COLUMN

2014.12.3 DESIGNER

DJとデザイン

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.38
11月12日から始まったネオクラシコブランドの新作展示会、ネオクラシコ・ヘリテージはご覧いただいたでしょうか。こんなアメリカンクラッシック家具のデザインを待っていたと言われるお客様も多く、今までの展示会の中でも一番手応えを感じた新作でした。ネオクラシコブランドは過去のインテリアスタイルを現代のデザインにリデザインしたブランドです。昔のデザインをだた形作るのではなく、再構築するのは大変なんです。

最近、音楽業界でヒットチャートを賑わせているのが、Calvin Harris(カルヴィン・ハリス)やAvicii(アヴィーチー)などのDJ。アメリカだけでなく、ヨーロッパでも大人気です。DJというと古くはラジオのディスクジョッキー、少し前はディスコやクラブの選曲者というイメージだったのですが、現代のDJはミュージシャンの曲を再構築し、それを挿入したCDをヒットさせ、巨大なスタジアムでコンサート(と言っても演奏する訳ではなく、ターンテーブルで音楽を発信する)を開催するアーティストの総称となりました。Aviciiは、ハリウッドに数百万ドルの豪邸を購入したセレブリティです。

自分から音楽を生み出す事はなく、他人の音楽を利用したDJのCDが売れている事が不思議でなりませんでした。AviciiやCalvin HarrisのCDを聞くと、オリジナル曲をアップテンポにしたり、さびの部分のリズム挿入で乗りのよい曲にし、オリジナルでは成し得なかったヒット曲に変えてしまうセンスは驚くばかりです。でもオリジナル曲を聞くと、元曲も良くなければヒットにならなかった事も分かり、それを選んだDJのセンスも理解できました。

当社のネオクラシコブランドはヨーロッパの歴史あるインテリアスタイルの家具をヒントにリデザイン(最適化)しています。今回のヘリテージシリーズもジョージアンスタイルを基本としたスタイルを現代のインテリアスタイルに合うようにリデザインしています。今回の仕事を思い返すと、AviciiやCalvin Harrisのようにオリジナル曲をそのまま使う事とは違いますが、元のデザインをモチーフに新しいデザインを生み出す事ができているように思いました。今回のヘリテージシリーズも、数世紀前のオリジナル家具よりも現代に合わせて最適化できているようにも思います。

来年1月から10月にアメリカ西海岸で取材した住宅のセミナーを予定しています。今回は新作ヘリテージのインテリアスタイルのアメリカン住宅も多く、今までとは少し違ったインテリアスタイルのセミナーになると思います。お楽しみに!
(クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

左:ウイングチェアのウィングは暖房設備が乏しい時代に冷気から首元を守り、暖炉の熱を身体に集めました。右:ジョージアンスタイルの椅子はアンドレア・パラーディオのデザインの影響を受け17世紀にアメリカに渡りました。
左:Avicii(アヴィーチー)。スウェーデン出身のDJ、音楽プロデューサー。ハリウッドに豪邸を購入した事は有名です。右:Calvin Harris(カルヴィン・ハリス)。スコットランド出身のDJ。新作アルバム『モーション』が日本含む全世界55カ国でiTunes総合アルバム・チャート1位を獲得しています。

2014.10.30 DESIGNER

今のカリフォルニアスタイル

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.37
先日、アメリカ西海岸へのインテリア取材に行ってきました。今回は新しいモダンや1950年代のヴィンテージ住宅だけでなく、1930年代のアメリカン、1920年代のアールデコ建築のロフトなど様々なインテリアスタイルを見る事ができました。場所もロサンゼルスのハリウッド、ビバリーヒルズ辺りの住宅街だけでなく、ダウンタウンや今注目のアート地区、ベニスやアボットケニー通り、サンタバーバラなど様々な地域を回ってきました。

今回は、しばらく続きそうな、カリフォルニアスタイルの今を再確認するのが目的の一つ。日本のコーヒーブームでは、恵比寿の猿田彦コーヒーや、小さなコーヒーカフェが人気です。そのブームの大元の西海岸のコーヒーショップがどのような感じになっているのかも興味あり、アート地区にあるハンサム・コーヒー・ロースターズや日本に進出したオーガニックコーヒーで人気のUrth Caffe(アースコーヒー)も現地でどんな様子かを見に行きました。

