COLUMN

2024.1.28 DESIGN

国内の杉や檜を活用すること

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.141
エーディコア・ディバイズでは、受注いただいた製品を全て国内で生産し皆様にお届けしてきました。「無駄なものは作らない」「納得いただけるものを永くお使いいただきたい」という理念から、まだ環境保全の意識が高まっていない1985年から製品作りを続けてきました。2022年からはSDGsの対策から製品の梱包材を見直しリサイクル可能な資材に全て変更するなど環境に配慮したモノ作りを進めています。昨年発表した2024年モデルでは、製品の資材にまでこだわり椅子やソファのクッション材にリサイクルされたリボンテッドフォームを使用、ソファの構造材には国産材の針葉樹合板を100%使用しました。

2020年頃から発生したウッドショック。米国の住宅需要の急増や中国での資材買占め、数年後にはコロナ渦での世界的な輸送停滞から深刻な状態になりました。国内の住宅、建設関連からあらゆる業態に広がり家具業界にも大きな影響が出ました。国内の木製家具の材料は、ほぼ100%輸入材に頼っていて合板などの副資材も市場に出回らなくなりました。価格度外視で資材を見つけたら買い占める極端な対応も見受けられました。そんな中、注目されてきたのが国産材の杉や檜などの針葉樹です。旧くから日本家屋の建材として使われてきた杉や檜ですが、近年は在来工法の住宅が減り建築としての使われることがほとんどなくなりました。高度成長期に国策で植林した杉などの活用法は、20年以上前から取組んでいましたがコストの兼ね合いなどから定着しませんでした。そんな中、ウッドショックで価格高騰と供給が不安定な輸入資材に変わる資材として、「国産針葉樹合板」の活用が見直されてきました。安定した資材供給を求める住宅メーカーやデベロッパーが国産針葉樹合板を使用し始めたことも市場が広がる要因になったようです。

当社デザイナーの瀬戸も、表面材は難しくとも構造材として国産材が使えないか以前から検討し提案をしてきました。まだ家具業界では使用しているところは皆無「杉や檜の針葉樹は弱い」という認識から工場の抵抗もありました。しかし、一昨年の2023年モデルで国産針葉樹合板の構造材への使用を決め、製品化を進めました。生産工場の納得を得るため、構造上負荷がかかる箇所には従来の材料を使用する構造で、ソファ全体の80%に国産針葉樹合板を使用しました。そして2024年モデルでは、ソファの構造材を100%針葉樹合板を用いた製品を開発しました。デザインするにあたり針葉樹合板がどのように生産されているのか、地産地消を実践する九州の針葉樹合板の生産工場を視察してきました。広大な敷地に木材加工工場とは思えないほどクリーンに管理され、これ以上ないほど環境に配慮した素晴らしい工場でした。生産されている資材も資源を出来るだけ無駄にしないバランスが取れた材料で「これからはもっと活用すべき国産資材」の思いを強くしました。

2024年モデル制作過程で、生産工場内でも「針葉樹は弱くて使えない」という印象が払拭されています。実際使用してみて、輸入合板と比較しても軽量で歪みも少なく懸念していた固定金物の効きも充分あると実感しています。新作展示会にご来場いただいた方はご覧いただいたと思いますが MD-3211ソファの構造体は、全て国産針葉樹合板。軽量ですがしっかりした構造です。12ミリ厚の合板については、既存のソファ製品についても全て針葉樹合板に切り替えています。生産している針葉樹合板の厚みが限られているため採用アイテムが限られていますが、厚みのバリエーションが増えた段階で順次針葉樹合板へ変更していく予定です。エーディコア・ディバイズでは、国産材の使用、環境に配慮した資材の採用と製品作りを、さらに進めていく予定です。(開発 武田伸郎)

2024モデルのソファ MD-3211 画像左が100%国産針葉樹合板を使用したフレーム構造。非常に軽量ですがしっかりしています。背の外周に貼っているのは国産再生紙のラミー材。座面のSバネスプリングも国産材料です。右がMD-3211 ソファの仕上がり画像です。
左上:厚さ12ミリ、九州の国産材を使用した針葉樹合板。強度を上げるため表面材には檜材を用います。フレーム形状に切り出しても捩れや歪みが少ない材料です。左下:強度や取り都合を検討し、適材適所に針葉樹合板を使用します。右上:九州の針葉樹合板工場の貯木場。工場からおよそ100kmエリア内で伐採した材料、合板にした材料は九州エリアに流通します。右下:建材では使いにくい太径木も無駄のないように材料として使用します。

