COLUMN

2024.6.28 DESIGN

モノ作りの現場を見るということ

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.146

エーディコア・ディバイズでは当社の家具を生産している工場を訪問して、毎年モノ作りの現場を見学する研修を行なっています。設計や開発スタッフだけでなく、営業や業務管理、経理業務に携わるスタッフ全員が工場を見学する研修です。モノ作りをしている会社では、新人研修の際に工場見学を実施することはあると思いますが、当社のように業務スタッフ含めて全員が毎年工場研修を実施する企業は少ないのではないでしょうか。自社製品がどのように作られているのかを理解することも目的の一つですが、モノ作りの大変さ、人の手がどれだけ掛かっているかということを感じてもらうための研修でもあります。今年は九州の4つの工場を見学してまいりました。

初めに訪問したのは、昨年の新製品から本格的に採用を開始した国産針葉樹合板の工場です。新製品に採用するにあたり、昨年初めて工場を見学させていただいたのですが、とても素晴らしい工場だったので今回全員で訪問させていただきました。九州の山間に広がる広大な敷地、檜の香りがする敷地内には九州から集められた針葉樹の丸太が整然と積み上げられていました。建物の中だけでなく屋外の貯木場までゴミ一つ落ちていない綺麗な工場です。木材を加工する工場で、これだけきれいな工場を見たことがありません。高度にオートメーション化された工場は、加工途中で発生する廃棄物から熱、蒸気に至るまで一切の無駄なく効率的に利用されています。資材の組み合わせ選別等もAI技術を利用し、目にも止まらぬ早さで処理していました。こんなに効率的に製品が出来る工場を見てしまったら「機械化すれば手間をかけなくても製品が出来るのでは?」と、思ってしまいがちですが・・・合板製造の肝心要の作業である、最終のプレス作業前の単板セッティングは2名体制で人の手で行っていました。どんなに自動化されてもこの作業だけは熟練した人の目でチェックする必要があるのだそうです、納得!!

ソファ工場では、見学したばかりの針葉樹合板工場を資材に用いたソファの製作工程を見ることができました。普段は仕上がった製品しか見ることがないので、ソファの骨組み、構造を見学できるのは貴重な体験です。粗々しい合板の木枠の骨組みから、座り心地の良い柔らかいソファが出来上がっていく工程は、何度見ても新鮮な驚きを感じます。様々なクッション性や丸みのある柔らかな形状の中にも、稜線を立たせながらソファを仕上げていく術は職人技そのものです。主にテーブル生産をお願いしている工場の見学では、「木」を扱う難しさ、杢理を読んだ材料の組み合わせから、木の収縮の動きをコントロールして制作する難しさを説明いただきました。どんなに正確な加工を施したとしても、それぞれの「木」の特性を掴まないとキチンとした製品には仕上がりません。そんな「木」の良さや特性をお客様にお伝えするのも私たちの大事な役目なんだと社員も感じ取ったと思います。

今回訪問したのは梅雨入り前の九州地方。ソファとテーブル工場は先日も天気予報のニュースに出ていましたが、全国でも1、2位を争う暑さの厳しい日田市。通常だったら工場内の熱気で汗だくになって視察を行なう時期でしたが、今年は梅雨入り前の曇り空のおかげもあってそこまで厳しい暑さを感じることなく研修を実施することができました。普段は会話をする機会が少ない営業や業務管理スタッフも、職人の皆さんとコミュニケーションを取ることが出来、有意義な研修になりました。研修で得た情報は、皆様にもしっかり伝えてまいりたいと思います。(開発 武田伸郎)

左上:全社員で移動する工場研修はバスで各所を回ります 左下:針葉樹合板工場の敷地内、屋外にもゴミひとつ落ちていません 右上・右下:敷地内には爽やかな檜の匂いが漂っていました。工場から100km圏内から採取された針葉樹が貯木場に整然と積まれています。樹皮を剥いた丸太が合板加工へと運ばれていきます。
左上:見学した玖珠の工場で生産された針葉樹合板は、新製品以外の規格製品でも木枠の構造体に使用しています 左下:工場研修では工場の方の説明以外にも、加工中の製品を間近に見ながら、瀬戸のモノ作りのこだわり解説があります 右上・右下:普段見ることのない手加工の作業や、一点一点手作業で行う張り地の型取り、断裁の様子を熱心に見学します