ウエストハリウッドのUrth Caffeに行くと、夜10時を過ぎようとしているのに、凄い人、、。マシンを使って入れられたコーヒは酸味と苦みが強く、スタバと変わらないなあ、、と思ってしまいました。環境に優しい、オーガニックという事で人気なのかなと、、。次の昼にアート地区のハンサム・コーヒーへ行きました。店の外壁にブルーボトルのマークが、、。ブルーボトルコーヒーのお店になっていました。ブルーボトルコーヒーはサンフランシスコ発祥でコヒー業界のアップルと言われるコーヒーショップです。中では店員が和やかにお客様と言葉を交わしながら、コーヒーを一杯ずつペーパードリップで入れています。効率は悪いのですが、苦みの少ない香りの高いコーヒーで、とても美味しく感じました。インテリアは明るく、ジーンズにエプロン。シャツを腕まくりしたスタッフは髪を短くしてキチッと分けて清潔感があり、シンプルなインテリアと、笑顔の接客は今のカリフォルニアスタイルを感じました。

カリフォルニアスタイルというと、ラフなインテリアとラフな服を着た長髪で無精髭というイメージですが、今のカリフォルニアスタイルはシンプルでナチュラルだけど、清潔感を大切にしたお店が人気です。泊っていたホテルの近くのメルローズにあるお洒落な床屋では夜9時過ぎているのに、まだ営業中。どんな髪型?と見ると短い清潔感あるカットをしています。昨日、ブルーボトルで見た店員のような髪型。清潔感が今のカリフォルニアスタイルなんですね。

いよいよ11月12日の東京から新作展示会です。今回の製品はアメリカンクラッシック。今回の展示会の見せ方やスタッフのファッションもアメリカンを意識して考えないと、、。展示会では香り高いコーヒーを入れてお待ちしています。お楽しみに!                        (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)     

ブルーボトルコーヒーはサンフランシスコ発祥でコヒー業界のアップルと言われるコーヒーショップです。中では店員が和やかにお客様と言葉を交わしながら、コーヒーを一杯ずつペーパードリップで入れています。
メルローズにある床屋さん。夜9時を過ぎようとしているのにお客様が待っています。スタッフもお客様もキチッとした髪型。なんだか格好良い。

2014.9.26 DESIGNER

図面に書けない物

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.36
今、撮影する新製品の仕上げのために、工場で確認作業の毎日です。九州、東北の工場のため移動が長いので大変なのですが、私にとっては今が一番楽しい時期。まだ暑い工場内で職人さんの手仕事を見ながら一緒に作り上げるのは、やりがいを感じます。デザインスケッチしてる時より、実際の形ができてくる時のほうが楽しいのは作るほうが好きだからなんでしょうね。

スケッチを書いて図面化して、工場の職人さんに試作をお願いするのですが、図面に明記できない箇所が沢山あります。それは椅子やソファの張りに関係するものです。張りのステッチの入れ方、座り心地の固さ、座の張りの盛り上げ方など、、。図面を渡す時に打合せしていても、最終的に現場に行って確かめないと決まりません。特に座り心地の硬め、柔らかめ、普通と書いても、人それぞれ感じ方が違います。なんとなくとしか表現できません。もう十年以上、試作をお願いしている職人さんはそのなんとなくを感じ取って形を仕上げていきます。特にソファは木枠にウレタンを貼って形を作るので、使う材料によってまったく違う座り心地になります。

ウレタンは硬度が同じでも、比重が違う物があり、パサついた物、しっとりした物、ラバーっぽい物、ウレタンフォームのチップを固めたチップウレタンなど、いろいろな種類があります。一般的に比重が重く密度が高いほうが、価格は高いですが耐久性があります。座や背に羽毛を使うとファーストタッチは良いですが、復元性が悪く、手でクッションを叩いてほぐさないとぺったんこになります。最近では、綿や羽毛のような柔らかなタッチに近いのですが、復元力のある綿のような柔らかいスーパーソフトウレタン等があり、当社のソファでは表面に使います。