2023.12.26 DESIGN

家具を作ることの難しさ

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.140
2023年のスタートは新型コロナ感染がはじまって3年が経過し、ようやく収束の目処が見えてきたところでした。昨年末も暖冬から一転、記録的な積雪でしたから、ちょうど今の状況と同じような天候だったんですね。あっという間の1年でしたが、さまざまな出来事がありました。皆さんにとって今年はどんな一年だったでしょうか。私にとっては、規格製品を異なる工場で作ることの難しさを実感した一年でとなりました。

エーディコア・ディバイズでは、製品化した家具を製品に適した工場へ生産を依頼します。当社のクオリティーを理解いただき品質をキープ出来る工場へお願いしています。生産をお願いする私たちと、家具を作り上げる工場とでお互いに信頼し合える関係が築けるところになるのでたくさんあるわけではありません。椅子・脚モノを中心にお願いしている山形の工場と、ソファ・テーブルは九州大分県の日田市にある工場に生産をお願いしています。ところが今年の7月、山形の工場で火災が発生してしまい生産が出来なくなってしまいました。ブランド発足から長い間生産していただいてた工場が、突然モノが作れなくなってしまった緊急事態です。火災の被害は思いのほか深刻で復旧の目処が立たない状況で、一刻も早く当社の家具の生産移行をする必要に迫られました。生産の優先順位とアイテムの精査、図面の準備から仕様指示書の確認をし生産をお願いできそうな工場を当たりました。当社でデザイン、開発した製品、家具として生産が流れているモノです。仕様も注意点もわかっているのですから、工場の設備が整っていれば基本的には生産移行が出来ると考えていました。しかし大変だとは覚悟していましたが生産移行は想像以上に困難な作業でした。

現在お願いしている工場以外で、生産をお願いできそうな可能性のある工場をあたりました。しかし、国内で家具の生産工場がどんどん減少していく中、生産キャパに余裕がある工場はほとんどありません。「生産が落ち着いたら」「状況が整ったら」といった回答もありましたが、受けていただける工場もありました。「自社のレベルアップのためにも是非」「生産前提で前向きに進めます」など、快諾いただいた工場にはすぐに訪問して打ち合わせを行いました。できるだけ移行がスムーズに進むよう、ブランドのコンセプトから生産の流れ、製品の資料をお渡しして準備を進めたのですが・・・全く思うようには進みませんでした。製品化されているとは言っても、他の工場で新しく作るとなると一から新製品を開発するの同じくらい労力を要します。製作仕様書があればそのまま作れば手間暇省けるだろうと考えてしまいますが、設備や各工場の「やり方」があるので、逆に仕様書に縛られて進まなかったりコストが余計かかってしまう、ということは後になってから気がつきました。当社のブランドコンセプトでもある「どこにでもあるようでどこにもない家具」普通に見える家具でも、仕口や構造が難しいためなのか「当社では対応出来かねます」と、途中でお断りされるケースもありました。私たちには当然のクオリティーでも他の工場からすると「かなり難しい」という声もたくさんありました。資材入手や突板の張り分け加工なども問題で、今までは当たり前に思っていた様々なことが難しくなってきているのだと思います。

暑さ厳しい真夏から何度も工場へお伺いし、皆様からご協力いただきながら19アイテムの生産移行を開始することができました。生産ラインが軌道に乗るまではまだ確認が必要ですが、他の製品も引き続き作業を進めてまいります。今年はいろんな工場の方にお話をお聞きする機会があり、モノ作りの現場で感じている難しさに色々と思うこともありました。来年はそんな取り組みにも向き合っていきたいと思います。(開発 武田伸郎)

左上:詳細な図面や制作仕様書があってもその通り作れる訳ではありません。特殊ですが非常に安定した構造のMD-1202脚部固定 左下:試作で製作したMD-1202M。しっかり安定しています。 右上:データを活用して試作を繰り返し、構造と精度を上げていきます。 右下:仕様・加工が決まったら必要な資材を準備します。ここまで出来ないと受注できません。
左上:今回特に苦労したのが突板の張り分け加工。画像はMD-1302の丸天板のテストピース。小口に廻す無垢材はこのように接着して加工します。 左下:上の丸天板を加工仕上げした試作天板 右上:生産移行したAD COREのAD-015 ZONAソファ 右下:試作品を前に工場のスタッフの方とディスカッション。それぞれの工場のやり方や進め方があり、双方で理解しながら進めていきます。