2024.5.29 DESIGN

流行に左右されないデザイン

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.145
昔も今も芸術やファッション、デザインやインテリアに至るまでイタリアからの情報発信が世界に大きな影響を与えています。家具やインテリアの世界では先日開催されたミラノサローネ国際家具見本市が世界的なインテリアの情報発信源になっています。今年はこれまでの来場者数の記録を更新し、過去最高の集客を達成したようです。7割が国外からの参加者ということからも世界規模のデザインイベントだということが伺えます。世界のインテリアの動向を左右するこのイベント、視察してきた印象を少しだけお伝えしたいと思います。

エーディコア・ディバイズのブランド「AD CORE 」の製品には、イタリアのデザインに敬意を評してイタリア語で製品名を付けています。日本の伝統美や技術力を活かした製品作りを目指しながら、それだけイタリアのデザインを意識していました。エーディコア・ディバイズとして新たにスタートした90年後半からは、ミラノサローネを視察した後に新製品の開発に取り掛かるルーティンが定着しました。ややもすると「サローネで視察した情報を活かした製品作り」と思われがちですがそうではありません。巨大なトップメゾンが提案するデザインを当社が追従してもあまり意味がありません。今世界で流行しているデザインを注視しながら、それとは違ったアプローチを提案をするためにサローネ視察を重ねてきました。過去最高の来場者を記録した今年のミラノサローネですが、人気のブランドのブースやイベント会場には、以前はあまり見られなかった入り口の大行列がたくさん見受けられました。近年はネットやSNSのさまざまな情報がリアルタイムで飛び交うためか、人気のイベントに集客も偏ってしまうのかもしれません。事前登録をしないと入場できないイベントも増えていたのですが、今回も瀬戸の超綿密なスケジュール管理のおかげで、効率よく世界のトップメゾンの展示を見ることができました。世界のトップブランドの展示やインスタレーションは、デザインや製品の仕上がりも素晴らしくインテリアの展示も目を見張るものばかりでしたが、今年のミラノサローネは協調して大きな流行を作り出すようなトレンドを見て取ることができました。

大きなトレンドとなっているアイテムは、スクェアで重心の低いシステムソファ、扇型に組み合わせるソファ、有機曲線でデザインされた雲のような形のソファや丸みを帯びたコンパクトなラウンジチェア等々。白を貴重としたブークレ調のファブリックを用いて柔らかなラインを醸し出す製品も多く見られました。これって・・・エーディコア・ディバイズで昨年、一昨年に発表した製品アイテムではありませんか!!メインストリートとは違ったアプローチをしてきた当社でしたが、ここに来て時代の潮流に合い始めてきたのでしょうか?(確かに一昨年から昨年発表した製品は、たくさんのご注文をいただいております)まだ製品をご覧になっていない方は各ショールームに展示がございますのでぜひご覧になって下さい。サローネのデザイン流行をジャパンメイドの製品で見ていただけると思います。

注目のミラノサローネでは、デザインの他にも素材使いの面白さや歴史的アーカイブの復刻、ファッションやモーターサイクルとのコラボレーションなどたくさんのイベントがありました。そんなサローネの模様は来月開催しますオンラインでの「プレミアムセミナー  ミラノデザインウィークレポート」で詳しくご報告する予定です。ご登録いただいての参加となります。まだ若干空きがございますので皆様のご参加お待ちしています。(開発 武田伸郎)

左:FIERA会場の某ブランドブース前。朝一番で並んだのですが、あっという間にこの行列。人気ぶりが伺えます。 右:今年は家具の見本市とキッチン展のEuro Cucinaが同時開催。食を絡めた展示やイベントがFIERA会場やミラノ市街で賑わいを見せていました。
今年のミラノサローネは、昨年・一昨年に当社で発表したデザインアプローチのアイテムが主流になっていました。左上:2022年モデル A-mode MD-1301 と MD-1302 丸天板に支柱タイプの一本脚テーブルと丸みを帯びた脚を持たないシェル型のチェア 左下:低くて柔らかなフォルムのボリューミーなシステムソファはAD-229 のMASSA  右上:昨年発表したMD-3211 は扇型にも組めるシステムソファ 右下:有機的なフォルムのキドニーソファ NC-075。今年のサローネでは様々なタイプが提案されていました。