ソファなど中身の見えない製品は、同じように見えて、最初の座り心地が同じでも、長く使うと全然違ってきます。お店では中身を見る事ができないので、判断が難しいですが、座の置きクッションはファスナーを外して、中袋のファスナーを外せば中のウレタンを見る事ができます。何層になっているか、触った感じが良いかを見るだけでも、なんとなく分かります。ぜひお店でファスナーを下げて中身に触れてみて下さい。良いウレタンはきっとタッチも良く、中身の袋やウレタンのカットや張りも綺麗なはずです。

いよいよ11月の新作発表会が近づいてきました。その前に写真撮影をしなくては、、。今回も面白い場所で撮影したカタログができる予定です。皆さんお楽しみに。
                       (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

左上:ソファのウレタンフォームはいろいろな固さを使用します。同じ色のウレタンフォームでは一見、どれが固いのか柔らかいのか分かりません。左下、右:重りを乗せるとへこみ方で固さが違うのがわかります。
左上:ソファの背や座のカーブはウレタンフォームの重ねで形を作ります。左下:固さの違うウレタンだと同じ布カバーの中に入れても、微妙なカーブが違います。右上:背のウレタンフォームの木口にブルーの接着剤を塗布します(色は無色だと分からなくなるのでブルーに色付けしています)右下:接着剤を塗布した木口を指でつまんで丸くします。

2014.8.29 DESIGNER

立体的に見る事、見せる事

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.35
私たちの眼が顔の前に向いてついている理由は(他の動物の多くは頭の横に目がついています)、祖先が恐竜の生き残りの巨大肉食鳥を避けて、樹の上に生活するようになり、枝から枝へ飛び移るための距離感を計るために、立体的に景色が見えるように顔の前に眼球が移動したそうです。その後、寒冷化した地球で、エサ不足に陥った霊長類はエサを見つけるために、遠くまで見える視力を持つようになり、さらに目を進化させたそうです。

デザインの仕事をしていて大切な事は、いかに立体的に物の形を考えられるかです。紙に描くスケッチを陰影を付けて描くのも、完成の姿を立体的にイメージするからです。家具の三面図は平面ですが、外形線、内接線や補助線など様々な線に強弱をつけて、平面だけど立体的に見えるような描き方を心がけます。全て同じ線で描いてしまうと、のっぺりとした図面になり、図面から形が伝わってきません。職人さんが作る時に間違わないように、図面から浮き出て見える図面を描くのが、図面描きのこつで、それが死命だと、学生の頃にアルバイトしていた家具工場の設計の方に教えられた事を今でも思い出します。今は使わなくなりましたが、トレーシングペーパーで椅子の図面を描いていた頃は、鉛筆の筆圧や固さを変えながら描いていました。それも紙面の中にバランス良く描けるかも大切です。

今でもその頃のバランス感覚や表現方法が、カタログ製作や撮影等の時に本当に役に立っています。今では、パソコンを使って描くようになり、線の強弱がディスプレイ画面では見えなくなり、レイアウトも後で調整できるので、描き始めの準備をしなくてもよくなりましたが、昔はトレペに描く前に、別の紙で構想して、薄い線で下書きをして、レイアウトを確認してから実線を描きました。そうしないと実線は消しゴムで消すと白くなり、青焼きすると白く線が出てしまうので、汚い図面になるからです。また鉛筆だったので、図面が汚れないように、描いている途中でも定規を拭いたり、直接、紙に腕が当たらないように紙を置いたり、、、。本当に大変でした。そして、いかに平面の図面が立体的に見えるかを心がけ、0.5ミリ、0.3ミリのシャープペンを使い、ペンを回しながら、均一な線で強弱を付けていました。本当に手間でしたが、それが今の仕事に役だっています。

