COLUMN

2016.12.23 DESIGN

製品達の活躍の場

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.56
先日終了した、注目の人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」通称、逃げ恥?、皆さんご覧になっていましたでしょうか。ドラマの劇中に AD CORE の家具が使われていました。主人公の伯母役、石田ゆり子さんの自宅のダイニングチェアに、我が社の代表作であるCERVOが使われていました。突然の登場でびっくりしましたが、独特のフォルムの椅子なので一目でそれと分かります。今回はタイアップや製品の貸出しはなかったので、ドラマの制作会社やスタイリストの方のセレクトで使っていただいたのでしょうか。人気ドラマだった事もあり「ドラマに出てたね」と皆さんから声を掛けていただきました。常日頃、家具のご注文いただいて様々な所へ納めさせていただいていますが、どんな所でどんな風にお使いいただいているかを知る機会は本当に限られています。今回のドラマのように、思いがけない所や素敵な場所に製品を使っていただいているのを見ると本当にうれしくなります。

先日も、茨城県の坂東市役所にメンテナンスのため初めてお伺したのですが、素晴らしいスペースに使っていただいていて感激しました。市街地の道路から「坂東市役所」の表示に沿って細い道に入り「こんな場所に?」と、思いながら角を曲がると、開けたスペースに坂東市役所がこつ然と姿を現しました。石、木材、ガラスを用いながらオープンスペースを大胆に使ったモダンで素晴らしい建物です。広々としたエントランスの吹き抜け、しっかりとした無垢材の床、ロビーから受付、働く職員の方全体を見渡せるオープンなフロア、モダンですが落ち着きのあるインテリア。そんな市庁舎のロビーや会議室でAD CORE の家具をお使いいただいていました。メンテナンスのお仕事が無ければ、訪れる機会が無かったかも知れません。身近な所で出会うAD CORE の家具もうれしいものですが、いろんな素敵な空間でAD COREの家具が活躍しているのを見るとまた別のうれしさがあります。こんな出会いが家具の仕事をする上で喜びに繋がるのだと思います。

今年も一年が過ぎようとしています。一年間皆様には大変お世話になりました。来年も素敵な出会いがたくさんあるようにがんばりたいと思います。(企画開発/武田伸郎)

夕暮れに浮かび上がる坂東市役所。とってもきれいです。
待ち合いホールに鎮座するMD-101M

2016.11.29 DESIGN

岡山のとても素敵な Cafe & Bar 「TACSUM」

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.55
先日、岡山市内にある Cafe & Bar のカウンターチェアのメンテナンスに行ってまいりました。岡山駅から徒歩10分、大通りから少し入った静かな通りにそのお店は有りました。民家を改装したアクセサリーショップやファッションのお店が並ぶちょっとオシャレな落ち着いた場所です。お店のあるビルの奥まったステンドグラスの扉を開けると、薄暗い店内には艶やかな一枚板のカウンター、そしてそのカウンター前に AD-023C(ルッソ カウンターチェア)が並んでいました。落ち着いたインテリア似合わせて、座面に「鋲」をあしらった特別な仕様です。オーナーの方にご挨拶をして早速作業に掛かります。オープンする夕方までにはメンテナンスを完了させなくてはなりません。

根気のいる作業ですが、段取りに沿ってようやくメドが立った所でちょっと休憩をとりました。その際にオーナーの方からとてもおいしいコーヒーをいただきました。甘党の僕はカフェマキアート。しっかりしたエスプレッソの香りと何ともいえない上品な甘さが最高でした。このお店は、お酒もさることながらカフェにも非常にこだわっていて、お酒の後にコーヒーを頼まれるお客様もたくさんいらっしゃるそうです。おいしいコーヒーをいただきながら、お店のこだわりも聞かせていただきました。