2024.4.29 DESIGN

インテリアの熱気をミラノで感じてきました

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.144
世界で最も注目される家具とデザインのイベント「Salone del Mobiile.Milano」ミラノサローネ国際家具見本市。イタリアのミラノで毎年4月に開催される展示会ですが、エーディコア・ディバイズでは毎年社員スタッフが持ち回りで視察研修に行っていました。しかし、新型コロナ感染拡大以降視察を実施できなかったのですが昨年は4年ぶりに視察研修を再開、今年もクリエイティブ・ディレクターの瀬戸と4名の社員スタッフでミラノサローネを視察して参りました。

AD CORE が誕生した1985年、まだ日本ではほとんど注目されていなかったミラノサローネでしたが、当社では当時からイベントに注目し、日本人の視察者がほとんどいなかった92年にAD CORE ブランドとしてミラノサローネに出展参加しました。その後、98年からはデザイン・家具の祭典を肌で感じるべく社員のミラノサローネ視察を継続して行なっています。家具やインテリア業界でサローネ視察をする企業はたくさんありますが、デザインや企画、製造に関わるスタッフが訪問することが殆どのようです。職種的にはそのような傾向は否めないと思いますが、当社では開発や営業スタッフはもちろん、業務や経理関係、ショールームや支社のスタッフまで全員が持ち回りで視察訪問をしています。会社全体がデザインの意識を感じる機会を設けて、家具やデザイン・インテリアの見聞を広げるために実施しています。今年は開発1名と営業スタッフ1名、営業サポートとショールーム担当の、瀬戸を含めて5名が参加してきました。

ミラノサローネを視察された方なら納得いただけると思いますが「サローネを見るなら下調べが必須」です。フィエラ会場はもとより市内の様々なエリアでイベントが開催されているので、限られた時間内ではとても見て回ることができません。例年は見やすい場所のフィエラ会場入り口エリアに家具のメインブランドが集中して出展していたのですが、今年は主要ブランドが会場の一番奥になりました。人気のブース以外にも人が流れるようにとの策だと思いますが、そんな会場内を歩くだけでもあっという間に時間が過ぎてしまいます。見逃せないブランドは長蛇の列で入場待ち状態なので、よほど効率を考えて回らないと十分な視察は難しいのですが、今年も瀬戸のリサーチで事前情報を十分にキャッチ!渡航前に必要な入場登録を済ませ、フィエラ会場の移動からブースを回る順番、市街地エリア視察のコースも設定。混雑するブースの時間も予測しながら3日間、しっかり見て回ることが出来ました。昨年から増えた事前登録制の入場方式を取った人気のイベント会場では入場するまで2時間も並ぶ事もあったようで、あまりスムースではなかったように思います。顧客の囲い込みと出展者側の効率化を図るためのシステムと思われますが、事前登録 + 会場での再登録が必要だったり、会場前で登録チェックに手間取って混乱したところもあったので来年は改善してほしいところです。

事前に注目していた人気ブランドのイベントやファッションブランドとのコラボレーション展示などは、情報が全くオープンにされず、期待して長時間並んで入場した結果・・・「?」の内容も多く、参加するイベントの精査の難しさも感じました。開発スタッフはデザインや製品のディティール、素材使いなどを中心に、営業スタッフはデザインや製品の傾向、これからの売れ筋を予測しながらの視察になりますし、ショールームスタッフはスペースのディスプレイや展示の仕方、素材を含めた色使いなども注力するポイントになります。イベントの盛り上がりを肌で感じながら、各自の視点で視察することができたと思います。現地で感じた鮮やかな印象、たくさんのイメージや情報を各自が読み込んで、今後の仕事に反映出来るよう努めてまいります。(開発 武田伸郎)

左上:地下鉄の駅からフィエラ会場への通路。朝一番で向かったのでまだこれくらいの混雑 右上:今年のフィエラ会場はメインの家具ブランドが一番奥のブース。歩くと20分位掛かるのでシャトルバスを利用しました 下段:朝一番の会場入り口と各ブースへの長い通路。日中は人で歩くのもままならなくなります
左上:フィエラ会場は今年も大変な賑わい 左下:フィエラ会場では入場制限で触れることもできないブースもありましたが、家具は試してみなくては使い心地が分かりません。できる限り座って感覚を確かめます。 右:ミラノ市内のイベントの様子。人気の会場は長蛇の列で入場待ち

