COLUMN

2024.12.26 DESIGNER

視覚から物理的感覚へ

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.163
2024年も終わろうとしています。皆さまにとってどのような一年だったでしょうか。私自身は新六本木本社オープニングも終わりほっとしています。毎年、年末に今年が一番忙しかったと思うのですが、今年もその年になりました。また、人間は何歳になっても成長する事を今年も感じる事ができ、生きている実感を感じました。オープニングイベントで新六本木ショールームへ来られた方に、こんなに広いと思っていなかった、、。こんな良い場所が六本木駅のすぐ近くにあるとは、、。ここまでのショールームと思っていなかった、、。と、驚きの感想が聞かれました。日頃、協力いただいている取引会社の方々にも驚かれたので、当社は普段からどんな風に思われてたのか心配と嬉しさが混在した気持ちになりました。

新六本木ショールームではプロユーザーのために、ニュートラルな空間を目指し、作り込みしすぎない空間に抑え、ダイニングシーン、リビングシーンを他の製品に左右されず見る事を考えたショールームです。シンプルな空間の中でも見る方の想像で空間を感じていただけるかなと思います。こだわったのは製品を引きで見る事です。アメリカ西海岸でカタログ撮影のロケハンする際に重要な事は撮影に必要な引きです。引いて製品を見る空間にこだわりました。今はなかなかショールームに来場するお客様が少なくなり、画像だけで判断されて決まる物件が多くなっています。タブレットやスマホでもホームページ画面からは製品の表面を見ていただけますが、実際に座った感覚や座った姿を感じる事はできません。私自身は物を選ぶ時に画像だけでなく、実際に手で触れたり身体に感じる感覚や香りも大切にしたいと思っていまます。

先日、愛車を点検に出したのですが代車がタッチセンサーだらけの車でした。私の車は一世代前で物理的ボタンとタッチパネルの混合ですが、最新の代車はセンターの大きなディスプレイモニターとハンドルに付いている操作ボタンも全てタッチセンサーで、何を触っていいのかすぐには理解できず、ラジオも付ける事ができませんでした。サンルーフの開閉もスライド式のセンサー、音楽の音量も指を滑らせるセンサー式で、運転しながらの微妙な調整が出来ません。なによりラジオのチャンネルを変えるにもラジオ画面を呼び出して、画面を見ながら触らないと変えられません。エアコンの調整も同じで、、五感の触覚や感覚が役立ちません。

最近はスマホのようにタッチパネルで操作する事が多くなっているので、その操作に慣れている人はいいのかもしれませんが、慣れない初めての車で視線を前後に集中しながらの運転が、パネルに触るために目線を外さないと操作ができないのは感心しません。運転しながらエアコン下げたり上げたりするのは普通の事で、道路のうねりや段差で揺れる車内でタッチセンサーを上手く操作ができません。助手席の人に操作してもらうなら別ですが。代車を運転しながらこんな車には乗り換えたくないな、、と思いながら運転していました。ふと考えたのはこの車は何年持つのだろう?スマホでも10年使える物はないし。パソコンも5年程度で買い替えないと故障が頻発します。半導体センサー満載のタッチ系の操作盤の寿命は短いんだろうなと思いました。

自動車ではヨーロッパの高級車から、デジタルタッチパネルから手動の物理スイッチへの回帰が始まっています。私が所有している1962年製のカルマンギアは今年で62歳の私と同じ年齢ですが、必要パーツを交換しながら今でも元気に走る事ができます。それは半導体など電子系のパーツが一つもついていない全てが物理的な機械だからです。機械式時計はメンテナンスしながら一生使えますが、機械式の物は高級な趣向品になりつつあります。時計でいえば、1970年台デザインのデジタル液晶の物が若者に人気になっているようですが、私も若い時に液晶腕時計を使った事がありましたが、液晶の寿命が10年程度で文字が消えて使えなくなりました。スマホと同じ消耗品として使うなら良いのですが、長く使う事を思うとメンテナンスのしやすさや簡素な構造が大切です。

