COLUMN

2019.1.29 DESIGN

ショールームの製品をぜひご覧ください

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.81
エーディコア・ディバイズの製品は、ブランド発足当時から「受注生産システム」で皆様に家具をお届けしてきました。大量生産、大量販売でコストを下げる当時の家具業界から逆行するコンセプトでしたが、「無駄なものは作らず資源を大切にする」という思いがありました。今から30年以上前のことですが、現在では私たちが掲げていたコンセプトが当たり前になりつつあります。手軽にすぐ手に入る時代から、時間が掛かっても良いものを持つ事が価値あることだと感じる時代になってきたのかもしれません。

当社の製品を見ていただくのは、各ショールームの展示商品が基本となります。ショールームの展示品は、最新の新製品から昨今の売れ筋商品、AD CORE、NEO CLASSICO、A-mode の3ブランドからアイテムを絞って展示しています。常にご注文をいただいている人気の商品から、ヴィンテージと呼んでも良いような時代を感じさせる製品まで幅広いアイテムを揃えていますが、限られたスペースのため全アイテムを展示することができません。展示する製品によってお客様がインテリアのイメージを広げていただけるようなセレクトをしています。椅子やソファは張り地によって表情が大きく変わるのですが、展示する製品にはインパクトのあるファブリックよりもイメージの妨げにならないニュートラルなファブリックを選ぶよう意識しています。

ショールームの展示品は、お客様に仕上がりのクオリティーを確かめていただく機会でもあります。新しい展示品が入荷する際には仔細に製品をチェックし、仕上りを確認します。お客様は製品が届いたその時が一期一会の時。その時目にした製品がクオリティーそのものになります。そのことを分かっていただくためにも、クオリティーが基準に満たない場合はあえて工場に戻すこともあります。ソファなどの布地の整え方一つで仕上がり感が大きく左右されることもあるのですが、作り手側からすると「ちょっと手直しすれば、、」と思えるようなところも、お客様の目線になってチェックを行うようにしています。

普段通り、いつも通り作っているつもりでも、品質をキープし続けることは簡単なことではありません。先月もお伝えした生産工場での品質管理の努力はもちろんですが、今年も日々皆様にお届けする製品のクオリティー向上に努めていきたいと思います。各ショールームの展示品をぜひご覧ください。(開発 武田伸郎)

豊かな自然光が降り注ぐショールーム。くつろいだ空間で製品をゆっくりとご覧ください。

2018.12.27 DESIGN

師走の工場訪問

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.80
冬の到来を迎えたと思ったらあっと言うに年の瀬、今年も残り少なくなってまいりました。本格的な寒さがまだ到来していなかった先週、九州の工場へ品質管理の打ち合わせに行ってまいりました。あいにくの雨模様でしたが、例年の底冷えするような冷え込みはなく工場を見て廻る事が出来ました。今回お伺いしたのはソファを中心に生産をお願いしている九州の工場です。

エーディコアでは、開発した製品を最も適した工場へお願いして生産しています。製品の特徴よって製造方法も変わり、工場の得手不得手により納期やコストが変わってきます。資材調達や量産体制、コストなどを含めたバランスを考慮して工場を決めています。しかし、ご存知の通り国内で家具の生産ができる工場が年々減っています。加えてエーディコアの製品は、高い技術がなければ作る事が出来ない製品ばかりです。正確な技術がなければ、デザインはもちろん強度も保てないのです。ですから、どこでもお願いできるわけではありません。デザイナーの瀬戸は、いつも「今以上のモノを」と、職人さんから「出来ない」と言われてもその度に試行錯誤をしながら、ダメでもいいから一度やってみましょう、と工場を説得してトライしてきました。そのチャレンジでたくさんの実績を上げ、エーディコアの製品を作ることにより、工場の持つ潜在的な技術力を引き出してきたようにも思います。今では瀬戸の無茶振りも工場の方から「とりあえずやってみますか」と、言っていただけるようになり、工場によっては無理なリクエストを期待しているところもあるくらいです。長きにわたって切磋琢磨してきた結果だと思います。

今回の工場訪問は、生産中の製品の品質や仕上がりを確認するためです。新製品開発の革新的な試みではなく、日々実践するモノ作りの土台となる作業です。工場では各製品が決められた仕様に沿って進められていきますが、それらの製品が仕様通りに仕上がっているかどうかを見て廻ります。ちょっとした細部の仕上がりの差を許容範囲として見逃していると後々大きな不具合となって問題が起きることもあります。そういうポイントを見つけ出すのは非常に難しいのですが、以前は工場内をウロウロしていると好意的には見ていただけず、問題点を指摘しても前向きな対応ではないことが多々ありました。しかし、最近は現場の方も若い方が増えてきて、工場の方にも協力していただきながら品質向上に向けて改善する体制になってきたように思えます。今回の品質検査も、問題があると他の部署の方も集まってきて、どう改善できるかディスカッションをして改善策を立てる事が出来ました。

