辺りがどんどん変わっていくのは中国です。日本だと道路の方向を変えたりするのはとても無理なのですが。

市内へはいつもの深センに本社があるBYD社の電気自動車のタクシーです。深センでは、ほとんどこの電気タクシーに変わっているのですが、一部残っている日本車のタクシーは乗り心地が悪く、いつしか列に並びながらBYDの電気自動車のタクシーに乗れますようにと思うようになりました。それだけ静かで車内が広く快適な車なんです。工場への移動はレンタカーで移動なのですが、日本車のセダンです。これもアメリカではそのメーカーの売上のメインになっているモデルです。後部座席に乗っていると、背が寝すぎていて、革張りという事もあり、だんだん前に滑って行きます。同行したスタッフに人間工学的には寝すぎていて、これはダメなシートだねと話をしていました。

工場に着くと見慣れない新車が停まっています。聞くと工場長の車で念願の新車を手に入れたという事で嬉しそうにされています。デザインも洗練されているし、どこの車だろうと近づくと、いつも乗っている電気タクシーのメーカーのBYD社の車です。中国車もここまでの車を作るとは少し驚きました。夕方まで工場で検品をして、夕食場所までその車に乗せていただいたのですが、室内のデザインとクオリティにも驚きましたが、大画面のモニターが回転し、スマホとミラーリングコネクトし、オーディオやエアコン情報もタッチモニターでの操作性にも関心しました。一番驚いたのは、6人乗車してフル加速した時です!今まで乗った事のある乗り物の中で一番加速が鋭く、スターウォーズの映画の中でミレニアム・ファルコン号がワープした感じで景色が流れます。それも電気モーターの静かな加速。レストランに着いてブレーキを見るとブレンボのブレーキが装着されています。それも10ポッドの大口径。後で調べると2Lガソリンエンジンとモーターのハイブリッドで441kwと600ps近い馬力があり0-100キロが4.3秒、スーパーカー並みの性能です。

デザインは元アウディのチーフデザイナーだったヴォルフガング・エッガー氏が2016年から手がけているという事で、欧州車のレベルです。今まで中国車のデザインはパクリが多く、品質もイマイチの噂だったので、実際に新しい中国車に乗ってみて性能とクオリティの高さには感心させられました。ただ、フロントには唐の感じの文字があったので、この漢字がなければもっとカッコ良いのにねとスタッフと話をしていましたが、このBYD社の車は中国の国内向けで王朝シリーズとして秦、唐、宋、元の名前を付けられているという事で納得しました。今まで中国では欧州車や日本車の海外ブランドが憧れの車でしたが、中国ブランドとして高性能で高品質で環境に優しいブランドとして売上を伸ばしているそうです。性能だけでなく、シートの座り心地がレンタカーの日本車と雲泥の差だった事に驚かされました。

今回は深セン郊外の工場近くのホテルに宿泊したのですが、広さとインテリアのデザインにも少しびっくりしました。いつもは街を車で走るだけなので、実際に触れる事は少なかったのですが、中国製品のデザインとクオリティに触れてみて、日本も危機感を持って、物作りに取り組まないといけないと実感しました。アクリル工場の社長から中国でエーディコアの製品を売りたい、日本のブランドとして販売したいとの話があり嬉しく思いました。まずはグローバル品質になるようにQCに努めないといけません。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:工場長の新車のBYD/比亜迪股份有限公司の王朝シリーズのSUV「唐」です。流行りの彫刻的なフロントマスクで、均整のとれたデザインです。600馬力でランボルギーニのSUVのウルスと同等の性能で、静かで鬼のような加速です。左下:7人乗りのインテリア(BYDのサイトより)右上:シンプルなダッシュボードの上の大きなパネルはタッチパネルで90度回転して立てにも使用でき、スマートフォンとのコネクトも可能です。ライナーにはLEDランプが光ります。右下:蛇口港より市内へのタクシーはいつものBYDのタクシーです。前を走るのも同じタクシー。日本のタクシーより静かでスタイリッシュです。
深セン市外の工場近くにあるホテルのインテリアです。別に観光地でないエリアで住宅街と工場があるエリアですが、スタイリッシュなホテルで1泊6000円代で宿泊できます。こんな郊外にこんなホテルがあるなんて、深セン市内に毎回帰っていたのですが、早くここを知っていたら、、。