新ショールームでは新しい照明システムと合わせ、中庭の光を感じていただける空間です。歩きながら五感で当社の家具を感じていただると思います。そのショールームで休止していたセミナーを再開します。コロナ禍で4年間ウェブセミナーをしていましたが、お客様への一方通行だけの配信で私自身も反応が感じられないセミナーでした。新六本木ショールームではセミナー用の新しい高解像度のプロジェクターも備えていますので、大画面でリアルな空気感も感じていただけると思います。新ショールームにまだ来場されていない方は、この機会のぜひお越しくださいませ。2025年が皆様にとって良い年になりますように。
(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

上:メルセデスベンツEQSの運転席。全てがタッチセンサーで物理的スイッチは一つもありません。ハンドルのボタンに見える物もタッチセンサーでラジオのボリュームを調整するにも慣れが必要で少しの上げ下げができません。左下:今、話題のイーロン・マスクの率いるアメリカの電気自動車、テスラ3の運転席。タブレットのようなタッチパネルが一枚あるだけで、全ての操作はこのパネルだけで行います。本当に味気ないインテリアで、車はPCと同じ電気製品との考えでしょうか。右下:1962年式のカルマンギア。半導体は一個も使われていない車で、ノブを回すか引くの物理スイッチしかありません。製造されて62年経ちますが、メンテナンスして今でも元気に走ります。
左上:芋洗坂の道から見たショールームです。みなさん中庭の向こうに見えるので、六本木駅近くにこんな空間があった事に驚かれます。右上:ショールームの通路の両脇にはダークグレーの柱にがあり部屋が両側にあります。700平米210坪の広さに皆さん驚かれます。左下:高さ2,600のW6,000のリブガラスの吊りスライド扉のミーティングルームを設けました。右下:各ブースにはリビングシーンとダイニングシーンを置きました。W6,000×D4,000のラグが敷かれます。

2024.11.30 DESIGNER

広尾から六本木へ

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.162
六本木の新本社ショールームの工事も完成間近です。7月16日に物件情報があり、9月5日に契約してからインテリア設計、10月1日からの工事開始でしたので、11月末完成が可能か本当に心配しました。多くのお客様からはこの時期にその短期間で完成までできるのは奇跡ですねと言われましたが、なんとか12月12日のオープンする事ができそうです。広尾の倍以上の面積のある六本木新本社が3ヶ月未満で完成できたのは、関係会社、工事会社、現場の職人さん達のおかげだと本当に感謝します。

1985年に創業し15年過ごした新橋から、2000年に広尾の地へ移転してからもう25年が経とうとしています。最初の新橋ショールームは太陽の光が全く入らない倉庫を改装したNYのソーホーのようなショールームでしたが、移転した広尾は一棟建てでした。うっそうとした木々に覆われた古びた建物でしたが、自然光の入る素敵なショールームになりそうな気がして移転を決意、内装設計から始めて広尾でも4ヶ月以上の時間がかかりました。デザイナーとして理想の仕事場とショールームを求め現地計測から入りインテリア設計を行いました。木漏れ日の入る仕事場は理想的で、この広尾での環境が当社の製品の創造の再出発となりました。ここでは上質さをテーマにしたネオクラシコブランドや、カリフォルニアスタイルのエーモードブランドが生まれ、自分自身のクリエイティブな部分を自然光の中で作ってきました。

移転した広尾ショールーム本社は渋谷区でしたが建物の南側に竹林があり、春には筍が生え食べる事もできました。日本でも高額な場所に生えた筍を食す機会はそうはないかと思います。一年を通して笹の葉が揺れる木漏れ日が事務所に入る日差しが心地よいオフィスで、3階までのショールームまで日陰を作ってくれていました。春は明治通りの桜並木が気持ちよく、その後には会社前の日赤通りの両側に植えられたツツジが赤い花を咲かせて閑静な住宅街に彩りを添えてくれていました。夏には会社前の大きな樹木が道路に日陰を作り会社前の花壇は緩い坂を上るお年寄りのお休み場所にもなりました。秋には植栽にある2本のマテバシイが沢山のどんぐりを道に落として、子供達が通学でどんぐり拾いをしハロウィンではお菓子をもらいにショールームを訪れました。冬のクリスマスシーズンには会社の吹き抜けに大きなツリーを飾り、外部の植栽にはイルミネーションを飾ると、前を歩く近所の方から、毎年本当に綺麗ですねと声をかけられました。

