COLUMN

2015.4.25 DESIGN

モダン数寄屋建築と極上な座り心地のソファ

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.36
先日、御殿場にある旧岸邸を見て来ました。岸信介氏と言えば56代内閣総理大臣を務めた昭和を代表する政治家、現在の安倍総理の祖父にあたる方です。この邸宅は1970年、73歳の時に転居し晩年まで過ごされた住宅で、設計は近代数寄屋建築の祖とされる吉田五十八氏。庭園から臨む旧岸邸は、非常に穏やかで、シンプルな凛としたたたずまいがとても印象的です。豪華さを誇示することなく、これぞ近代数寄屋作りのスタイルなのかなと感心しました。

間取りや内装は、政治家としての自邸であることを念頭に、パブリック的な要素とプライバシーを保つための機能が盛り込まれていました。床の間やすだれ等、日本様式を取り込みつつ素材やスタイルは現代的で非常にモダンな印象を受けました。メインのリビングスペースには、当時スイスから輸入したソファセットが置かれていました。そして、岸氏が一番お気に入りだった、庭園を一望出来る位置に鎮座した特別なソファが1脚だけありました。堂々としたサイズ、時代を感じさせるデザイン。そのソファの座り心地が信じられない程、快適でした。柔らかさ、ホールド感、包み込まれるような安心感、手に馴染む革の感触。見た目では分からない極上の座り心地に驚きました。ダイニングルームには、12席のダイニングセットがありました。スチールフレームと皮革張りの背座、アームには無垢材の削り出しのパーツが取り付けてあります。ちょっとキッチュなデザイン、素材の組み合わせがどこか エーディコアのチェア CERVO III を思い起こさせます。開放的で柔らかい光に溢れた優しい空間ですが、ちょっと居住まいを正すような姿勢の良さを感じました。

これまで書籍でしか見た事が無かった吉田五十八氏の建築ですが、実際の建物を見てその素晴らしさを実感しました。そして、この邸宅のため家具達。時代を感じさせるデザインですが決して古いわけではなく、どこか懐かしく優しさを感じるデザインでした。「和洋折衷」なんて言葉では表現出来ない、シンプルな「和」のスタイルをモダンに昇華したとても素敵な空間でした。岸邸のお隣には、和菓子の老舗「虎や」さんのカフェも併設しています。これから春も本番、緑もさらに濃く良い季節になります。是非一度、見学に訪れてみてはいかがでしょうか。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

静かにたたずむ吉田五十八氏設計の、旧岸邸。
庭に面したダイニングルームと、庭を臨む位置に鎮座する岸氏専用のソファ。
旧岸邸の隣には、和菓子の老舗「虎や」さんの甘味どころが有ります。

2015.3.25 DESIGN

マラソン走って来ました。

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.35
いまや一大ブームのランニング、先日の横浜マラソンも2万人を超えるランナーが参加してました。廻りでも走っている方が多く、出張の際にはランニングコースが名所の近くに宿を取り、お仕事前に走る方や、女性でも海外レースに参加して年間10本以上のレースを走る強者もいらっしゃいます。かくゆう私も、知人のマラソン自慢話に「そんくらい走れんだろ」と、ぶっつけ本番でレースに参加したのがきっかけで走るようになりました。

それから毎年レースに参加して徐々に記録を縮めながら、なんとかサブスリー(フルマラソンを3時間以内で走りきる)を目指すところまで来ました。しかし最近は年齢的な限界を感じて現状維持もままならず、なんとなくレースに参加する感じでした。ところが、マラソン女子金メダリストのQちゃんの指導で有名な小出義雄氏の「サブスリーを達成する為の3ヶ月メニュー」という著書を読む機会があり、ダメ元でやってみる事にしました。今までの適当な練習と違い、プチ陸上選手並み!インターバル走やビルドアップ、35キロタイムトライアルなんてメニューもあります。なんとかメニューの7~8割はこなしたでしょうか。すると、何となく効果が見えて来ました。これまで練習では出した事の無いタイムが出るようになりました。これでなんとか記録達成!?、と先週日曜にレースに参加して来ました。

