COLUMN

2013.9.30 DESIGN

夏の終わりと夕暮れのライブハウス。

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.16
ようやく秋めいてきた今日この頃、週末に上野のライブハウスのメンテナンスに行って参りました。JAZZを中心にライブを開催する大人の雰囲気のライブハウスです。窓際のカウンター席からは不忍池が一望できます。椅子を納品してから10年近く経つでしょうか、僕が補修に来るのも4度目になります。

JAZZといってもそこはライブハウス、ノリのいい曲ではそれなりの負荷が掛かるのでしょう、随所にゆるみが生じています。一度バラして交換が必要なパーツは交換し、椅子の奥にたまったほこりを取り除いて、しっかりくみ上げます。すり減った脚先のパーツも交換。張り地や木部にはかなり使い込まれた感はありますが、定期的にメンテナンスしているのでまだまだしっかりしています。依頼をいただいた椅子以外も、全品チェックしてゆるみのあるものはメンテナンスを施しました。ライブハウスのステージをお借りして作業を進めたのですが、照明がスポットライトしかなく手元が暗くて意外に時間が掛かってしまいました。作業終了後、お店のマスターとお話ししたのですが、「このお店に椅子を納品した現在イタリア在住の元担当者が、知人がライブに出演するためお店にやってきた」なんてお話も伺いました。長いおつきあいになるので色んなご縁があります。

お店を出るのと入れ違いに今日の出演者がリハーサルのためご来店。若い女性の方にマスターが「今日の演奏は〜さんだから大丈夫!」なんて声を掛けていました。きっと素敵なライブになるんでしょうね。外に出るとすっかり日が暮れて、不忍池からきれいな夕焼けが見えました。
(エーディコア・ディバイズ 企画開発/武田伸郎)

ステージ上でスポットライトを浴びながらメンテナンス中のFESTA。
夏の終わりの夕焼けです。

2013.8.28 DESIGN

お店の椅子が気になります。

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.15
職業柄、店舗やお店に入った時に店内の家具や調度品が気になる事があります。中でも椅子はデザインや座り心地など特に気になるアイテム。デザインはもちろんですが、座り心地やお店の内装や雰囲気にマッチしているかどうかも大切ですよね。

先日、河口湖近辺の「ほうとう」のお店に行った時の事。「ほうとう」がメインメニューの老舗店で、店舗はいくつかあるのですが僕が入ったのは最近オープンした新しいお店。不思議な外観で真夏の暑い最中でしたが、お店はとても繁盛していました。外観も目を引きますが、店内で気になったのが使われている椅子です。一つは曲線を活かした黒いスチールパイプの椅子。スチールパイプとソリッドの木材を削り込んで組んだ椅子ですが、木の椅子にありがちな固い当りが無く座り心地も良好で溶接もきれいです。もう一つが、針葉樹のフレームに「い草」の座面を使用したハイバックベンチ。そぼくなハンドメイドっぽいベンチに見えますが非常に精緻に作られていました。

針葉樹は手触りが柔らいのですが、素材自体も柔らかく伸縮も大きいので細かい加工には向かない強度を出し難い材料です。あまり家具には針葉樹を使いません。巷にある針葉樹の椅子等は大工さんが作ったような粗い作りになりがちです。強度を出すためにごつい部材を使って金物や木ネジ、補強材をふんだんに使って強度を出す方法を取ります。しかしこのお店のベンチは、ミニマムな部材を使い、いたってシンプルで金物等が露出しているところがありません。仕口もきれいです。デザインは素朴ですが、角度や曲線を用い脚部には細い挽きモノ(棒状の部材)まで使っています。よく見てさらに驚いたのですが、背の曲線状の格子パーツが成型合板でした。このベンチ用に型を作ってプレスしたのでしょうか・・・。座り心地も良く、シンプルな構造で軽量なので耐久性もあると思いました。

最近は飲食店で使われる椅子やテーブルのコストも厳しい場合が多くなり、家具のセレクトも悩ましいところです。でも、今回のお店のように特に高級でもなくグレード(お値段?)の高いお店でなくても、椅子や家具に時間とコストを掛けているお店があるんですね。これからも、気になるお店や家具の情報を見つけたら皆様にご紹介したいと思います。
(エーディコア・ディバイズ 企画開発/武田伸郎)

お店で使われていたハイバックのベンチとスチールパイプの椅子。
不思議な外観(他のお店は田舎屋風の店舗です)と、名物のほうとうです。

2013.7.30 DESIGN

イメージを伝える難しさ

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.14
あるイメージを第三者に伝える事って難しい時がありますよね。それは形だったり固さだったり、匂いだったりもします。身の回りにある、例えば誰でも知っているモノを参考に伝えたとしてもそれを具体的に具現化することが非常に難しい時があります。

先日試作を進めていた「鉄の色」で、大変な苦労をしました。イメージは塗装によって鉄の素材感が消えてしまわない色。それは亜鉛メッキの電柱だったりロートアイアンの門扉だったり、ヴィンテージ風のメッキ仕上げだったり。スチール加工を請け負う工場の方にも、塗装屋さんにもなかなか分かってもらえません。自分自身のイメージがぶれていてキチンと伝えられないのです。そんな状態ですから、第三者に何とかして伝えるためには「これ!!」と、そのものズバリを提示しないといけない訳ですが、そういうものが中々有りません。そこでディレクターの瀬戸から出た案が「プラモデルの塗料」。子供の頃、戦車や戦闘機を塗ってたいわいる「ガンメタ色」です。グレーの濃淡の中にも、何ともいえない鉄の質感が感じられるあの色です。プラモデルの塗料を買い込み、いくつかのバリエーションをサンプルに塗り込んで検証しました。捌け塗りしたそのサンプルは、塗装の見本帳にはない何ともいえない表情がありました。後日、そのサンプルを塗装屋さんに伝えて、試作を仕上げてもらいました。