2023.11.30 DESIGN

2024 MODEL 製品撮影記

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.139

11月の某日某所、今年も新製品の撮影を行いました。例年よりも約一ヶ月遅い時期の撮影となりましたが、ご存じのとおり猛暑から続いている暖かい気候のおかげで寒さに耐えることのない撮影ができました。今年は製品カットのスタジオ撮影と、2年ぶりに場所をレンタルしてロケーション撮影を行いました。撮影ギリギリまで製品の仕上がり確認を行なっていたのですが、出来立てホヤホヤの新製品がチャーター便のトラックに乗って撮影当日の早朝にスタジオに到着。2024年の新製品の撮影をスタートしました。

このところ利用している神奈川の撮影スタジオは、トラックがスタジオの入り口まで着けることができる利便性の良いスタジオです。スタジオが建物の奥だったりエレベーターでの移動があったりするとそれだけで大仕事になり時間を取られてしまいます。このスタジオはバックヤードも広いので、家具の撮影ではとても助かります。今年はスタジオ撮影を1日しか取っていないので、撮影カット数からすると時間との勝負です。製品の開梱から製品の設置、アングル決めの製品移動をしながら全員協力体制で粛々と撮影を進めていきます。ここ最近の手順として、瀬戸はメインの撮影以外の、製品のディテールカットの撮影を行います。その数なんと15カット。メインの撮影ディレクションを行いながら、手持ちのカメラで撮影です。メインの撮影では、スタート直後のセッティングに時間がかかりましたが、イメージ設定を決めてからは怒涛の進行。撮影終了後の梱包時間まで含めても撤収時間前に余裕で終了!!こんなに早く終わったのは記憶にありません。撮影終了後にトラックに製品を積み込み、明日は勝負のロケ撮影です。

新型コロナ感染の影響もあり、ロサンゼルスでの製品撮影は一旦終了しているので、今回も国内でのロケ撮影になります。LAでは、実際お住まいになっている住宅をお借りしてリアルなインテリア空間での撮影を行ってきましたが、日本ではそのような物件がなく、ほとんどが撮影用に建てられたハウススタジオでの撮影になります。そんな作られた空間が嫌でロサンゼルスでの撮影をはじめたので、国内での撮影場所探しも強力です。コーディネーターも見つけられないようなどこにも情報が出ていない物件を瀬戸が探し出してきました。「こんなところにこんな物件があったのか・・・」ロサンゼルスやベバリーヒルズの邸宅にも引けを取らない素晴らしい物件です。ここでも18カットを撮影するというかなり厳しい計画にもと、製品搬入から建物の養生作業、既存の家具の移動と全て同時進行で進めていきました。とても広い空間と高い天井高、でも一番苦労したのが居住エリアをつなぐ廊下や階段が非常に狭いこと。ソファやテーブルも分解して運び込みました。お使いになっている家具も素晴らしいものでしたが重量も最高級!ダイニングテーブルは8人掛かりで移動しました。完全撤収の時間もありますが、陽が落ちてしまっては撮影ができません。時間との勝負でしたがここでも一気に追い込んで、予定通り撮影を終えることができました。

いくつかアクシデントもありましたが、皆さんの協力のもと事故もなく無事撮影を終えることができました。ロケでお借りしたオーナーの方にも協力的にご対応いただき本当に感謝です。(LAの撮影では、オーナーの方には散々苦労してきたので)秋の夕暮れ、製品の積み込みも終わり、クリーニングもしっかり終えて、お借りした撮影現場を後にしました。今年の新作展示会は12月6日からスタートです。今回撮影した画像は、展示会でお配りする大判のタブロイドカタログで是非ご覧ください。(開発 武田伸郎)

左上下:昔はカメラのファインダーやポラロイドで撮影の画像を確認していましたが、今はPCのモニターでチェックします 右上:製品のディティールや説明カットは瀬戸のカメラで撮影しています 右下:撮影スタジオ風景。モノの開梱や移動を段取りよく進めながら計画通りに撮影を進めます
ロケーション撮影は時間との勝負。撮影のデレクションをしながら瀬戸はイメージカットも撮っていきます

