COLUMN

2025.12.25 DESIGN

ウェグナーに見る機能とデザイン

先日、渋谷ヒカリエホールで開催されているハンス・J・ウェグナー展に行ってきました。
北欧デザインを語るうえで欠かすことのできない家具デザイナーであり、その思想やものづくりの姿勢を改めて体感できる展示でした。

ウェグナーは「家具において最も大切なのは機能性である」と語り、特に座り心地や使用されるシーンを強く意識してデザインを行ってきました。ただ美しいだけではなく、人がどのように使いどれだけの時間を共に過ごすのか、そうした視点がウェグナーの家具には一貫していると感じました。その考え方は当社の家具づくりとも重なります。人間工学に基づいた設計はもちろん、機能性を備えたファブリックの選択肢や使用シーンを想定したモジュール構成など、「どのくらい座られる椅子なのか」「どんな場所で使われるのか」を具体的に思い描きながらデザイン・規格化を行っています。見た目の美しさだけではなく永く使うことで初めて感じられる心地よさはその積み重ねこそが、本当に価値のある家具だと考えています。

また当社のトレンドに左右されないデザインには細部への徹底したこだわりがあります。使用する木材の選定、製作工程、さらには輸送コストや製作コストまで含めて考えること。デザインは外側だけを整えるものではなく内側まで含めて設計していくものだと、今回の展示を通して改めて感じました。デザインには国民性も色濃く表れると思います。私が以前デンマークに住んでいた頃、訪れたすべての工房や工場で日本製の鉋が使われてたり、日本の木工技術や家具の美しさに深い敬意を払っている姿が印象的でした。繊細で誠実な日本のものづくりは、世界でも高く評価されています。その中でも印象深かったのがウェグナー作品を専門に製造するPPモブラー社です。当時から使われている型を大切に保管し、現代の技法と組み合わせながらウェグナーの思想を現在へとつないでいます。

1950年に発表されたTHE CHAIRやベアチェアが70年以上経った今もなお愛され続けている理由は、徹底したこだわりが人々に通じているからだと思います。当社の1986年発売のCERVOも同様に人体に沿った設計やスタッキング機能など、考え抜かれたデザインによって現在も多くの場所でご採用いただいています。先日開催した40周年イベントが多くの方にご来場いただけたこともこうした積み重ねの結果だと感じています。

当社はこれからも外側のデザインはもとより、内部構造や細かなディテールに至るまで向き合い長く愛される家具づくりを続けていきたいと思います。ぜひショールームでその座り心地やストーリーを体感してみてください。(開発部 渡辺 文太)

上:ハンスウェグナー展では、コレクションからウェグナーのインタビュー、内部構造に至るまで盛りだくさんの展示でした。下:ウェグナー家具の製造を専門に行うPPモブラー社。お伺いした当時も感じましたが、今回の展示ではよりクラフトマンシップを感じ取れました。
今回の新作で発表したMD-1401、代表瀬戸が何度も何度も工場へ足を運び、細かな形状のデザイン、内部構造に使う部材までもこだわり抜いた新作です。

2025.11.29 DESIGN

40周年の歩みと舞台裏 

先日、当社の40周年イベントを無事に開催することができました。当日はショールーム内を歩くのも難しいほど多くのお客様にお越しいただき、スタッフ一同が喜びと驚きに包まれました。古くからお付き合いのある業者さま、そして最近当社を知ってくださったお客様まで、幅広い方々に足を運んでいただき、ブランドとして積み上げてきた40年という歳月の深さをあらためて実感する時間になりました。

イベントの裏側では、準備期間から社内はまさにフル稼働状態でした。今回のイベントは40周年特別展示や年表模型制作があり、特に模型製作の3Dプリンターは連日稼働しっぱなし。昔の製品(3DCGなどは一般普及していない時代の製品)は当社開発部の奥友が手書き時代の図面や仕様書を睨み、現物を細部まで確認しCGデータに落とし込んでいました。3Dプリントが終わるたびに仕上げを行い、社長自らチェックや修正・仕上げにに加わり、「全員でつくり上げているイベントだ」という一体感に満ちていました。40周年という節目に向けて、“絶対に良いものを見せたい”という想いが自然に全員の共通意識になっていったように感じます。