広尾では一年を通して季節の移り変わりを感じる事ができて、オフィスビルの中では感じる事のできなかった時間を与えてくれました。近所付き合いも少しずつ増え、入居時には工事車両など苦情の多かった裏のご主人でしたが、いつのまにかお中元やお歳暮のお裾分けをするようになり、エーディコアさんならいつでも前に車を停めていいぞと言われるようになりました。朝の掃除では道路掃除をしていると声をかけられるようになり、近所のとんかつ屋の女将さんからは毎朝みなさんで掃除をされてるね。本当にご苦労様と言われた事もありました。大雪の時は社員総出で、会社の前から道の上下と路地の左右まで人が歩けるように雪かきをして感謝されました。

しかし、前回のコラムでも書きましたが、20年以上経つと徐々に近所の方々も居なくなり、賃貸に変わり街の風景も変わってきてしましました。この広尾本社は自社ビルではなく賃貸です。本当は購入したかったのですが、バブルの負の遺産があり、売るに売れない事情があるという事で、ずっと賃貸のままで過ごしてきました。その広尾本社の建物も7年前に竹林が排水管を壊したという事で撤去され、南側の日陰が無くなり、近年の酷暑でエアコンが効かなくなりました。建物の老朽化もあり、見た目には本当に綺麗な状態の建物なのですが、いよいよ移転という事になりました。今、この広尾に来てから過ごした時間と懐かしさを思うと辛くなりますが、新しい六本木へいよいよ移転です。

今度の六本木は前庭があり、少しだけですが四季を感じられるような草木を植えました。ビルのオーナーや管理会社の方々も良い方ばかりで、これから新しい地で新たな出会いができるように感じています。12月12日からオープンとなります。みなさま是非おいでくださいませ。お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

新六本木本社ショールームはビルの一階ですが、前にテラスがあり自然光が優しく入ります。広さは広尾の倍の広さがあります。
2000年の春に内見した時の広尾のビル。南側に竹林が生える3階たての建物でした。その頃の社有車の初期型のメルセデスベンツのAクラスが懐かしい。

2024.10.30 DESIGNER

インテリアとつながる庭

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.161
新ショールームの工事も12月のオープンに向かって佳境を向かえています。住所は未発表なのですが看板見たよとお客様からお声をいただいています。広尾の一棟建のビルは庭付きの樹木に囲まれたショールームでしたが、新ショールームは六本木のビルの一階フロアで専用庭はありません。その為、この物件を借りるか決めかねていました。新ショールーム本社の場所はビルの中庭からアプローチを抜けて入ります。その中庭はメンテナンスのしやすさから作られた植栽でビル側の管理エリアです。しかし、せっかくのアプローチとショールームの中から見える中庭が素敵になれば良くなりそうな気がして、入居希望条件でビル中庭の手直しを当社でやらせて欲しいと申し入れました。

ビルオーナーにはビルの植栽を自前でやらせて欲しいと言うテナントは初めてと驚かれましたが、許可をいただける事になり契約となりました。12月初めにオープンなのですが10月末までが植物の根付け時期限界なので11月になる前に植栽施工を行いました。ビルの中庭は地階に駐車場がある場所なので植え込みの土はとても浅く、通路を仕切るためのプランターポットが多く使われていました。オーナーに許可いただいたレイアウトとイメージ図を基に植栽会社の方と打ち合わせをして植物選定をして工事を行いました。植栽会社の担当者はとても若い方でしたが植物が大好きな方で、作業現場でもベテランの職人さんと一緒に作業をして手際よく草木をレイアウトしていきます。最初は心配でしたが、仕事ぶりの良さから任せる事に決めて見ていました。植栽の難しさは植付けから1年以上経た姿が完成になるので、それを予想できるかで、完成した庭は今は寂しいかもしれないが、来年の春には素敵になりそうな気がする庭になりました。