最近は、電車内で見かけるサラリーマンや子供達がしているスマホゲームや、立体的に見えない説明図(取扱い説明書もパソコンで見るようになり線が均一化したり)が多いように感じます。せっかく進化して、立体的に見る眼や立体的に考える脳を持ったので、使わないともったいないような気がします。でも、年齢を重ねて、遠近が弱くなってきた事に焦りを感じている今日この頃ですが、、。
11月発表の新作は陰影を形に表現した製品を出す予定です。お楽しみに!
PACEのサイトへ▷
                                 (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

デザインする時は未だにクロッキー帳に鉛筆でスケッチです。2ミリシャープペンを使います。今は普通の文房具屋さんに替芯と芯研機が売っていないのが困りもの、、。写真は2011年モデルのPACEのアームチェアの図面を描く前のスケッチです。フリーハンドでも以外と正確なんです。
同じ太さの線で描くと平面的な図面になります。(下の図面は全て同じ線)外形線を太く、それ以外は場所によってメリハリを付けると図面が浮かび上がります。(上の図面)写真では分かりにくいのが残念ですが、、。

2014.7.30 DESIGNER

本物のヴィンテージ

AD CORE DEVISE DESIGNER BLOG Vol.34
アメリカファッションの勢いは止まりません。最近のファッション誌のキーワードはヴィンテージ。以前も書いたのですが、本来、ヴィンテージとはワインにおいて、ぶどうの収穫から醸造を経て、瓶詰めされるまでの工程を表す言葉で、当たり年の事をさす言葉だったのですが、車や家具、オーディオだけでなくファッションの世界でもヴィンテージという言葉を使うようになりました。

エルメスのカレ(スカーフ)でヴィンテージと言われる物があります。昔の柄のリバイバルではなく、1970年代の初めまでに作られていたスカーフが本当のヴィンテージなのだそうです。70年代初めまでは日本産のシルクを使って作られており、その後は、コストの関係で中国産になり、今はブラジル産のシルクを使って作られています。日本産のシルクで作られたスカーフは品質が高く、ぬめるような手触りで、今の乾いた感じではありません。その日本製のシルクのスカーフはアメリカではヴィンテージとして高価な金額が付いて取引されているそうです。ヴィンテージと称して80年代90年代の中国産、ブラジル産のシルクを使った物が売られている事がありますのでご注意下さい。

ヴィンテージカーと言われる車があります。最近、聞いた話なのですが、フォルクスワーゲンの1950年代の車を日本からアメリカへ輸出しているそうです。少し前に流行ったワーゲンバスの50年代から60年代の物が人気なのだそうですが、数年間にアメリカから日本へ輸入されたバスが、アメリカへ戻っているそうです。エアコン無しマニュアルで運転しずらいので、乗らなくなり、眠っている車を、その車を販売した会社が、売ったお客様に電話して販売した同じ金額で引き取るという事をしてるそうで、買った金額で引き取ってくれるとあって、大体のオーナーはすぐに売ってくれるそうです。それをアメリカに持って行くと2倍~3倍の金額で売れるとあって、アメリカにどんどん帰っているそうです。

アメリカでは少し前からヴィンテージが流行っていて、流行に敏感な若者だけでなく、一般的にライフスタイルに取り入れられているようです。古い良い時代の物に価値を付けてビジネスにする商魂は凄いなと思いますが、古いものが価値あるという事で、大切に使われ、後世に残される事は良い事だと思います。骨董と同じで本物のヴィンテージを見分ける知識と目は必要ですが、、。
今度、田舎に帰った時にお洒落だった母のクローゼットを見てみようかなと思いました。エルメスのヴィンテージスカーフがあるかも。皆さんも探してみては?
                                 (クリエイティブ・ディレクター/瀬戸 昇)

エルメスのカレはフランス製ですが、使われる絹が産地によって違います。日本産は品質が良いのですが、コストで使えない事を聞きました。(写真はイメージです)
ワーゲンがアメリカで人気が再燃しています。1950年代のバスが人気だそうです。私のカルマンギアも30年前にカリフォルニアから日本へ来ました。高く売れるのはオリジナルで改造を加えていない個体だそうです。私のカルマンはエンジン、足回り全て改造しているので、価値はそんなにありません。