そしてなんとか作り上げたのが今回の目玉の「1/5スケールの模型年表」。1985年から2025年までに発表した製品の中から36点をピックアップし、この40年の歩みを立体的にたどる展示をつくりました。完成して並んだ模型を前に、お客様同士やスタッフとの間で自然に会話が生まれていきました。「この年に産まれたんですよ」「この頃、御社と初めてお仕事しましたね」「この年は本当に大変でしたね」「懐かしい時代でしたね」そうした言葉が次々に聞こえてきて、模型を眺めながら時間を旅するような光景が広がりました。製品そのものだけでなく、そこに関わった人、それぞれの時代背景、その頃の思い出、多くのストーリーがこの年表に詰まっているのだとあらためて感じ私自身も胸が熱くなる瞬間がありました。

40年という長い時間の中で支えてくださったお客様への感謝はもちろん、今回初めて当社を知ってくださった方には、私たちが大切にしてきた価値観やものづくりの姿勢が少しでも伝わっていたら嬉しい限りです。イベント準備の大変さも、当日のにぎわいも、そのひとつひとつがこの節目の年を彩る特別な記憶になりました。イベントは一区切りとなりましたが、40周年は通過点にすぎません。これからも皆様とのつながりを大切にしながら、次の時代に向けてAD COREはさらなる躍進を目指していきたいと思います。(開発部 渡辺 文太)

全部署が総動員で前日夜まで皆様をお出迎えする準備をしておりました。
左)営業部長は細かいアートの調整を担当。右)模型を飾るテーブルはシートを採用。文字や図面の見え方、シートの色や素材までも、こだわりを持って選定しました。

2025.10.30 DESIGN

2026MODEL 新製品撮影記

ついこの間まで暑さと格闘する日々を過ごしていたかと思えばもう寒さが訪れ、日本の美しさである四季はどこへ行ってしまったのか、、、と常々感じています。先月のコラムでは新製品の開発についてお話ししましたが、今回はその新製品をより魅力的に見せるための撮影現場の裏側をご紹介します。

一次試作が完成すると毎年すぐにスタジオでの撮影に入ります。今年も工場の皆さまのご協力のおかげでなんとか予定通り進めることができました。今回は例年使用しているスタジオの隣の少し手狭な環境での撮影だったため、限られたスペースの中でセッティングや片付けを繰り返しながらテンポよく撮影を進めていきました。次に撮る製品を確認しながら配置を整え、撮り終えたものはすぐに箱詰めしてトラックに積み込む。時間との勝負の中反省点も多くありましたが、現場の一体感を感じる瞬間でもあります。ここ数年人気の流線型ソファは、その形をしっかり伝えるために高い位置から俯瞰で撮影しています。カメラを高さ約5mに設置し、ライブビューで角度を微調整。セッティングはできるだけスピーディーに進めつつも、撮影の瞬間にはしっかりと時間をかけ、納得の一枚に仕上げます。製品のディテール撮影は毎年代表の瀬戸が自ら行います。デザインし試作を重ねてきた本人だからこそ「どこをどう見せたいか」を一番理解しており、そのこだわりが写真からも伝わると思います。

今年は移転後初の新製品撮影ということもあり、製品イメージ写真を新しいショールームで撮影いたしました。限られた空間の中でも角度やレイアウトを工夫し、単調にならないように光の入り方や構図を何度も試しながら進めます。光の当て方ひとつで印象がまったく変わるのが撮影の面白いところです。長年撮影をお願いしているカメラマンさんやディレクターさんは当社の製品に対する印象や意図をすぐに理解し、的確なライティングや構図を提案してくださいます。長年の信頼関係があるからこそスムーズに、そして良い雰囲気の中で撮影を進められます。中庭をバックにソファセットの撮影をしたり、外から窓越しにイメージを撮影したりと、大きな窓が魅力的なショールームならではな撮影方法を駆使しながらなんとか撮影を終えて、皆様へお配りするタブロイドやホームページへのアップ等、編集作業を着々と進めています。