2023.10.30 DESIGN

アメリカの街に迷い込んだような風景

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.138

先日、家具のメンテナンス作業のため東京都の立川へ行ってまいりました。多摩エリアの中心的存在の立川市は、大型の複合施設や人気のスポットが続々オープンしている一大商業地として発展している街として知られていますが、立川といえば広大な敷地に広がる昭和記念公園があります。昭和天皇御在位50年記念事業の一環として整備された、総面積180haにもおよぶ広大な国営公園で、春夏秋冬いつ行っても季節の花が私たちを楽しませてくれる緑豊かな施設です。この自然豊かな昭和記念公園に隣接して、異国情緒にあふれた住宅エリアがあります。手入れの行き届いた芝生の庭に、白い平屋建ての瀟洒な家々が整然と並んでいます。今回お伺いしたのが、米軍基地の住宅地があった「アメリカン・ヴィレッジ」です。

国営昭和記念公園は、米軍の立川飛行場跡地につくられた都心部最大級の公園で、東京ドーム35個分の広さを誇ります。開放的な芝生広場の「みんなの原っぱ」だけで東京ドームが2つ入るほどの広さがあるそうです。最近では新春に開催される箱根駅伝の熾烈な予選会が行われる場所としても知られています。そんな昭和記念公園に寄り添うように広がっているのが「アメリカン・ヴィレッジ」。初めて訪れた場所だったのですが、晴れ渡った秋晴れの空の下、昭和記念公園の豊かな緑を背景に綺麗に刈られた芝生と白いフェンスと白い壁。平屋建ての家が立ち並ぶ風景はどこかアメリカの住宅地に迷い込んだような錯覚に陥ってしまいそうでした。このエリアは、居住者以外に車の乗り入れができないなどしっかり管理された地域とのこと、こんなに気持ちのいいところなら賃貸の空きがほとんど出ないのも納得です。

今回、この「アメリカン・ヴィレッジ」を管理している事務所棟のエントランスロビーにエーディコア・ディバイズの家具を納品させていただきました。エントランスロビーは、薪ストーブが設置された素敵な空間なのですが、元々置かれていた家具がクロームメッキのパイプ仕様の椅子と樹脂製の白い天板のテーブルでした。このスペースにお使いいただいたのが、クラシックなテイストを現代風にアレンジしたネオクラシコシリーズのNC-026ソファとNC-023ラウンジチェアです。シャープでソリッドな木部のフレームと、くるみボタンで柔らかなカーブを表現したソファシリーズは、どこか懐かしい街並みのこの建物にぴったりです。座面のウェーブスプリングとポケットコイルのダブルのクッションは、しっかりと身体を支えながらゆったりとした座り心地を感じていただけます。リビングテーブルは、天板側面に面取りを施したスクェアなフォルムに、天板下に棚板を設けた使いやすいNC-024テーブルを組み合わせました。ネオクラシコシリーズのリビングセットを置くことによって管理事務所の雰囲気が、優しく落ち着いた雰囲気になったような気がします。メンテナンス作業が終わり、帰路につく通りを歩いていると、ブロンドのショートカットの男性が白いTシャツ姿で犬の散歩をしていました。そんな風景を眺めていると日本じゃない場所にいるような気分になってしまいました。

今年は秋の訪れも少し遅いようで、気持ちのいい秋本番はこれからのようです。エーディコア・ディバイズで年に一度開催しているセールも、今年はいつもより少し遅れて開催しています。ネオクラシコシリーズの展示もしていますので、秋の夜長にゆっくりとくつろげる家具を探しにぜひご来場ください。今年のセールは11月の18日まで、WEBストアでも同時開催していますのでぜひご覧ください。(開発 武田伸郎)

木々の葉が少しだけ色づき始めた爽やかな秋晴れの空、白い平屋建築の住宅と緑の芝生。舗装道路の側溝の傾斜や、低い縁石の印象だけでアメリカの住宅地にいるような気分になってしまいます。
左上:周りの住宅と異なり、アメリカンヴィレッジの管理棟はベージュの建物 左下:真っ青な空に白い建物が映えます。この日も1棟の住宅をリノベーションを施していました。 右:管理棟の待合ロビーにセットされたネオクラシコシリーズのソファセット。モダナイズされたクラシカルなデザインがアメリカン住宅のインテリアに溶け込んでいます。