私も植物に触るのが好きなので立会いながら作業を手伝ったりしていました。その日は午後から冷たい雨の降るあいにくの天気でしたが、雨具を着ていても濡れながら黙々と作業する姿の職人さんはカッコ良いな〜と思いました。プランターポットに植えられていた椿など元気が無いなと思っていたら、ネキリムシと言われるコガネムシの幼虫が沢山いて根が食べられています。土を入れ替え薬を入れながら植え付けし、シンボルツリーを支える地下主柱など入れ植え付けて、最後は雑草を取りやすくするマリチングという砂利を入れて完了。掃除が終わって最後に確認して話をしていると、依頼者が植物が好きな方だと作業者も嬉しくなりますと言われました。依頼者自ら一緒に濡れながら作業する方はいませんと、、。しばらくは毎日の水やりと枯れ葉や草の手入れは当社が行うのですが、今までの広尾ショールームではそれ以上の手入れをしていたので苦になりません。来年の初夏に向けて中庭を育てる事も楽しい時間になりそうです。

アメリカ西海岸でカタログ撮影するようになり、カリフォルニアスタイルの住宅は日本が起源で、モダン住宅に使われる大きく開かれる引き戸と庭と融合したインテリアは、日本建築からヒントをもらったシンドラーやノイトラがカリフォルニアスタイル建築として広げていった事を知りました。日本では部屋から庭を愛でるために大きく窓が開け放たれます。また、借景として風景や近隣の景色を取り入れて変化ある豊かな空間にします。取材で訪問したロサンゼルスの様々な住宅では庭と一体になったインテリアの住宅を沢山見ました。緑豊かな街並みにあるモダン建築は自己主張が強いと思われがちですが、実は他の住宅への借景になる為なのか、景色の一部になるように周りの植栽にも気を使う住宅が多いように思います。住宅の中のインテリアのしつらえも素晴らしいのですが、部屋に入ってインテリア空間から見える庭と景色と一体になった景色が素晴らしいのです。

新六本木ショールームでは展示スペースから中庭が見えます。庭とインテリアの融合が上手くいくかは窓の養生を取らないと分かりません。12月のオープン時にはまだ植栽が本来の姿にはなっていないかと思いますが、来年の初夏には素敵な景色が広がっていると思います。これから新ショールームの工事も追い込みになります。お客様にインテリアをイメージしやすいショールームに設えますので、お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左:2017年に撮影したサンタモニカに建つ1950年代に建てられた住宅。FOX TVの社長の住宅でエクレクティックスタイルのインテリアでプールが印象的でした。右:2013年に撮影したハリウッド俳優のエージェントの住宅。ネオクラシコのソファセットを撮影した部屋はプライベートな部屋で裏側です。裏庭まで丁寧な植栽が作られていました。
左上:ショールームに面した中庭です。左下:多くの草木を持ち込んで1年楽しめる植物を選んでいます。日当たりや水捌けの好みが同じ程度の草木を選ぶ事が必要です。右上:ポットに植えられた椿は根がネキリムシ(黄金虫の幼虫)にやられて弱っていました。ポット内の土を出して水捌けのよい土を作って植物を入れます。右下:雨の作業は大変です。

2024.9.30 DESIGNER

街並みの移り変わり

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.160
先日のセミナーで一番の反応があったのは最後の挨拶に発表した12月の本社ショールーム移転の事で、今回の展示品セールのメールニュースでも沢山のお客様からも反響がありました。広尾の地に移転し四半世紀が経とうとしていますが、今回移転を思いたった理由の一つが街の変化です。閑静な一軒家で自然光と静かな佇まいの中で、ゆっくり製品を見ていたく事を目的に広尾の住宅街を選びました。この数年この広尾ではコロナ禍の外出制限で街路樹の管理をあまりしなくなったか、人手不足で庭の草木が伸び放題になっている住宅や共同住宅、賃貸マンションなどが目立つようになりました。