これからも革新的な製品作りを目指すのと同時に、地道な品質管理、品質工場に努めて行きたいと思います。来年も良い製品作りを目指し、良い製品をお届けできるよう頑張っていきたいと思います。(開発 武田伸郎)

工場内で製品の仕上がりの確認。各製造部の担当者が集まって、品質向上についてディスカッション。

2018.11.27 DESIGN

JID60周年記念式典へ参加してきました。

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.79
今年も残すところあと1ヶ月。本格的な冬の到来はまだちょっと先のようですが皆様いかがお過ごしでしょうか。先日、秋の気配漂う六本木の国際文化会館で行われた JID60周年記念式典のパーティーに参加してきました。JIDは、日本のインテリアデザインの文化的向上や創作活動の発展を目的に、1958年に日本室内設計家協会として結成され、2012年に公益社団法人日本インテリアデザイナー協会となった団体で、今年は60周年の記念の年。会場にはこの60周年を支えてきた重鎮の方から、これからのインテリアデザインを担う方々で賑わっていました。JIDが発足した1958年は、東京オリンピック開催から大阪万博へと続く高度成長期の真っ只中、日本が非常に盛り上がっていた時期です。折しも2020年東京オリンピックから2025年大阪万博と、現在の状況と重なるところが多く、JID60周年を迎えた今、日本のインテリア業界を盛り上げようと話題も尽きない盛況ぶりでした。

式典が行われたのは六本木の国際文化会館。華やかな都心のど真ん中にあるとは思えないほど閑静な空間です。この国際文化会館は、エーディコア・ディバイズとしても思い入れがある場所で、2006年に新作展示会を開催した場所でもあります。時期もまさしく、美しい庭園の紅葉が色付きはじめた頃でした。国際文化会館は1952年8月27日に設立され、戦後の米欧諸国との文化的交流を図るため、日本人建築家3人(前川国男、坂倉準三、吉村順三)の共同設計で1年余を経て竣工しました。しかし、老朽化のため取り壊される案も出たのですが、昭和の名建築を再評価する機運が高まり、2006年(平成18年)3月には国の登録有形文化財に登録され、2005年(平成17年)に耐震構造を含む大規模な改修を実施。日本のモダニズム建築を代表する名建築の外観や、庭と建物の伝統的なたたずまいは変えることなく保存されることになり、現在はレストランや宿泊施設に活用されています。2006年当時、あまり知られていない新作展示会場を探すのに苦心していたのですが、耐震工事を終えた直後の国際文化会館を探し当て、建築はもちろんですが素晴らしい庭園を見て「ここしかない」と開催にこぎつけました。現在の庭園は、1930年に作庭され近代庭園の傑作と言われていますが、2006年の新作展示会の際も庭園に人が溢れ出て、当時の入館記録を更新したほどの盛況振りでした。JIDのパーティーでも、庭園に出て眺めを楽しむ方がたくさんいました。

エーディコア・ディバイズ クリエーティブディレクターの瀬戸は、今年の6月までJIDの理事を努めていました。今回の60周年記念のイベントについても尽力し、12月5日まで新宿のリビングデザインセンターOZONE 1F で開催している JIDアワード60年の歴史展&JID AWARD 2018受賞作品展も担当スタッフとしてディレクションしてきました。日本のインテリアの歴史を垣間見える展示会、ぜひ足を運んでご覧になってみてはいかがでしょうか。(開発 武田伸郎)

(上段)JID60周年記念式典が開催された晩秋の国際文化会館。月明かりに照らされた庭園が綺麗です。(下段)2006年に開催したエーディコア新作発表会。たくさんの方に参加いただきました。

2018.10.29 DESIGN

フォトグラフィック アーティストとのコラボレーション

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.78
今から遡ること約30年前、AD CORE のカタログを製作する際、インテリアやプロダクト製品を撮影するカメラマンではなく、主にファッションをフィールドにお仕事をしているフォトグラファーに撮影をお願いしていました。家具のデザインもそうですが、クリエィティブディレクターの瀬戸のこだわりで、お決まりのアプローチではなく違った視点から家具を捉えて欲しいという希望があったからです。AD CORE の代名詞でもあるCERVOから撮影をお願いしていたのがフォトグラファーの荒川弘之さんです。