気温が高いものの、まずまずのコンディション。体調も問題無し。レースのイメージは、前半押さえて脚を温存し、中盤イーブンで35キロからトップスピード、2時間58分でゴール!です。スタートからコースが混雑し、思うようにコース取りが出来ません。かなりのタイムロスで折り返しが1時間36分。想定タイムよりだいぶ遅れてしまいました。気温も上昇し、疲労がたまって来ますがここからペースアップします。走るマシーンと化して30キロを通過、タイムは2時間13分。残りの距離を考えるとかなり厳しいタイムですが、ペースを保ちどんどんランナーを抜いていきます。力技で40キロまでたどり着きますが、どうしようもない疲労が全身を襲い、時間は既に2時間54分!ちょっとめまいがして意識も朦朧。ここで勝負有り?何人ものランナーに抜かれてしまいますが、すでにがんばる気力もなく、どうにかこうにかゴールイン。タイムは3時間4分33秒。もうちょっとのところでしたがゴールした瞬間は悔しい気持ちも皆無、もう走らなくて良い安堵感で一杯でした。

自己記録は更新したものの、今回もサブスリーは達成出来ず。廻りからは「歳なんだからもういい加減辞めなさい!」という声も多く、この先どうするかはちょっと考えどころです。僕の勝手なストーリーでは「50歳までサブスリー達成、その後はトライアスロンに取りかかる」予定でいたのですが・・・。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

脚もほぼほぼ仕上げて来ました。スタート前のコース。ゴールはここから195メートル先。
疲労困憊。レース直後のランナー達。

2015.2.25 DESIGN

新製品のご注文、お待ちしております。

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.34
先日、山形の工場へ行って来ました。皆さんもご存知だと思いますが今年の寒さと積雪は例年にも増して非常に厳しく、当日の天気予報も大雪の予報でした。(昨年は山形工場出張の帰り、関東地区の大雪の為、ポイント故障により新幹線が止まってしまい帰れなくなりそうになりました、、、)行きの峠は吹雪模様でしたが、平地は積雪は多いものの天候はそれほど荒れていなかったので、予定通り移動が出来ました。今回の出張は、物件の製品確認と、新製品の出荷前の確認が目的です。工場到着後のご挨拶後、各工場の部署廻るわけですが、外廊下や通路の寒い事!!現場用の防寒ジャケットを着ているものの寒さがジンジン伝わってきます。工場内は幾分暖かいとは言うものの、寒さの中での作業は本当に大変です。

予定の打ち合わせも済んで、最後に新製品の仕上がりの確認です。新製品の試作品は、試作担当の凄腕マイスターが製作します。細かいディテール、微妙な力加減、納めた後の使い心地や意匠的な仕上がり感など、何度もすり合わせしながら試作を仕上げて新作展示会でお披露目します。量産化する際にはソノマイスターが立ち会いのもと、ライン生産担当者へ製品のポイントや注意点を伝授しながら引き継いでいきます。製品の片側を見本として仕上げて見せて、もう片方をライン担当者に実際に作業をさせて善し悪しをチェックして進めます。指示書では伝えきれない、モノ作りの職人の勘所を伝える大切なところです。

1脚の椅子を仕上げるにも、渾身の力を込めて張り込むのが見ていて分かります。これから量産化が本格化する製品ですが、仕上がりをチェックする治具を用いながら注意深く作業は進み、最初の1脚を仕上げるのに大変な労力と時間を費やしました。全体の仕上がり、細部も含めてとても奇麗に仕上がりました。

昨年発表した新製品は、皆さんからたいへん好評をいただきました。これからたくさんご注文をいただけるのではないかと期待しております。1脚1脚、丁寧に仕上げて皆様にお届けします。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

丹誠込めて張り上げられるウィングバックチェア NC-043A
帰りの山形駅。寒さが足元から伝わって来ます。

2015.1.28 DESIGN

再びのテニスブーム到来

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.33
巷では、錦織選手の活躍でテニスが盛り上がっています。最近はテニスコートの確保が難しく、テニススクールもキャンセル待ちの状態です。先日新しいラケットを試そうと思って問い合わせしたら、人気商品のためモニターに廻す製品が無いほど売れていると言われました。今までそんな事は無かったのですが、スタープレイヤーの影響はすごいですね。