圧巻の一枚板のカウンタートップの前には、揃いの材料で肘置きが設えてあります。酔ったお客様が肘をついたりもたれかかったり、お酒を飲む姿が様になるように設えたのだそうです。ドーム型の天井には、影が映り込まない角度で照明を当てたり、店内全ての照明がそれぞれ調光出来るようにしてあるなど、隅々にまでこだわりを感じます。ふと気がつくと、このお店には飲食店特有の「臭い」がしません。アロマを炊いている訳でもありません。煙草の臭いもしないと思ったら全席禁煙!!更なるこだわりを感じました。

お店は今年でオープンからちょうど10年、AD CORE の椅子も布の張り替えをしながら10年お使いいただいていました。こんなにこだわり抜いたお店でお使いいただいて、うれしさ倍増ですね。なかなかお伺いする事は出来ませんが、色んな所でAD CORE の製品がしっかりお使いいただいているんだなと実感しました。これからも長くお使いいただけるような製品作りを目指して、がんばりたいと思います。(企画開発 / 武田 伸郎)

一枚板のカウンターが圧巻!!ルッソチェアもぴったり納まっています。
休憩時間にいただいたカフェマキアート。遊び心もサービス満点です。

2016.10.27 DESIGN

日本のモダンデザイン 1965

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.54
1965年、東京オリンピックが開催された翌年、ビートルズが来日する前の年になりますね。今から約半世紀前のことになります。アメリカが世界を席巻したミッドセンチュリーを経て、世界中の様々な影響を受けながら日本でも建築をはじめとする独自のデザインや文化が生まれ始めた時代です。

来月発表する今年の新製品を、1965年に設計された建築物で撮影を行いました。ディレクターの瀬戸が、不思議なアンテナで探し出してきたほとんど知られていない物件です。日本では旧い建築物は資産価値が無くなるため、貴重で素晴らしい建築物でも建て替えられてほとんど残らない状況にありますが、今回撮影を行なったこの建物は、奇跡的に一部水回りを増設しただけで、設計当初の状態をほぼ保ったまま使われていました。床や天井はもちろん、木製の窓枠(だいぶ建て付けが悪くなっていましたが)まで当時のまま。オーナー曰く「多少不便かもしれないが、出来るだけオリジナルのまま」お使いになっているそうです。その建築は、外観も内装も派手さが無く天井も高くないのですが、これまでカタログ撮影で見てきた様々な西海岸の住宅には無い、日本的なモダニズムを感じました。壁面コーナーの微妙な曲面やエントランスに設けた天窓からの光など、上手く説明が出来ないのですが、派手さや豪華さではなく、端正で控えめなディテールにこだわった心地良い空間がそこにはありました。もちろん眼下に広がる湘南の海も、心地の良い空間の大切なファクターの一つだと思います。

撮影時期の天候がほとんど雨続きで、天気予報でもほとんど雨でしたが、ピンポイントでその日だけ予報が外れて快晴!!撮影も無事終了することが出来ました。今年の新製品は、昨年までの西海岸スタイルから視点を変えて日本的なモダンをテーマにしました。60年代というのもキーポイントです。来月からスタートする新作展示会、新しいパンフレットの出来映えもぜひご覧下さい。(企画開発 / 武田 伸郎)

新製品の撮影風景。天気は良好、時間との戦いです。
撮影終了後、バルコニーからの絶景です。

2016.9.27 DESIGN

カタログ撮影ロケーション探訪

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.53
毎年、新製品を製作するたびに写真撮影を行います。新作の発表会で実物を見ていただくことが一番の希望ですが、カタログやその他のメディアでたくさんの方に製品を見ていただく為に様々な写真撮影をします。

製品をしっかり見ていただく為にニュートラルなスタジオでの製品撮影の他に、その時々のテーマに添ったイメージを表現する為に色んな場所へ製品を持ち込んでロケーション撮影を行います。製品のコンセプトやデザインイメージ、意匠的な見せ方だけでなく、ちょっと大げさですがその時々の時代背景や気分なども重要なファクターになります。(どんなに素晴らしい製品でも、時代に即さないモノは受け入れてもらえないことがあります)