当社が移転した25年前のこの辺りはチェコスロバキア大使館(その頃はまだ別の国になっていませんでした)があり、近隣の通りはエネルギー会社の会長宅や大企業の経営者の大きな邸宅が並んでいて外回りは管理はされ、賃貸マンションも個人オーナーの管理がしっかりして、庭や外部に面した樹木や公共の道路脇の植栽剪定や清掃もしていました。その大邸宅がいつの間にか無くなり切り売りされ賃貸の住宅になったり、オーナーが変わった賃貸マンションが増えてきました。当社では移転時から毎朝、始業時間前に全社員で清掃をする際に外回りの掃除も行ってきました。向こう三軒両隣ではないですが、会社の前だけでなく隣の通りの角まで道路清掃を行ってきました。数年前までは近隣の方と清掃時に顔を合わせる事も多く、感謝の言葉をいただく事もありましたが、その機会もめっきり少なくなってきました。

最近、特に困った事があります。会社近くに小学校があり通学路となっているので、清掃時に子供達が多く通るのですが、通称日赤通りと言われる骨董通りへの抜け道という事もあり車の通行が多く、歩道をスピードを出した電動自転車が走り抜けます。その歩道は住宅やマンションの植栽が伸びて通学路を狭くし、ツツジが植えられている道路の公共植栽も伸びて子供たちが危険な状態になるようになってきました。以前はこんな事は無かったのですが、この数年は建物外の公共の歩道まで手入れする家も無く、当社社員で通学路の草刈りをする状態になっています。町内会がしっかりした地域なら通学路の整備や自宅前の雪が降った朝の雪かきなど見られると思いますが、賃貸住宅や新しい住人の自宅など家の外の事などまったく関心が無いようです。不思議な事に道路の雑草が増えるとタバコや飲み物や食べ物ゴミの投棄も増えてきました。

以前のコラムでも書きましたが、世界中どこへ行っても道路を見るとその地域の治安や文化度を感じる事ができます。ロサンゼルスへ通うようになり、より危険なエリアはすぐに分かるようになりました。若い頃から映画が好きでスピルバーグ監督のETに出てきたアメリカの中流住宅地で、塀の無い住宅街を主人公が走り回るシーンが印象的で、特に道路と歩道を隔てる芝生と車庫の脇にある芝生には憧れを感じました。ロサンゼルス郊外のパサディナで撮影されましたが、今でもその雰囲気を残す住宅街が見られます。道路にゴミが無く、道路の公共の植栽や芝生が綺麗に手入れされている街はお金持ちのエリアだけでなく、安全なエリアでもあります。車で走っているとゴミが見え雑草が生えた場所が目につくようになると車を停めずに走り抜けます。

アメリカの街は町によって法律は違いますが、多くは道路側の緑地や建物前の植栽、庭木まで建物の持ち主に管理する義務があり、道路と歩道の間の芝生の管理や自分の宅地であっても、手入れされていない状態だと街から是正命令があり、罰金刑が言い渡されます。放置されている事が続けば役所手配で剪定や清掃がされ、罰金と合わせ料金が請求されます。それ以外に、自分の庭であっても木を勝手に伐採すると通報され罰金刑が来るそうで、日本から移住してそれを知らずに庭木を切って通報された事を聞いた事があります。ホームセンターに行くと芝刈り機のカートが普通に売られていて休みの日にそれに乗って芝刈りをする事が普通で、広い庭ではロボット掃除機のような自動芝刈り機を使っています。取材に回るビバリーヒルズやベルエアあたりでは通いの庭師が清掃を行っています。家を維持するには家だけでなく、所有地内の庭だけでなく、道も清掃する義務も負う為に手間もお金もかかるので、お金持ちのエリアは町も綺麗なんです。