テニスブームと言えば、自宅近くにあるお店があります。古びた看板に「森下テニス」とあるので、テニスショップ?のようですが、営業しているかどうかも分からず何年も経過しました。時々シャッターが開いているのですが、ある日店の前を通ると店内に人の気配がしました。勇気を出して?お店のドアを開けてみると、オジさんがラケットにガットを張っていました。お店のファサードもかなりのものですが、店内も相当なものです。壁際にシューズや色んな製品が箱のまま積み上げてあります。壁には数本ラケットが掛けてあり、中には何十年も前のヴィンテージモノ(ウッド?!)のラケットがぶら下がっていました。オジさん曰く、最近はテニスグッズの利益率も悪く薄利多売の商売でないとやっていけない、このお店は近くに大学もあるので学生のガット張りでなんとかやっているのだそうです。確かにガットだけはたくさんぶら下がっている、床にまで•••。それから、ガットの交換はこのお店に頼むようになりました。「こんなお店に人が来るのかな•••」なんて思っていたのですが、以外に、というかたくさんいるのです。売れないであろうと思っていた製品が、来るたびに入れ替わっています、というか売れている、しかも安い。(ちなみにラケットは商売抜きの価格で売ってくれます)最近では色々このお店で購入するようになりました。

そんなある日、下北沢のマニアには有名なテニスショップ(「何でも鑑定団」で鑑定したりするオーナーのお店)に行った時の事。オーナーに『どこでガットを張っているの?』と聞かれました。「近所の不思議なお店で張ってます」『なんてお店?』「森下テニス」『えぇ~!森下さん!!』、と、いうことでそのお店、昔自社でラケットまで作っていた有名なお店だったのです。ストリンガー(ラケットにガットを張るプロ職人)としてもかなり有名な方でした。世の中、分からないものです。最初見た時は、つぶれた自転車屋?と思ったお店が、そんな歴史を持っていたんですね。

この間オジさんに聞いたら、1月に出た新製品がこのお店に廻ってくるのが4月になるとの事でした。昨今のテニスブームも、このお店にまで波及しているんですね。皆さんもテニスブームに乗ってテニスを始めようと思っている方、関心のある方はこちらのお店を覗いてみませんか?お店に入るにも、なかなか勇気がいると思います、、、ちなみに日曜はお休みです。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

立教通りに面したお店。因にこの日は日曜日。

2014.12.24 DESIGN

河口湖湖畔の不思議な美術館

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.32
先日テニスをしに河口湖まで行ってきたのですが、庭園が素敵な美術館へ立ち寄りました。久保田一竹美術館、ミシュラン観光ガイドで三ツ星を獲得した美術館で、展示品の着物と合わせて庭園も素晴らしいというので脚を運んでみました。久保田一竹(くぼた いっちく)氏(1917-2003)は、室町時代の「辻が花染め」を独自の「一竹辻が花染め」として現代に蘇らせ、生涯その技法に人生を掛けた方で、美術館には着物の作品が展示してあります。

美術館へ行ってみると、その入り口と門扉に驚かされます。河口湖湖畔、富士山を臨む着物の絞り染めの美術館というイメージとはかけ離れた、エスニック調の不思議なしつらえ。中に入ってもガウディみたいな雰囲気やアジアやアフリカン的なプリミティブなオブジェやベンチ、日本的な庭園とのなんとも不思議な組み合わせ。館内に入ってもその不思議な感覚は同じで、本館展示室はヒバの巨木を用いた木組み構造なのですが工法が伝統的な仕口ではありません。なかなか豪快な(強引な?)組み方で、さらに不思議さは増してきます。肝心の展示品は「一竹辻が花染め」の工程の細かさや作品のあでやかさは目を見張るばかりで、展示場の映像では染めの工程が紹介されていたのですが、その工程たるや気の遠くなる作業でした。でも、作品は作業の細かさや時間の掛け具合など関係なく、その表情や色合いが素晴らしく、赤や橙の鮮やかなものから雪景色を表したモノトーンの繊細なグラデーションを表現した着物まで、染めの事など良く知らない僕でもとても感動しました。

「辻が花染め」は室町時代に栄えた紋様染めですが、江戸時代初期に表現の自由度に勝る友禅の出現により衰退したと言われています。二十歳の時にこの「辻が花染め」に出会った久保田氏はその美しさに惹かれ、伝統技術の再現に加え独自の表現、技法を追求し「一竹辻が花染め」として蘇らせました。アメリカ伝統のクラシックな「ジョージアンスタイル」をリスペクトしながら現代にリデザインしたエーディコア・ディバイズの新製品「Neo Classico Heritage」のコンセプトにもどこか繋がりますね。

美術館を出ると、富士山を一望出来る絶景スポットがあります。冬の澄んだ空気の中、くっきりとした富士山を拝む事が出来ます。暮れも押し迫ってくると何となく厳かな気分にさせられました。今年も一年、ありがとうございました。来年も宜しくお願い致します。(エーディコア・ディバイズ/企画開発 武田 伸郎)

本館展示室前のギャラリー。手積みの琉球石灰岩の円柱が特徴的な建築物。