2024.3.27 DESIGN

出荷前の製品画像確認を行っています

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.143

3月もあっという間に過ぎて、4月から2024年の新年度がスタートする時期になりました。新型コロナ感染の影響も解消されてすっかり通常の生活に戻っていますが、思い起こせば2019年の年末に感染が報告されてから世界中でパンデミックが発生し、約3年もの間、感染防止対策の制限された生活を強いられていました。移動制限をして人との接触を避ける事、今考えても本当に不自由な生活を強いられていたのだと思います。そんなコロナ禍の期間中もエーディコア・ディバイズでは家具製作を続けていましたが、品質向上のための定期的に訪問していた、工場の製品確認が出来ない状況になってしまいました。

当社の製品はオーダーをいただいてから製作する受注生産方式で皆様に家具をお届けしています。信頼のおけるOEM対応の工場で制作をお願いしていますが、工場には定期的に訪問して品質向上を図っています。同じように作っているつもりでも知らず知らずのうちに仕上がりが微妙に変化したりすることもあり品質が保てなくなる場合があります。慣れから来るものだったり担当者が変わり引き継ぎができてなかったりと要因は様々ですが、それを防ぐために工場を訪問し、現場の方とコミュニケーションを取りながら品質向上を図っていました。ところが、新型コロナウイルス感染の影響で工場を訪問することが出来なくなりました。さらに問題だったのが、感染対策のため納品の現場にもお伺いすることが制限されてしまったことです。そこで始めたのが、ソファやラウンジチェアの画像による全品確認です。

当社の製品は受注を頂いてから工場へオーダーを掛け工程を管理していますが、物件ごとに仕様も様々で納期的に余裕はありません。木材や海外の張り地など資材を揃えて加工を進め、家具を仕上げていきます。製品が仕上がっただけで終わりではありません。配送するために養生して梱包する大切な作業があります。仕上がった家具にキズが付かないよう最も慎重になる工程です。そんな作業途中に「画像を撮って仕上がり確認を実施したい・・・」当然、生産現場からは反対がありました。「時間も人員も余裕はないし、出荷が間に合わなくなる」等々。しかし、工場で確認ができず納品した現場でも製品が見れない状況では、間違いのない製品を出荷する方法しかなく、先ずはこの確認作業をトライすることにしました。

作業を開始した当初は、画像を見るだけでも精一杯、チェックバックが遅れれば出荷が間に合わなくなってしまいます。はじめはかなり混乱して現場から何度も泣きが入りました。工場も大変ですが確認してチェックバックする対応も容易ではありません。日々の業務をこなしながら画像チェックは即対応、担当者不在の際もチェックバックできる体制を取りました。バタバタな日々がしばらく続きましたが、少しずつ要領を掴み流れが出来てきました。チェックデータも蓄積され、作る側も確認する方もポイントが絞れてきて徐々に作業がスムーズになりました。この作業を始めてから、納品した製品で気になる所があった場合、出荷時の状態と比較が出来るのでどこに問題があるのか検証し易くなりました。その対策をフィードバックすることで、工場を訪問出来ない期間中でも品質を落とさないだけでなくさらに品質を上げて対応できたのではないかと思います。

新型コロナ感染が収まり、移動制限が解除されてからは工場訪問を再開していますが、九州のソファ工場の画像確認は現在も継続しています。画像確認を始めた当初は、生産開発の責任者が作業を担当されていたのですが、現在は当社の製品をほとんど仕上げている腕利きの若手スタッフが作業を引き継いでいます。引き継ぎ当初は画像も粗く、やり取りには苦労したのですが、今では綺麗に仕上がった製品を要所を押さえた画像を送っていただいて、しっかり確認が出来るようになっています。感染対策でやむを得ず始めた品質向上対策でしたが、これからも効率化を図りながら画像確認の活用を続けていきたいと思います。(開発 武田伸郎)

製品が仕上がり、梱包作業に入る前にメールで送っていただいた画像の仕上がりをチェックします。実際に肉眼で見る製品と、モニターで見る撮影した画像ではどうしても差異は生じてしまいますが、何度も実施することによってバランスが取れるようになりました。仕上がりで気になる箇所、補正を促す箇所を画像に指示を入れてチェックバックします。画像を撮って送る側と、チェックする側とが相互理解ができるようになると確認作業もスムーズになります。
オーダーNoごとに、仕上がったタイミングで画像を撮影しメールで送っていただきます。正面、側面、背面を写した画像を基本に、製品ごとにチェックが必要なポイントは画像を押さえてもらいます。様々な製品、バリエーションに富んだ仕様をチェックしています。2024年モデルのNC-075(画像右上)やMD-3211(画像左下)も人気の商品になっています。