今年、当社は家具ブランドとして40周年を迎えます。これまで積み重ねてきたものづくりの経験を活かし、自信を持ってお届けできる新製品を皆さまに披露できることをとても嬉しく思います。毎年恒例の新製品発表会に加え、40周年記念パーティーも開催予定です。どなたでもご参加いただけますので、お誘い合わせのうえぜひ六本木ショールームへお越しください!(開発部 渡辺 文太)

左:製品の詳細写真は瀬戸自ら撮影します。ホームページからでも製品の魅力が最大限伝わるよう、丁寧に撮影を進めます。右:当社ショールームでの撮影風景。大きな窓を活かした外からの撮影、どんな写真になるのかお楽しみに!撮影本番前、打ち合わせが最も重要です。当社が見せたいイメージをカメラマンさん・ディレクターさんに入念に共有します。
ホリゾントのスタジオ内。吊り下げ天井を降ろしてカメラをセッティングします。足がすくむほどの高さから撮影は、写真の迫力も増しますが、現場の迫力も凄いです。

2025.9.29 DESIGN

コミュニケーションで作る新製品

ここ数日は厳しい暑さも少し和らぎ、秋の気配が感じられるようになってきました。年々日本中の気温が上がる中、社内では熱中症対策マニュアルを改訂し、お客様や社員に万一のことがあってもすぐに対応できるよう備えています。そんな猛暑の中でも、今年も新製品開発は着々と進んでおり、先日は製作をお願いしている大分県の工場を訪ねました。

新しい製品づくりは、一般的にはイメージスケッチから図面に起こすところから始まると思われがちです。しかし当社では、代表の瀬戸が日頃からインテリアの未来のトレンドを意識し、海外での視察も踏まえながらストーリーやコンセプトを構築することから始まります。コンセプトが定まって初めて製品を図式化し、試作づくりへと進んでいきます。今回の9月頭の工場訪問では、第一試作が完成し、実際に座って確認しました。図面上で抱いていた印象と異なる点が多くあり、特に、私は身長190cm近くあるため、、、一般的なサイズ感覚を把握するには努力と工夫が必要です。ほんの数センチの高さや角度の違いが座り心地を左右し、平面上では気づけなかった課題が浮かび上がってきます。工場内は36度前後で、職人さんたちは「これでも例年よりはマシですよ」と笑っていましたが、暑さに弱い私はただ尊敬するばかりでした。

現場では工場の職人さんと意見を交わしながら、細部を仕上げていきます。ステッチラインの位置ひとつで製品の印象は大きく変わりますし、想定していなかった課題や新しい要望も次々と出てきます。図面だけでは表現しきれない美しさが、職人の経験やデザイナーの感覚によってかたちになっていきます。内部のウレタン材を削って形状をイメージに近づけたり、脚部の取り付け位置を調整したりと、限られた時間の中で何度も確認を重ねます。座面とアームのバランス調整では、アームの位置を保ちつつ座面の高さを変え、絶妙な寸法変更でも肘の置き心地大きく左右します。意見が食い違うこともありますが、そのやり取りの積み重ねこそが、製品の完成度を一層高めていきます。こうした細かな調整を重ねる過程こそ、新製品を形にしていく大切なステップだと感じます。

こうしたやり取りを支えるのは、やはり日頃のコミュニケーションです。普段の電話連絡や工場での打ち合わせはもちろん、今回は工場の方々と夜に食事をご一緒しました。仕事の話はもちろん、プライベートな話題にも話が広がり、より親密な関係を築いていくことで、ものづくりにも良い影響があると思っています。家具づくりはデータだけで完結するものではなく、人と人との対話の中で育まれていくものです。今年は40周年のパーティーも企画しております。皆さまとも直接コミュニケーションが取れる機会を楽しみにしています!(開発部 渡辺 文太)

工場ではカタチ・座り心地等確認後、内部構造フレームやウレタン形状を調整します。
細かな打ち合わせは製品の出来を大きく左右します。さまざまな角度から製品を確認し、微調整を怠りません。