当時はまだ20代だった私達と、フォトグラファーとしてバリバリお仕事をされていた荒川さんとでガップリ四つに組んで撮影を行なっていました。1カットに費やす時間が2〜3時間なんて当たり前、スタジオ撮影の時はいつもエンドレスでした。現在のようにデジタル撮影ではなくフイルム撮影のため、モニターでチェックすることもできず、カメラのレンズで構図を確かめるか再現性の悪いポラ(ポラロイド写真)で確認するしかありませんでした。荒川さんとの撮影はいつも緊張感が漂っていて、現場にはアシスタントに鋭く指示を出す荒川さんの声が響いてました。今でもよく思い出すのが、フラッシュを焚いてのストロボ撮影が多かったのですが、荒川さんはいつもシャッターを切る時は空調のスイッチをOFFにするのです。微細な振動が起きないようにという気配りだったのですが、周りにいる僕たちは、もちろん息を殺してシャッターを切るのを待っていました。当時は自分たちで製品をトラックに積み込みスタジオまで運転して、撮影が終わったら再び梱包して夜明けの街を会社まで製品を持ち帰っていました。今となっては懐かしい思い出です。

そんな懐かしい荒川さんと先日20数年ぶりの出会いがあり、今年の新製品発表会でコラボレーションをすることになりました。ファッション関係のお仕事をしていた荒川さんですが、10年前のリーマンショック以来商業的な撮影はやめて、現在は自分の作品だけを撮影するフォトグラフィック アーティストとしての活動をしています。これまで「Yohji Yamamoto」氏とのコラボレーションやNYでの作品発表など、新しいフィールドで活躍されていました。今年発表する新製品と、荒川さんの作品とのイメージが偶然にもピッタリ。来週から始まる新作展示会、全く新しい試みの新製品も期待していただきたいのですが、荒川さんのアート作品とのコラボレーションも是非ご覧ください。皆様のお越しをお待ちしています。(開発 武田伸郎)

今から30数年前、荒川さんと撮影した撮影カット

2018.9.27 DESIGN

新しい試みの新製品スタジオ撮影

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.77
ここ2日間、撮影のためスタジオにこもりっきりでした。外の様子が全くわからなかったのですが、この2日間で肌寒いくらいのめっきり秋らしい気候になってきました。撮影はこの秋に発表する新製品のスタジオ撮影です。試行錯誤を重ねてようやく形になって届いた製品たち。その製品をどうやって撮影するか、どう撮ったらより皆さんへ魅力を伝えられるか。デザイン、製品開発のファクターの中でも「撮影」はとっても重要なポイントです。

20代の頃からクリエイティブディレクターの瀬戸は、デザインした製品の撮影デレクションを行なってきました。今は撮影もデジタル化され、撮影したカットもその場である程度確認できますが、昔(20年以上前)はフイルムでの撮影でカットの確認はカメラのフレームを覗き込んだり(大型レンズのカメラは天地が逆に見えます!)ポラロイドでアングルを確認して進めていました。最終の上りは、フイルムの現像が上がってからでないと見ることができませんでした。フイルム原稿はデジタル画像のように後で修正ができないので、1カット1カット緊張感の中で撮影していました。昔の話ですが、フイルム撮影し終わった画像が「レンズのカバーが微妙にずれていて全てピントが甘かった」なんてこともありました。撮影のやり直しもできなかったので、印刷でなんとかしのぎましたが・・・。そんな一発勝負の撮影は、深夜作業は当たり前、朝方までの撮影なんてことも良くありました。

今では撮影の方法もデータの扱いも全く変わってしまいましたが「良い写真を撮る」感性は昔も今も変わらないと思います。写真は構図やアングル、陰影で表現しますが、ファッションのように流行もあります。濃淡を強調するのが流行ったり、エッジを効かせるのか柔らかい明かりで撮るのが有効なのか。カメラマンとデザイナーのディスカッションも大切です。デザイナーのイメージと、カメラマン、グラフィックデザイナーの客観的な視点を組み合わせながら撮影を進めました。

今年の新製品は、これまでになかった全く新しい製品開発を行いました。これから発表するのが楽しみですが新しいチャレンジです。撮影も非常に難しく、カメラマンも事前にシュミレーションができずに、製品がスタジオに到着してからのイメージ作りになりました。光と陰、かたちと肉眼での捉え方・・・。言葉だけで上手く表現することが難しいのですが、製品の仕上がりもさることながらとても素敵な画像を撮ることができました。新作展示会まであと1ヶ月、もう少しだけ楽しみにお待ちください。(開発 武田伸郎)

カメラのレンズの前でアングルを考察中。目視とカメラのレンズでは写り方が異なります。
撮影カットを確認しながらディスカッション。一つのイメージにこだわりすぎると思うように進まないことも・・・