何事も、様々なイメージを駆使して試してみない事にはありきたりのものしか出来ませんよね。試作品は、刷毛塗りの質感溢れるガンメタ仕上げとはいきませんでしたが、有り体の工業用の塗装サンプルとは違った仕上りになったと思います。
(エーディコア・ディバイズ 企画開発/武田伸郎)

懐かしのプラモデル塗料。昔とちょっと匂いが違います。
鉄色塗装、あれこれ。

2013.7.11 DESIGN

昨今のフィットネス事情 

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.13
仕事やプライベート、国内外問わずあちこちにお伺いする機会があります。宿泊でホテルを利用することも多いのですが、最近のホテルには例外無くフィットネスジムが設けてあります。先日撮影の視察でLAに出張して来たのですが、利用したホテルにもまさに最新鋭の器具を完備したフィットネスジムがありました。広さも台数も十分、いたせりつくせりの設備です。せっかくなので(?)滞在中に利用したのですが、他に利用する人が全くいません。LAといえばフィットネスに熱心な街の印象があるのですが、ホテルに滞在している人は他の土地から来たそんな意識もない人々?と思えなくもないのですが。でも、僕がここのところ利用したどのホテルでもジムを利用する人を見たことがないので、お国柄でもなさそうです。

今回の視察でLAの邸宅をいくつか見て来ましたが、自宅にもフィットネスルームを設けている物件が増えて来ました。某ハリウッド俳優のマネージャーをしているオーナーの家には、立派なマシーンがそろった部屋がありました。当人はぽっちゃりかわいらしい(?)体型で、とても鍛えているようには見えませんでしたが・・・。

以前、LAの邸宅には「これでもか!」という立派な設備を持ったキッチンが必須でありステータスだと聞きました。しかし、そういうお宅では料理をする事がほとんど無く、最高のキッチン設備を使う事もないのだとか。
昨今のホテルや邸宅のフィットネス設備は「備えてある事がステータス」のために設けられているのでしょうか・・・。(ビジネスとしては成り立つんでしょうね)確かに、せっかくの旅行やバカンスにわざわざ一生懸命汗をかく必要ないもんね・・・などと思いつつ、せっせとトレッドミルを走ってまいりました。
(エーディコア・ディバイズ 企画開発/武田伸郎)

ホテルに完備された無人のフィットネスルームと最新鋭のマシーン。一人でいると怖くなって思わず振り返ったりして・・・。
某ハリウッド俳優のマネージャー邸のフィットネスルーム。

2013.6.26 DESIGN

ロサンゼルス視察とミュージシャン接近遭遇

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.12
先週、撮影のロケーション視察にロサンゼルスに行って来ました。日差しは強烈ですが、空気が乾燥しているので風が心地良くとてもさわやか。視察は2日間、西海岸のエリアをめい一杯回って来ました。

初日の視察、2件目に訪問した物件での事。ビバリーヒルズからほど近いエッジモンドのミッドセンチュリー建築。ちょっとケーススタディハウスのコーニック邸に似た佇まい。ガラス張りの住宅からオーナーらしき男性が出迎えてくれました。ブロンドの長髪にTシャツ&ショートパンツの出で立ちで、いかにもLAっぽいスタイル。とっても気さくな感じでお招きいただきました。

メインのリビングにはスタンウェイのピアノにドラムセット。ギタースタンドに掛けたギターやハードケースがところ狭しと置いてあり、タダものではない事が分かります。オーナー曰く、自分はミュージシャンで武道館でも演奏した事があり、「マルーン5」のメンバーだというのです。マルーン5?!といえば、世界的なロックバンド。(その時は詳しくは知らなかったのですが「マルーン5」はLAの5人組みロックバンド。デビューアルバムを1.000万枚売り上げグラミーも獲得。最新アルバムもビルボード、全英チャート共初登場2位のヒットを記録している人気バンドです)

僕がギター好きと分かると、ケースの中のギターを見せてくれたり、年式を説明してくれたり、なんと目の前で演奏もしてくれました。ギターはワインのように年式によってすごく価値が上がるのですが、劣化やキズ、補修されたものが多く、コンディションの良いモノはとても貴重で恐ろしく高い金額で取引されます。ちなみに部屋のスタンドに掛けてある赤いES-355。オーナー曰く「これは1961年製」と言うのですが新品同様。61年製のES-355といえば最も価値が高い年式のモデル。もちろん目にするのは初めて。恐る恐る触ってみると「弾いてみな!」と、アンプにつないだそのギターを弾かせてくれました。その後もベッドルームのケースに収められた53年製のテレキャスターや、59年のES-355!!も見せてくれました。ミュージシャンは気難しく神経質で、ましてやギタリストは自分の楽器を他人に触られたくないもの。それも、価値あるヴィンテージ品ならなおさらです。それを見ず知らずの日本人に、見せるばかりか弾かせてくれるなんて!!いやはや感動しました。

オーナー曰く「君たちの撮影予定の9月なら、ライブツアーで楽器を持ち出しているから撮影は問題無いよ」と言ってくれたのですが、僕のカメラには建物やインテリアの画像がほとんど無く、ギターの画像ばかり・・・。恐らく撮影にお借りする事はないと思いますが、良い記念に(?)なりました。ありがとう、James!
(エーディコア・ディバイズ 企画開発/武田伸郎)

1961年製 ギブソンES-355