ビバリーヒルズにはアメリカ西海岸らしい道路に面した芝生があり、それに続く前庭も手入れされています。中のインテリアも素晴らしい住宅ですが、道路から住人の経費で環境作りをしている事で、あの街並みが作られている事を認識する必要があります。日本も街の景観を作る一員だという事を、住人だけでなく管理する会社も認識して欲しいと思います。田舎道を走っている時に素敵だと思える街の植栽や道路の草花は住人の手で維持されている事を認識しないといけません。現在の広尾ショールームは自然光の入る気持ちの良い建物です。この地で最後のセールを行いますので、ぜひおいで下さい。移転する場所は一棟建ではありませんが、当社で手入れする中庭のあるショールームの予定です。場所など詳細は、近く正式にお知らせしますので、お楽しみに!(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

左上:当社の朝の風景で会社の前の通りを角まで清掃して道路脇の植栽も手入れしています。夏の清掃は汗だくになりますが毎日かかさず社員当番で行っています。左下:右側の賃貸マンションの庭の草木から落ちた種の雑草や草が道路脇の植栽に生えて通行の邪魔になっています。右側:賃貸マンションだった所を企業が買取りスタジオにしていますが、植栽はまったく手入れしていないので、雑草が伸び放題で通行の妨げになっています。空き家ではありません。
左:ビバリーヒルズの住宅地の昼間に駐車している車はガーデナー(庭師)の車がほとんどで、ピックアップトラックが多い。道路と歩道の間にある芝生も手入れされています。右:ブレントウッドの住宅街で、道路と歩道の間が大きく取られて広い芝生です。家の前庭はナチュラルなバラの咲く庭ですが、歩道から道路側の芝生も綺麗に手入れされています。建物の管理は家の中だけでなく、街の景観も守るとゆうことなんでしょうね。

2024.8.30 DESIGNER

西海岸ハイエンド住宅の経費を考える

AD CORE DEVISE DESIGNER COLUMN Vol.159
先日開催したアメリカ西海岸のハイエンド住宅レポートはかなりの反響がありました。アンケートの中で、内と外の掃除にどのくらいかかるのか?維持する経費は?との質問がありました。掃除だけでも心配するほど大きな住宅でした。日本では1人8時間で掃除できる広さが2,000平方メートル~と言われるので、今回紹介した住宅で大きい家は土地で0.69エーカー/2,792平方メートル/845坪、建物は18,500平方フィート/1,720平方メートル/521坪あります。家の中は1人で朝から夕方まで掃除して終わるくらいでしょうか。それにベッドメイキング、洗濯等があるので、中だけのメイドさんで2人それに料理を頼むならもう1人。外の庭は毎日1人、プールは1週間に一回程度の清掃は必要となり4人は最低必要となります。普通の家ならメイド1人と庭のガーデナーが週2~3回でいい所ですが、、。

経費は?と思われるかと思いますが、ロサンゼルスの住宅でメイドをしている方の多くはラティーナと言われる南米系の方です。200軒以上住宅を回りましたが、それ以外の人種の方を見た事はありません。ロケハンやツアーで見るミドルクラスの上のクラスだと1人のメイドさんが通いで3時間来ていて、洗濯と掃除をお願いして料理は自分でするオーナーがほとんどでした。そのメイドさんはほぼ、イリーガルの不法移民の方で、相場は3時間で高くで100ドル程度だそうです。アメリカ社会はメイドや庭師、レストランの下働きの方など不法移民で成り立っているので、トランプさんの言う不法移民の締め出しをすれば、社会が成り立たなくなります。セミナーで紹介した家だと1人200ドルで4人で1日800ドル以上のお金がかかる計算です。日曜日以外来てもらうと月に300万円、年間3,600万円以上、プールの水など管理費用を入れると4,000万以上はかかるのではないでしょうか。