2023.9.27 DESIGN

新製品開発、進めています

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.137
本当に秋が訪れるのかな・・・と思ってしまうほど今年の夏は長く厳しい暑い日が続いていましたが、最近になってようやく秋の気配を感じられる日が来るようになりました。エーディコア・ディバイズでは、毎年秋に新製品の発表展示会を開催していますが、今年も晩秋の時期に新作展示会を計画しています。秋の気配が深まった頃には正式なご案内ができると思いますのでもうしばらくお待ちください。春先から進めていた2024年モデルの新製品開発、記録的な猛暑の中でも粛々と進めていました。

エーディコア・ディバイズの製品開発のスタートは、ストーリー作りから始まります。モノの形やデザインを考えるのではなく、まずはじめに製品が生まれるためのコンセプトとストーリーを紡いでいきます。クリエイティブ・ディレクターの瀬戸が、四六時中張り巡らせているアンテナで得た情報を、あらゆる角度から分析してその年の製品コンセプトを立ち上げます。言葉にすると固すぎるビジネスワードのような印象になってしまいますが、ここでいう情報とは、日々生活している中で生まれるとても広範囲な情報のことです。TVや映画、音楽のようなエンターテイメントの要素から、食やファッションの流行、大袈裟ですが世界情勢や国内の景気動向なども含まれます。インテリアには関係のなさそうな情報でも、実はとても密接に関係しています。物を生産して販売するわけですが、経済評論家のようにマーケット分析で売れる製品を提案するのではなく、あくまでデザイナーの視点で、今の状況を見据えながら、どんな物語を皆さんにお伝えするのか、そこから新しい製品が生まれてきます。

当社では30年以上にわたり家具をお届けして来ましたが、時代によってそのストーリーは様々です。国内景気に沸いた時代にはモダンでエッジの効いたイタリアンデザインをAD CORE流に、開放的なナチュラル嗜好の時代にはA-modeを、その時々の時代性に合わせた製品をストーリーにして皆さんに提案してきました。そして今、最も重要視しているファクターが、環境に配慮した製品作りです。エーディコア・ディバイズではブランド発足当時から意識してきたコンセプトですが、カーボンフリーやSDGs、サスティナブルの取り組みが当たり前の現在、当社ではまだ家具の業界では進んでいない環境に配慮した資材使用を進めています。今年の新製品ではさらにその取り組みを進めています。

当社のモノ作りのバックボーンをご紹介してきましたが、エーディコア・ディバイズの製品がコンセプトで理論武装しただけのモノではありません。製品のストーリー以上に大切にしていることが、製品の美しさ、使い心地の良さです。製品開発はストーリー作りから始まりますが、製品デザインはドローイングブックとフリーハンドの鉛筆の線からスタートします。手描きのその鉛筆のラインは抽象的なドローイングから徐々に家具の形が現れ、手描きの最終形ではストーリーから紡ぎ出された家具のスケッチが完成します。このスケッチを元にCADによる図面データ制作を分担して進めていくのですが、このスケッチの段階でほぼ100%(?)デザインが完成されています。曲線もフリーハンドで勢いよく描かれたラインですが、図面に起こし他データと比較するとピッタリと合致します。まだみなさんにお見せできないのですが、ドローイングのスケッチから立ち上がった製品試作が徐々に出来つつあります。クッションの選択やファブリックなどのセレクトもほぼ固まってきました。新作展示会で皆様に見ていただけるまで、これから急ピッチで製品作りを進めていきます。秋の新作展示会まで、もうしばらくお待ちください。(開発 武田伸郎)

新製品の開発は、見た目や意匠的なデザインも重要ですが、使い心地を決定する素材選び、適材適所にどんな資材を用いるかも同じくらい重要です。開発にあたっては資材の組み合わせも大切になります。
左上:完成した新作の図面をもとに真夏にスタートした新製品試作制作。工場の開発スタッフの方と打ち合わせをしながらイメージを合わせていきます。左下:全体の構成、構造を検討していきます。右上:どんな素材をどのように組み合わせるか。クッション材に用いるウレタン素材は座り心地や耐久性、形状を綺麗に形作るために吟味を重ねます。右下:これまでなかった素材使いも色々と検討します。これまでは捨ててしまう素材でも利用できないか検討しています。