2019.2.26 DESIGNER

古くて新しいインテリア

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.94

先日、開催しましたアメリカ西海岸レポートには、沢山のお客様においでいただき、アメリカのインテリアシーンへの関心の高さを感じました。今回も、東京、名古屋、大阪と回を重ねるごとに、画像を見ながら私自身が現地で聞いたオーナーの言葉の意味や、空間の意味を感じる事ができ、理解を深める事ができました。10回近く話すのは大変ですが、終わってみるとそういう事だったんだと思う事が多く、念仏ではありませんが、繰り返すことも大切なんだと今回も思いました。

レポートの中で、ロサンゼルスのダウンタウンに昨年完成した独立系ホテル、ホテル フィゲロアを紹介しました。ご案内いただいたオーナーのショーンさんの言葉がとても印象的で、同じダウンタウンにある人気のエースホテルや、ダウンタウンに増えてきた高級ホテルとは、一線を画したコンセプトが、現地にいるときも、画像を見直しても人に優しく快適に思えました。ホテル フィゲロアは、1926年にできた女性用宿泊施設のYWCAだった建物を、1970年代からボヘミアンスタイルの安ホテルに改装して営業していました。最初は古いホテルをリノベーションしただけだと思っていましたが、話を聞き案内されるうちに、新築以上の手間と時間をかけた空間は、流行りのヴィンテージ感を出しただけではなく、人にも地域にも優しい場所としての空間という事が分かってきました。

案内していただいた、ショーンさんは、スタッフだけでなく、お客様やロビーで座っている人にも声をかけ、笑顔で話しているのが、お客様へだけの低姿勢という訳ではなく、人として自然な対応がとても印象的でした。そのショーンさんは日本に10年以上住んだことがあり、言葉使いが私よりずっと丁寧で、今の日本人が忘れているような言葉使いで説明をしてくれます。それが余計に空間を優しく感じさせたのかもしれませんが、、。ホテル フィゲロアは、75億円で購入し、175億円と3年をかけて改装してオープンさせました。ホテルを手がける時に大切にしたのがストーリーです。安全性と創造性、それをお客様、従業員が想像しやすい事、様々な人種や、女性、男性、ゲイの方も大切にした空間が重要で、そして、地域に密着したホテルの公共性を一番大切にしたそうです。

今、多くの高級ホテルは宿泊者のプライバシーや安全を守るために、ロビーには家具を置かかないようになってきました。それに逆行するように、ラウンジチェアやソファが、コーナーコーナーでテイストを変えられ配置されたロビーがありました。宿泊客のプライバシーも守るようにチェックインフロントと公共部のロビーへの導入口を二つに分け、どちらも守られるようにしていました。近隣のビジネスマンがランチやアフターに来やすいレストランが2つ、バーが4つあり、テイストも女性、男性、ゲイの人たちが好みそうな雰囲気です。飲食はもちろん公共性を考えて、トイレの数を以前のホテルから3倍にしたそうです。案内されている途中に、若者が図書館のような本棚の前の椅子で本を読み、近所のお年寄りが、暖炉の前で談笑して、通りかかったショーンさんに話しかけているのを見て、ずいぶん前からここにあったホテルのように感じてしまいました。私の学生の頃、お金が無くても家具の勉強のできるホテルのロビーへ通い、社会人になっても友人やお客様と待ち合わせをする場所だったホテルを思い出してしまいました。それがロスのダウンタウンにあるなんて、少し驚きの空間です。

時代を逆行するようなコンセプトのホテルでしたが、インテリアは建築当初の1926年のスパニッシュコロニアルを守りながら、クラシックから1970年代風の家具まで配置したエクレクティックスタイルの空間は自然で、新しくは感じませんが、古くて新しいインテリアを感じる事ができました。当社が手がける家具も様々な人たちに優しい存在でありたいと思いました。    (クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:ホテル フィゲロアのホテル側のエントランス、中上:案内いただいたオーナーのショーン・ウィリアムさん。日本語が堪能な方でした。右上:ホテルの裏にあるプールとスパニッシュハウスはバーラウンジです。下:246室のホテルではかなり大きなロビです。カウンターチェアは別にしてソファやラウンジチェアだけで11セットで60席ありました。ロビーでは若者が図書館のように使い、暖炉の前では老人が談話していました。
左上:セレブに人気の特別室です。最初に入った時には古いホテルの改装だからか、狭い特別室だなと思いました。中:手前のラウンジチェアの後ろに本棚があります。右上:その本の一冊を押すと電動で戸棚が動きます。右下:20人座れるフォーマルダイニングが現われました。左下:その奥にはプライベートバーがありました。ここまで含めると本当に広い特別室です。