毎年、そんなイメージを具現化する為に撮影場所を探します。(海外撮影の場合も同じです)アートディレクターの瀬戸のイメージを基に、言葉に表せるモノ、表せないモノ、はっきりとした具体的な(視覚的な)イメージがあれば探しようもあるのですが、時には映画のシーンだったりファッション写真だったり、場合によっては人物像だったりします。そんなつかみ所の無い?イメージに即した物件を探し当てるのは本当に大変なのですが、いつも色んなアイディアがわいてきて、どうにか撮影までこぎ着けます。

今年の撮影も、たくさんの物件を見ました。1930年代の銀行の跡地や昭和の名士の洋館など、魅力的?な建物ではあったのですが、中々イメージに見合う物件が無く、消去法で「ここしかないかなぁ」と思い倦ねていました。それが瀬戸の出張先からの一報で一発逆転、ギリギリのタイミングでとても素敵な物件を探し当てる事が出来ました。(何処で目にしたのかも曖昧な感じでしたが、どういうアンテナを張っているのか瀬戸のその洞察力にはいつもながら感心するばかりです)

現在、今年の新作展示会に向けた準備を急ピッチで進めています。テーマに添った素敵な写真も撮ることが出来ました。展示会は11月、お披露目はもうしばらくお待ち下さい。(企画開発 / 武田 伸郎)

1930年代の地方銀行跡の屋上です。すごい雰囲気・・・。
ロケーションの下見、瀬戸が撮影のイメージを探してアングルまで模索します。

2016.8.29 DESIGN

超貴重木材見学の巻

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.52
折に触れて木材の資材困窮のお話をさせていただいてますが、先日思わぬところで超貴重木材の数々を見る機会がありました。昭和6年に料亭として開業し、その後日本初となる総合結婚式場としてオープンした目黒雅叙園。その中にある、昭和10年に建てられた目黒雅叙園で現存する唯一の木造建築、通称「百段階段」で貴重木材の数々を見ることが出来ました。

百段階段は99段の長い階段廊下に連なる7部屋を、それぞれのテーマで当時の一流クリエーターが趣向を凝らしてしつらえた建築です。(実際の階段は百段ではなく99段しかありません。階段の脇に番号が貼ってあります。諸説あるようですが99をもって100の代用とする一歩控えめの日本文化という説が一般的のようです)見に行った展示会は夏の期間限定で「和のあかり」がテーマ。7つの部屋でインスタレーション展示がされており見応十分なのですが、どうも部屋の調度品や使用されている木材に目が行ってしまいます。

会場に一歩脚を踏み入れたとたん、見上げる先に広がる黒光りした厚さ5センチの欅の階段、それだけで壮観な眺めです。階段に併設する部屋には固有の名前が有り、内装やスタイルが全く異なり、使われている木材も異なります。漁樵の間の床柱は精巧な彫刻が施された巨大な檜材、頂上の間の本間の床柱は銘木の黒柿を使用、そして清方の間は、一見しただけでは何の材料を使っているのか分かりませんでしたが説明パネルを見て驚きました。茶室風の控えの間の床柱と水屋の羽目板はパープルハート(10センチになるまで、50年以上掛かると言われています)、天袋と前地板はゼブラウッドと、共に南米材を使用していました。天井は神代杉と秋田杉を薄くスライスして編目状(市松模様)に編んだ網代天井と言われる仕上げ。国内外の貴重な材料をこれでもかというくらい手間を掛けて仕上げてありました。専門誌やネットでしか目にすることの無い貴重な材を、思いもよらないところで見ることが出来ました。

映画「千と千尋の神隠し」のモデルになったとも言われている百段階段。東京都の有形文化財にも指定されています。各部屋の内装やしつらえも見応え十分ですが、貴重な木材もたくさん見ることが出来ますので、ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。(企画開発 / 武田 伸郎)

左:見上げる百段階段。滑り止めにカーペットが貼ってあるのが残念ですが厚い欅板。右:神代杉と秋田杉を編んだ仕上げの網代天井。