住宅に住むと光熱費や維持費、固定資産税などがかかってきます。今回のオープンハウスの住宅を不動産エージェントとして見てきましたが、売主は不動産エージェントに支払う手数料などに7〜8%かかり、それと個人売主であれば、販売時にキャピタルゲイン税が18.3%、合計25%以上経費がかかります。今回紹介した住宅は2,995万ドル/43億4千万円なので、748万ドル/10億8千万の経費がかかる事になります。キャピタルゲイン税は繰り延べして払う事ができるようですが驚く経費です、、。購入者は不動産購入手数料2〜3%だけで、消費税や不動産登録免許税はありませんので、購入者は優遇されています。しかし、ロサンゼルスの不動産の固定資産税は物件価格の1.25%程度で購入金額に対して毎年課税されます。今回紹介した住宅は2,995万ドル/43億4千万円なので、37万4375ドル/5,428万円が毎年住宅の固定資産税として徴収されます。固定資産税は購入金額で決まるので、同じ位の大きさでも購入金額で大きく変わります。ロスでお世話になっているYASUKOさんの家は50年前に2500万円で購入したので固定資産税は低いのですが、隣の同じ広さの新築を10億円で購入したトミー・フィルフィガーの息子さんは固定資産税は年間1,250万円支払っているそうで、YASUKOさんの家と数十倍違うそうです。

さて、今回紹介した43億4千万円の住宅に住むためにはいくら経費がかかるのでしょうか。使用人4人で年間人件費3,600万円〜、あのクラスのプールだと水代と管理で年間1,000万円〜、セントラルのエアコンなどの光熱費は月に3万ドル/435万、年間5,220万円。それに固定資産税の5.428万を加えると維持するだけで月に1,250万円、年間1億5,000万円以上の固定費がかかる事になります。それに生活費など、、。アメリカでは年収の3倍から5倍の範囲が保有できる家の金額と言われていますので、年収15億円は最低必要なのでしょうね。2軒目のベルエア通りの住宅は5年前に1,500万ドルで購入して販売価格1,950万ドルと聞いて、利益が出ると思っていましたが、諸経費と税金でトントンな感じでした。でも新築で購入した家が5年後に1.3倍の価格で販売できるのはアメリカの住宅は財産なんだなと改めて思いました。アメリカでは一生のうちに5回住まいを変えると聞きます。生まれた家、独り立ちの家、結婚した時、家族が増えた時、最後は子供が巣立った時。最後の住まいを小さな家に住み替える事で生活費を得ると。住まいに貯金をする感覚なのでしょうね。

日本では都心を中心にマンションの価値が下がらないとも聞くようになりました。日本も資産価値が下がらないようになって欲しいものです。そういえば、YASUKOさんのウエストハリウッドの自宅が売れたと連絡がありました。YASUKOさんは早く日本に帰りたいので、今の家を大切に使ってくれる人ならと225万ドル/3億2,600万円で売ったそうです。50年前に2500万円で購入し、手入れしてきた家だからですが、相場よりかなり安く売られたとの事。私にとってはロスの実家のような存在だったので、少し寂しい気持ちです。ロサンゼルスの拠点が無くなって行く機会も減るかもしれませんが、機会があれば不動産エージェントとしてロスの高級住宅街を回ってみたいと思います。(クリエィティブディレクター 瀬戸 昇)

ベルエアに建つ新築物件で、室内の延床面積1,720平方メートル/521坪の巨大な住宅、驚くほどラウンジスペースがいくつもあり、これを掃除しようと考えると途方にくれるかも。販売価格が2,995万ドル/43億4千万円なので、購入すれば37万4375ドル/5,428万円が毎年住宅の固定資産税として徴収されます。写真撮影で広すぎて画面に入らないなんて初めてでした。
ベルエアに建つ築5年の物件で室内延床面積1142平方メートル/346坪でこちらも巨大な住宅です。販売価格が1,950万ドル/28億3000万円なので、固定資産税は24万3750ドル/3,534万円が毎年住宅の固定資産税になります。最初の家が大きすぎて小さく感じましたが、こちらもかなりの規模の住宅でした。