2024.2.27 DESIGN

カーボンニュートラルな社会実現へ向けて

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.142

先日、明治22年創業の130年以上の歴史ある建築木材の加工工場を視察してまいりました。エーディコア・ディバイズで一昨年から取り組んでいる国産針葉樹合板の活用ですが、2024年のモデルでは内部構造を100%針葉樹合板を使ったソファMD-3211ソファを発表しました。SDGs、カーボンニュートラルな社会の実現に向けた製品作りの一環ですが、そんなブランドの姿勢に共感いただいた方から「同じ思いを持った木材加工の工場があり面白い資材も開発しています」とご紹介いただき工場を訪問することになりました。

岐阜地方の緑豊かな工業団地内の広大な敷地内に工場はありました。オフィスにご案内いただき、お互いの企業理念やブランドコンセプトをお話ししました。歴史のある工場なので、明治から始まる日本の西欧化から昭和の高度成長期、そして21世紀に入り国産材の需要の低迷期など、日本の木材加工の歴史を辿ってきているわけですが現在取り組んでいるのがカーボンニュートラルな社会への挑戦、環境にできるだけ負荷をかけない「地球環境にとって意味のある木材利用」でした。企業理念も独創的ですが社長もちょっと変わった経歴の持ち主で、ドイツに滞在した経歴があり「ドイツ気候療法士」の資格をお持ちでした。(ドイツでは生活の中に公園が必須のお国柄で、行政的な視点から公園のプランを景観や緑化だけでなく、人間の健康にいかに良い影響を与えるかを計画するのが気候療法士なのだそうです)そんなユニークな会社から提案いただいたのが、圧密加工で硬く改良された国産のスギやヒノキ材でした。

2000年頃から国産材の利用率が低迷し森林の荒廃が増加、それに伴い自然災害の発生や地球温暖化、森林の環境保全が問題視されるようになりました。そこで開発されたのが国産針葉樹の圧密材です。国産材のスギやヒノキは柔らかく優しい肌触りが魅力ですが、比重が軽く強度が低いため建築や家具には不向きとされてきました。その弱点を木材を圧縮することにより広葉樹と同程度の硬さと強度を持たせ使用範囲を広げようという試みです。実際、圧密材を手にすると針葉樹とは異なりずっしりとした重量感があります。表面強度も硬く広葉樹と変わらない質感を感じます。材料のスペックも広葉樹のカバやナラ材と同程度のデータが得られています。国産のスギ、ヒノキの圧密材は、全国の庁舎や学校などでフローリングや建材で使用されている他、一部の家具製品にも使われていますが、工場の取扱量としてはほんの一握りが現状のようです。国産のスギやヒノキの使用が広がれば、地産地消のカーボンニュートラルな社会実現に繋がり、森林保全が進み自然災害の対策や環境保護にもなると思うのですが、コストの問題もあり活用を広げていくのは難しいようです。弊社で取り組んだ国産針葉樹合板も、生産をお願いしている工場から「強度が不安」と今までと違う資材を用いることに抵抗を受けました。新しい試みを進めるにはテストを繰り返しながら、工夫を重ねて一歩一歩進めていくことが大切なのだと思います。

工場の方から「圧密材の活用を広げるためにアイデアやリクエストをぜひお願いします」とオファーをいただきました。これからの汎用性を考えると、スギ・ヒノキの木理や木目のデザイン性の活かし方もポイントになるのでは、と感じました。スギ、ヒノキの圧密材をインテリアや家具に使用するとどうしても「和」の印象を持たれるように思います。(当社の針葉樹合板はソファの内部構造に用いているため意匠的には影響は出ません)それも、デザインや工夫次第で活路を見出せるのではないかと思います。今回の訪問にあたり、これからもカーボンニュートラルな社会の実現に向けて国産材の活用のために情報共有することにしました。今後も新しいニュースを皆様にお送りできればと思います(開発 武田伸郎)

130年以上の歴史を誇る木材加工の工場。画像の工場は2018年から稼働している住宅用のプレカット加工工場。CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)を構造体に用いた広大な広さの工場
左上:工場で加工された建築資材は1棟ごとに積み上げられます。工場からは岐阜地方の山並みが望めます。 左下:打ち合わせルームに使用されているスギの圧密材フローリング 右:着色を施した圧密材のテーブル天板。表面硬度もあり、強度的な不安はありません。