2025.8.29 DESIGN

3Dプリント技術と家具開発

AD CORE DEVISE DESIGN BLOG Vol.159
今年も新作となる 2026年モデル の開発を進めており、加えて当社の創立40周年を記念したイベントの開催も予定しています。新作開発における設計・開発体制をさらに強化するとともに、イベントで使用する模型制作のため、最新の3Dプリンターを新たに導入しました。従来機(約5年前に導入)と比較すると、立体表現の精度や造形スピードが格段に向上しており、すでに新製品開発の現場で早くも活躍しています。

3Dプリンターは2009年の技術特許切れを機に多くの企業が市場に参入し、以降、進化と改良が加速しました。当時1000万円を超える大型設備が主流だったものが、小型化と低価格化が急速に進み、現在では家庭用の機器が1万円台で購入できるほど一般化しています。今回導入した「Bambu Lab」は高精度とスピードを兼ね備えながらコストパフォーマンスに優れており、当社の家具開発における大きなアシストとして期待できる存在です。もともと3Dプリンターは試作品製作を目的として開発されましたが、現在では自動車・医療・宇宙開発など多岐にわたる分野で応用されています。特に粉末積層方式を用いる機器は、F1のエンジンパーツやフレームパーツの製作にも活用され、従来では考えられなかった効率性とコスト削減を実現しています。

この3Dプリント技術は、私が個人的にここ数年観戦を楽しみにしている世界最高峰の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」でも重要な役割を担っています。ツール・ド・フランスは3週間にわたり、1日平均200km前後を走り抜け、標高2000m級の山岳地帯を越えながらフランスを一周する過酷な大会です。プロチームのエンジニアやメーカーは、選手が持つパワーを余すところなく発揮できるよう、人間工学や空力性能を極限まで突き詰めています。わずか1秒を削るために、人と機械が融合した最適化が日々のデータと共に研究されています。近年では、選手一人ひとりの体格やライディング姿勢に最適化されたハンドルやサドルを、3Dプリンターでミリ単位の調整を加えて試作製作するケースも増えています。長時間のレースでは、わずかなポジションの違いがパフォーマンスに直結します。また、選手たちは大会期間中、栄養摂取の内容や量を細かく記録・管理し、出力を最大化させる徹底した調整を行っています。こうした背景からも、超人的なパフォーマンスを支えるのは個々に最適化されたデザインの力であると実感しました。最先端技術が人間の能力を最大限に引き出すという点に、ものづくりの可能性を改めて感じました。

家具づくりもまた、「人に合わせる」という本質において共通しています。当社では快適な座り心地や使用感を実現するため、人間工学に基づいたモジュール設計を行っています。使用シーンや用途に応じ、人体の平均寸法を基準にした設計を採用することで、デザインは異なっても共通した快適性を提供しています。さらに今回新調した3Dプリンターを活用することで、三面図やCG上ではイメージしづらい複雑な形状も瞬時に具現化できます。実際に形にしてみて初めて気づく改善点や課題は多く、開発のスピードと精度を同時に高めてくれます。今回導入したプリンターは、当社のものづくりにおいてより魅力的な家具をデザイン設計することに貢献してくれると感じています。これからも最新技術を積極的に取り入れながら、個々の暮らしに最適化された快適な家具づくりを進めてまいります。(開発部 渡辺 文太)

ARCOチェア(AD-011)の1/5スケールモデル。印刷精度向上と効率化のため、パーツごとにプリントし組み立て。 左上写真:右が3Dプリンター、左は約24年前に手作業で製作されたスケールモデル。右下写真:リアルタイムで印刷状況を確認可能
左写真:タイムトライアル用TTバイク。極限まで速さを追求した空力性能抜群のデザイン設計。ヘルメットから靴下までも空力を優先して考えられているそう。右写真:今年優勝を果たしたライダーが使用するバイクはイタリアのCOLNAGO社製。3Dプリントで車体からハンドルに至るまでを何度も試作し、空気抵抗、力学的に計算されたデザイン。(https://www.colnago.com/en-jp)